ジェミニ 〜魂の契約者達〜

えいりす

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第三章 王都への旅

67.魚釣り

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4人が待っているとフラターが竿を持って戻ってきた。


「待たせたな。ほら、好きな竿を選ぶといい。……と言ってもどれも似たり寄ったりだがな」

「ありがとう!十分よ。あとは……餌をどこかで用意しないとね……」

「このふさふさしたものがついた針は何?」

「これは疑似餌ってやつだ。虫に見せかけて食いつかせるんだ」


フラターはもちろん竿だけでなく、釣り糸や針、疑似餌付きの針を持ってきた。
流石に生き餌は保管できないため持っていない。それでも突然言われてここまで準備できたのは流石といえよう。


「これで釣りに行けるって事?」

「疑似餌で釣れるんだろうか……?」


未経験コンビが思い思い発言する。
エイシェルの発言通り、疑似餌は難易度が高い。餌の匂いとか動きにつられると聞いた事がある。初心者含め経験の浅い4人には難しそうだった。
そのことはフラムも承知でどこかで餌を仕入れようと考えていたのだ。


「いえ、疑似餌は難しいから餌を調達するわ。ねぇ、おじさん?どこか調達できそうなところ知らない?」

「そうだな……そこの2人が倒したイノシシを転がしてた畑とかいいんじゃないか?ミミズとかいるだろう」

「えっ」

「なるほど。それなら簡単に集まりそうだな」

「ち、ちょっと」

「針を隠すように、こうぷすっと刺してウニョって曲げるとバレにくいって教えてもらった」

「……え?」


アリスが会話の所々で変な声を上げる。
基本的にアリスはウニョウニョするものが嫌いなのだ。
ウサギモドキの件もありトラウマになっていた。
ミミズを餌に使うと聞いて本当か確認しようとした矢先のフルームの発言。
わかりやすく身振り手振りで説明したせいで想像してしまうアリス。
まるで信じられないといった顔で硬直する。

硬直したアリスを尻目に話は進み、気付いたら山のふもとの畑でミミズを取り終わっていた。


「はっ!」

「お、アリスがなおった」

「あれ、わたし何を?」

「覚えてないのか!?」


アリスはぼんやりしており記憶がはっきりとしていない。
一体何が原因なのか……


「ミミズーミミズーって言ってたよ?」

「ウサギモドキの時と似たような感じだったな」


原因はミミズだった。
少しずつ記憶が蘇る。あまりに衝撃的な想像をしてしまったアリスはショックのあまり思考が停止し3人に自動追尾モードになっていた。
3人は流石にアリスにミミズ集めを手伝わせるのは酷だと言うことでおじいさんの頼み事を任せていた。


「おじいさんに畑の水やり頼まれて魔法で水やりしてたじゃない」

「そういえば……そんな気も……?」

「アリスも正常に戻ったことだし、魚釣りに行きましょう」


アリスが元に戻ったところで魚納品の依頼人の元へ向かった。

依頼人の元へ到着した4人。フラムが代表して依頼の受注を伝えに行く。
依頼内容を確認したところ、今回は3匹だけ観賞用の魚が欲しいとのこと。
あまり多すぎても逆に困るので今回持って帰るのは3匹。出来るだけ大きな魚を選んで欲しいとの事だった

内容が確定したところで4人は街の南東にある湖へ向かった。
……ちなみに、アリスは台車に乗せられて移動をすることになった。
今回の依頼はもともとアリスの足に負担をかけないものを選んだ。そのため、移動で疲れさせてしまっては本末転倒なのである。

もちろんアリスは1人だけ台車に乗ることを躊躇ったが、理由を伝えると渋々承知して台車に揺られることにした。


(あれ、わたし今文字通りお荷物なのでは……?)


