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第三章 王都への旅
43.港町
しおりを挟む4人の話が終わったところで一人若干蚊帳の外であったメルカが話し出す。
「……さて、夜も明けてきた事だし、港町へ行こうか?街道も安全そうだし馬車でいこう」
4人は猿の魔物の氷塊を運び荷台へ乗せ、そのまま同乗した。
馬の世話をして準備を進めていたメルカは4人が乗り終わったことを確認するとすぐに出発するのだった。
森からでて、出発してから約2時間。とうとう港町へ到着した。
エイシェルとアリスの服も少し湿ってはいるもののほとんど乾いている。
「皆さんありがとうございました!無事に到着する事ができましたよ!こちらが魔物の買取も含めた報酬です。依頼受付証明書もサインしてありますから確認して下さい。」
メルカはそういうと4人を代表してエイシェルに麻の袋と書類を渡す。
エイシェルはそれらを受け取り袋の中身を確認すると中には金貨が20枚入っていた。
「え!?メルカさん、これは多すぎます!!」
「どうしたの?」
エイシェルの反応にアリスもなんだとばかりに声を上げ、つられてフラムとフルームも加わり中身を確認する。
「な!?なにかの間違いじゃ……」
「あれ?今回の護衛報酬って銀貨3枚よね……?」
「キラキラしてる……」
3人も一回の依頼としては信じられないほど多い報酬に驚きを隠せずにいた。
「正当な報酬だよ。護衛には魔物の討伐なんて書いてなかったからね。依頼内容以上の成果だ。それに、魔物も買い取ったからこれくらいはするだろう。あとは今後の君たちの活躍に期待を込めて、キリのいい数字にしてある。」
メルカは渡した金額が正しいものだと4人に説明した。4人はその説明を受けメルカの好意に甘える事にした。
そこでメルカが言葉を続ける。
「それと……これでも私は、ここらでは名前の通った商人だから、何かあれば相談して欲しい。できる限り力になると誓おう。この町にあるメルカ商会の建物に来て呼び出して貰って構わない」
メルカは4人を気に入ったため、繋がりを残しておきたいと考えたのだ。
本当に来てくれるかは分からないが、もし訪ねて来てくれれば御の字だと考えている。
「メルカさん……ありがとうございます!」
エイシェルがメルカに回答しメルカと別れた。
残された4人は臨時収入を得てほくほく顔でこのあとの予定を話し合う。
「へくちっ!」
「風邪でもひいたか?びしょびしょだったし無理もないか。先に休める場所を探す?」
アリスは身体が冷えたのか、くしゃみをする。エイシェルが気遣い宿探しを提案するが、アリスは断った
「いえ、まずは腹ごなしよ!食べれば栄養が補給できて風邪なんて引かないわよ!いざ、魚料理ね!」
「そういうものか……?でも、食べに行くにしてもこんなに朝早くからお店やってるのか……?」
アリスは当初の予定通りフラムとフルームに魚料理を紹介してもらう気満々でいた。ただ、予定が狂い、港町への到着が朝早くになってしまったため、お店が開いているのか怪しかったため、エイシェルが疑問の声があがる。
「あ、そこは大丈夫よ?朝早くからやってるお店もあるからそっちに行きましょう?……約束通り私達に奢らせてちょうだい?」
フラムがエイシェルの疑問に問題がないと説明し、アリスは安心した様子だった。そして約束した通りフラムとフルームがアリスとエイシェルに奢ることになった。
フラムとフルームの2人としては、半ば無理に依頼に誘い、助けてもらった挙げ句、危険な目に遭わせてしまったと考えていた。そのため、ご飯を奢るくらいでは返せない程の恩があるのだ。
フラムとフルームの気持ちを知ってか知らずか、アリスとエイシェルは素直に約束通りご飯をご馳走になることにしたのだった。
お店に着くと4人は席に座り、お店の人おすすめのセットメニューを頼んでいた。
刺身に寿司、小さな丼物に汁物がついた海鮮フルコースだった。
「ね、ねぇ……本当にいいの?ここかなり高そうだけど……?」
アリスは想像を遥か超えたお店の雰囲気に圧倒されていた。奢ってくれるとは言ってくれたが、流石に限度が有ると思ったのだ。
ちなみに、エイシェルは驚きすぎて、文字通り言葉を失っていた。
