引っ越し段ボールの中から

いっき

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「嘘だろ……僕は生ものは入れた覚えはないぞ」
 思わず呟いた。
 そりゃあ、そうだ。引越しの段ボールに生ものなんて入れるはずがない。

 だとしたら、これは何だ?
 もしかして、新興団体か何かがテロ目的で、これだけ大量の毒キノコを引越しの荷物の中に忍ばせたのか?
 しかし、よく考えてみた。
 僕は別に、テロの標的になるようなことは何もやっていないし、それに、僕みたいなしがない会社員を狙い撃ちしたところで誰にも何の得もなさそうなものだ。

 それでは、何だ?
 もしかすると、このキノコは麻薬の原料か何かで、僕は知らぬ間にその運び屋をやらされたのか?
 何てこった……だとすると、僕は犯罪の片棒を担がされたことになる。
「まさか引越しの荷物にこんなのが紛れ込んでるなんて、知らなかったです」と言って、警察に届けるべきか。
 だけれど、こちらに運んできてからもう、日が経ち過ぎている。これも、犯罪になるのだろうか……?
 というか、運び屋をやらされただけで、誰もブツを取りには来ないのだろうか?

 訳の分からない空想と疑問と失望が僕の頭の中でグルグルと回っている時。
 彼女の美和(みわ)が僕の肩をポンと叩いた。
「こら、秋斗(あきと)。早く片付けないから、こんなことになるんじゃない……」
 そして、かの段ボールのキノコに目をやって……その目はパァっと輝いた。
「すごぉい! 立派な椎茸。美味しそう!」
「えっ、椎茸? あ、こら、美和。それは麻薬だ、危ない……」
「はぁ、麻薬? 何を言ってんのよ、正真正銘の椎茸じゃない。ホラ」
 彼女がその一つを手に取って僕の鼻に近付けると、とっても香ばしい椎茸の香りがした。
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