自分の境遇に不安を抱えながら目的地へ向かうのだった。




目的地へ着いた4人は早速釣りの準備をする。


「はい、各自竿を持ってねー。あ、アリスの竿は適当に選んでおいたわ」


フラムがそう言うと竿を配る。そして各自針をつけ餌を付けるのだが、アリスは躊躇った。


「ねぇ、わたしの針なんだけど、その疑似餌ってやつ使っちゃだめかしら……?」

「別にいいけど……釣れないかもしれないわよ?」

「う……でも餌をつけられないのでそれでやらせてください……」

どうしてもミミズを触れないアリスは疑似餌に挑戦することにした。




4人が湖に糸を垂らしてから約1時間。
アリス以外2~3匹かかっていた。

エイシェル 3匹
アリス   0匹
フラム   3匹
フルーム  2匹


「エイシェルやるじゃない。もう3匹も釣れてる」

「フラムの教え方が良かったんだよ。じゃなきゃこんなに釣れなかったと思う」

「こんなはずでは……」


最初にフルームが連続して釣り上げ、釣った数でスタートダッシュを決めたがその後は全く針に魚がかかる様子がない。
そうこうしているうちにエイシェルとフラムが一匹、また一匹と釣り上げ、気づいたら2人とも三匹目を釣り上げていたのだ。
そんな中1時間全く釣れる気配のないアリス。このままでは本当に運ばれる荷物と変わらなくなってしまう。

(うぅ……釣れない……。やっぱり疑似餌はダメなのかしら……。でも、餌を付けるのは絶対に無理だし……つけてもらうのもなんか恥ずかしいし……)

アリスは若干涙目になりつつも頑張って堪えながら竿を握っているとフラムから声が上がる。

「そろそろお昼にしましょう。せっかくだから納品しない魚を焼いて食べない?包丁、串、塩は持って来てあるの」

「さんせー!お姉ちゃん準備いいね!」

「それならおれが下処理しようか?港町で少し習ったんだ」

「あなた、本当に何してたのよ……」

「わ、わたしは火を起こすね!」

すっかりお昼になってしまったのでフラムは釣った魚を焼いて食べようと提案する。
依頼で納品する魚が三匹のみのため、それ以上釣っても逃す他無くなる。せっかくなら釣った魚を食べてしまおうという魂胆だ。

アリスはここぞと活躍の場を見つけささっと焚き火を作った。今はそれくらいしかできなかったためだ。
フラムが納品用の魚を選び、その他の魚をエイシェルに渡す。
受け取ったエイシェルは流れるように鱗をとり内臓を取り除く。
下処理を終えた魚にフルームが塩をふり串を刺す。その串を焚き火のそばに刺してじっくりと焼くのだ。

そうこうしているうちにいい具合に魚が焼けたためみんなで食べ始めた。

「塩だけなのに美味しいわね」

「脂がのっててすごく美味しいな!新鮮だからか身も柔らかい!」

「アツアツで美味しい!」

3人が食べた感想をそれぞれ言い合う。そんな中、アリスだけ魚を見つめて口をつけずにいた。

「アリスも食べて?釣れてないのは運もあるから気にしちゃダメだよ?」

「そうだよ。筋肉痛治すのに栄養つけなきゃ」

「2人の言う通りだ。ほら、気にしないで食べて」

「うん、ありがとう……」

3人の優しさは嬉しかったがアリスは情けない気持ちになった。
午後に少しだけチャレンジさせて貰おうと思ったのだ。
そう思い魚に口をつけると素朴な味にも関わらずとても美味しく感じたのだった。