「大丈夫よ、新鮮な魚がすぐ手に入るから、きっと思ってる程高くないわ」
「アリスもエイシェルも気にせず食べてねー。ここすごく美味しいから!」
フラムとフルームは2人に気にしないようにと言葉をかける。
そう言われてしまっては、アリスとエイシェルは何も言えない。大人しくこれから出されるごはんを待つ事にした。
しばらくすると料理が運ばれて来た。
刺身に寿司、丼ものほとんどが生の魚介で作られておりアリスもエイシェルも未知の食べ物だった。
「これが生魚の料理……?お米が少し酸っぱい匂いがするような……?」
「それはね、ごはんにお酢をかけて混ぜてるんだ。お刺身やお寿司なら食べる時に醤油を少しネタにつけて食べるとすごく美味しいんだよ?あ、ネタってのはこの生魚の切り身のことね?丼も私は醤油を少し垂らして食べるのが好きかな?まずは食べてみようよ!」
アリスが初めて見る料理を観察し、フルームが説明する。よほど美味しいのかフルームの説明に熱が入っている気がした。
エイシェルは密かにその説明を逃すまいと聞いていたのだった。
「それじゃあ……いただきます!あむ……ん!?」
アリスはフルームの言う通りまず食べることにし、刺身を口に入れた。その時、アリスが知っている魚とは思えないほどの食感がアリスを襲った。
「なにこれ……すごく美味しい……!」
アリスは美味しいと分かると次々に箸を進めた。
他のものもアリスに続き食べ始める。
「歯応えがあってコリコリするものもあれば、口の中に入れた瞬間とろけるものまで……。醤油のしょっぱさに生魚の肉の甘味がとっても合う……!お寿司?も一つひとつが完成されたひとつの料理みたい……!!丼は丼で、様々な種類の魚がふんだんに詰まった宝石箱のように思われるわ……!このスープも魚のダシが効いていて、味の洞窟の奥深くから迫り来るような旨味が襲ってくる……!」
アリスはどんどん食べ進め、どんどん言葉を紡いだ。そしてどんどん変なテンションになり、わけのわからない言葉を言い出す。
昨夜は夕飯を食べれず、ろくに寝れていないため、変なテンションになってしまうのも仕方がなかった。
「……アリス……ちょっと最後の方は何を言ってるのかわからない……。だけど、たしかにおいしいな。醤油自体が少し甘いのかな……?」
エイシェルはアリスが言ったこと半分も理解できずにいた。エイシェルもエイシェルなりに食事を堪能していた。よく味わい、どんなものが使われているのか吟味していたのだ。
「それはきっとだし醤油ね。魚をカチカチに乾燥させてから薄く削ったものと海藻を煮込んだ出汁を醤油に混ぜるの。それすればその醤油のような味になるわ」
フラムが解説する。実はフラムも料理をする方であり、だし醤油の作り方を調べた事があるのだ。
「なるほど……たぶん鰹節と昆布だな……。いろいろ使えそうだから覚えておこう。ありがとうフラム!」
エイシェルがフラムにお礼を言う。エイシェルとしては未知の調味料に思えたため、知っているもので作れると知り、落ち着いたら作ってみようと思ったのだ。
その後も4人は食事を堪能した。相変わらずアリスは何を言っているのか分からなかったが、とても美味しそうに食べていたため3人もそれを見て笑顔になるのだった。
食事が終わり少し休んだ後、4人はお店を出た。
「フラム、フルーム。ご馳走様でした。ほんとうに美味しかったわ……。今まで知らなかったなんてどれだけ人生を損していたか……」
「ご馳走様。アリスの言う通り、すごくおいしかったよ。……世の中には美味しい食べ物がまだまだありそうだ」
「アリスもエイシェルも大袈裟ね。でもここのお店は美味しいからオススメだったの。みんなで来れてよかったわ」
「またみんなで来れたら来ようよ!他のメニューも食べたいし!」
「そうね!またみんなで集まりましょう!」
4人は楽しく美味しい料理を堪能できてとても満足していた。
みんな無事だったからこそ得られたかけがえのない瞬間。
いつ失われるか分からないことを身をもって実感した4人。
今この時を大切に、心に焼き付けるのだった。
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