「……美味しいよぉ……」

ちょっと泣いた。




フルームだけ2匹目を食べ、それが食べ終わるとフラムが話し始めた。

「一応3匹は残してあるけどどうする?一匹だけちょっと小さいのよね」

「今日はこれでもいいんじゃないか?サイズの指定は無かったし」

エイシェルが今日の依頼はこれでいいと言い始めた。アリスは少し焦り気味に声を上げる。

「ごめん、あと少しだけやってもいい?30分やって釣れなかったらそれで終わりでいいから……」

「別にいいわよ?今日はもともとゆっくりするつもりだったし」

「ありがとう。……ねぇ、エイシェル?お願いがあるんだけど……わたしの擬似餌の針の部分にミミズ付けてからないかしら?」

「別にいいが?それより大丈夫か?あんなに嫌がっていたのに」

「う、嫌だけど……そんなことは言ってられないから……」

アリスはもう恥ずかしいとか言っている場合では無かった。このまま帰ったら文字通りお荷物である。そう思い必死だったのだ。

「それなら針は普通のがいいんじゃない?」

「いえ、そのままで行くわ。一発大きいのがかかったらいいなって」

……勝負のことも忘れてはいないアリスだった。

エイシェルが手際よくミミズを針につける。
アリスはその様子を見て顔が青ざめたが、我慢して竿を持っていた。
針が3本広がる形状であったためミミズも3箇所に付いている。

「……それ、あれじゃないの?」

「……あれだな」

「……あれよね。アリス、よく持っていられるわね」

「あれとか言わないで!分かってるから!?」

形状がウサギモドキの頭に似ていたのだった。

そして各自少しの間釣りに戻るとすぐにアリスの竿に魚がかかる。

「え!?なに!?どうすればいいの!?」

アリスは急に引っ張られた事に驚きつつもしっかりと竿を掴む。
そこへフラムがやってきて一緒に竿を引いた。

「え?これは……お、重い!エイシェルきて!これ私だともってかれる!」

フラムがそう言うとエイシェルがサポートに入った。

「3人で竿は持てないから私交代するわね。エイシェル頼んだわよ」

そう言うとフラムは竿から手を離し2人から離れた。

「…….お姉ちゃん、策士だね」

「いや、本当に重かったのよ?!」

フルームが勘繰って余計なことを言うがフラムはそんなことを画策する余裕はなかった。それほどに大物だったのだ。

後ろの2人をよそにアリスとエイシェルは必死だった。

「アリス!タイミングを合わせて引き上げるぞ!」

「そんな簡単に言われても!?そもそも糸が切れちゃうんじゃないの!?」

「む、それはそうか……」

アリスは考えた。この状況で釣り上げるためにはどうするか。
まずは対象を弱らせることを考えたが、納品するものを弱らせるのはまずい。
そうなると糸と竿の強化が考えられた。

(アースニードルなら魔力を込めれば硬くなるのに……。ん?魔力って物にも込められるのかしら……?)

アリスは咄嗟に竿から糸、そして針先まで強化するイメージで魔力を竿に流した。
すると竿のしなり方が変わったように感じた。おそらく糸と針も壊れにくくなっているはず。そう思ったアリスは叫んだ。

「エイシェル!今魔力を流して強化させたから多分いける!」

「はぁ!?そんなこと出来るのか?……分かった信じるぞ!」

どのみちこのままでは体力を持っていかれるだけであったため賭けに出た。

「一気にいくぞ!3、2、1」

「それ!」

「えい!」

2人は勢いよく竿を引き上げた。すると巨大な影が宙を舞う。
……1mに満たないくらいの巨大な魚が釣れたのだった。
そして勢い余ってそのままエイシェルとアリスは後ろに倒れ込んだ。


「釣れたー!見て!すごくおっきい!」

「う、釣れたのはいいけど、ちょっとどいてもらえると助かる……」

アリスはエイシェルの上ではしゃいでいた。
エイシェルはちょっと顔を赤くしてそっぽを向く。

「あ!ご、ごめん!大丈夫?痛みは……ちょっとあるわね。ヒール」

アリスはアドレナリン全開だった為痛みに鈍くなっていた。
エイシェルにヒールをかけて回復させる。

「ありがとう、でもこれくらいならなんともないのに」

「私が気になるの」

アリスは満面の笑みでエイシェルに向かって言った。余程嬉しかったのかさっきまでの憂鬱な表情は微塵にも感じられないくらい元気に見える。
その様子を見たエイシェルはやっと元気になったと安心し、嬉しく思うのだった。


「魚!2人とも魚が打ち上がってるから!」

「早く水に入れないと死んじゃうー!!」


口をパクパクさせてビチビチしていた魚が少し動きが鈍くなっている。
4人は急いで釣った魚を桶に入れるのだった。
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