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第三章 王都への旅
104.イカ焼き
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フェルスが短く乾杯の挨拶をすると割れんばかりの歓声に包まれる。
それを機に宴会が始まるのだった。
エイシェル達は飲み物(エイシェル達はジュース)片手に話しかけてくる人に挨拶と他愛もない会話を繰り返していた。
特にエイシェルとフルームの魔法やフラムの剣について質問が来たがどれも訓練したとだけ答えて重要な部分はぼかしていた。
勇者の魔法については話せるわけもない。魔王と勇者の会話から『人間族』側で何かがあったのは間違いない。
万が一知らないところで漏れてトラブルでも起きてしまったら目を当てられない。
その為エイシェルとアリスは自然とはぐらかすようにしたのだった。
また、フルームの魔法やフラムの剣についても説明するには竜玉の効果が不可欠である。
セラスの忠告もあったことから竜玉については触れず訓練したとだけしかいえなかったのだ。
実際に訓練している姿を見たものもいる為、幸い深く追求されることもなかった。
それらとは別に、フルームがあれだけの攻撃を受けて今ピンピンしていることについても質問があったが、回復薬学者のセルロが作った高級回復薬のおかげだと答えていた。
その話がフェルスの耳に届き、次にパエニンスラの港町へ行く時は必ず訪問しなくてはと密かに計画するのだった。
挨拶もひと段落し何か食べる物でも取ろうとした4人だったが驚きの光景が目に入る。
「ん?あれは……まさか!?」
「え?あれってたべれるの!?」
「……よく食べる気になったわね」
「あれって私が切り落としたやつでは?」
エイシェル、アリス、フラム、フルームはそれぞれ思ったことが口から出るほどに驚いていた。
なぜならば今日戦っていたクラーケンの串焼きが振る舞われていたのだ。
フルームが決死の思いで切り落とした触手は甲板に横たわっており、片付ける際に海に捨てようか話が出たが、滅多にない代物だから食べてみようと話になったのだ。
そして厨房の料理人と相談してこの様に切り分けてから串焼きにするといったモノに決まったのだった。
「やぁ、皆さん。今回も大活躍だったみたいですね」
4人が驚いていると声をかけてくるものがいた。
「あ、メルカさん」
船内ではあまり遭遇することはなかった為忘れかけていたがメルカも乗船客として宴会に招かれていた。
聞くところによると騎士団員向けの回復薬の準備や、いざとなった時に重い荷物を捨てて逃げられるようにと奔走していたらしい。
戦えないものは戦えないなりに乗員全員でこの危機を乗り越えたのだ。
そんな話を聞いていたところでアリスが話を切り出す。
「それで、あそこにあるものですけど……」
「ん?皆さんが倒した魔物ですが?海に捨てられそうだったところを料理できないか料理長に相談してみたらこうなりました」
まさかの発起人だった。
「実はここに食材を卸してまして。ちょうど料理長と打ち合わせる機会があったのが幸いしました。私も料理長も分野に違いはあれど珍しいものには手を出さないと気が済まない性分なので……せっかくなので食べてきたらどうですか?せっかくあなた達が倒したのですから」
メルカはそう言うとどこかへ行ってしまった。
宴会こそ縁を繋げる絶好の場所である。
商人として縁はとても大事であり、出来るだけ多くの人と話すことにしているのだ。
そんなメルカを見送るとアリスがパッと切り替えて話し出す。
「それじゃあ、せっかくだから食べてみましょう!」
「あれを食べるのか……?」
「イカは食べたことあるけどあんなに大きいと大味じゃないかしら……?」
「私、あれにやられたからちょっと複雑な気分だよ」
「そんな事言ってないで!ほら!行きましょ!」
アリスはあまり乗り気でない3人を引き連れて串焼きを貰いに行く。
アリスは魔法と食事の事になるととても積極的なのだ。
「これは……見た目と匂いは美味しそうね」
「一応、イカだしな」
「もっとブヨブヨしてるかと思ったわ」
「私は斬ったり叩きつけられたりしてたからもっとカチコチかと思ってたよ。あの時はすごく硬かったんだけどなー」
串焼きを貰った4人はそれぞれ感想を述べると意を決してクラーケンの串焼きに食らいついた。
すると予想外にも美味しく笑顔が溢れる。
「なにこれ!?美味しい!」
「甘塩っぱいタレが弾力のあるイカの身に絡みついて美味しいな。淡白な身に濃いめの味付けがよくあってる」
「歯応えも硬すぎず柔らかすぎず、ちょうどいいわね」
「こんなに美味しいなんて……体を張った甲斐があったね……!」
串焼きがあまりにも美味しかった為、4人は何度もおかわりをしてクラーケンの串焼きを堪能するのだった。
「うぷ……ちょっと食べすぎたか……?」
エイシェルは船のヘリにもたれかかり休んでいた。
4人で串焼きを食べていたのは良かったがアリスとフルームの食べるペースにつられて食べていた為気付けば結構な本数食べていたのだ。
お腹いっぱいになった為エイシェルは夜風に当たろうと宴会の輪から少し外れた場所で休むことにしたのだ。
「それにしても勇者か……なんでおれの中にいるんだろう……?おかげで助かったけど……っていうかそもそもおれの中に居なかったら旅にも出てないか。……父さんも母さんも死なずに済んだのかな……」
エイシェルの頭の中でぐるぐると考えが回っていた。
もし、勇者がエイシェルの中にいなかったら今頃何をしていたのだろうかとか、狩りもしていなかっただろうとか。もともと好きで作っていた料理の道に進んでいたのかなど様々な考えが浮かんでは消えるを繰り返していた。
エイシェルが物思いにふけっていると背後から声がかけられる。
「どうしたの?海をぼーっと見ちゃって」
「ん?アリスか。串焼きはもういいのか?」
「うん。これ以上食べたら明日の朝ごはんが食べれなくなるからほどほどにしてきた」
「ほどほど、ね」
アリスが串焼きのおかわりループを切り上げてエイシェルのもとに来たようだ。
既にかなりの量を食べていた筈だがアリスにとってはほどほどらしい。
ツッコんでいいものか悩んだエイシェルだったが百害あって一利なしと判断しツッコむことをやめた。アリスもエイシェルの呟きは気にしていない様子である。
言わぬが花である。
「で、どうしたの?」
「いや、どうしておれの中に勇者が入ってるんだろうって思ってさ。……あ、まだ言ってなかったか、さっき体渡してたって言ってたのは……」
エイシェルは思ったことをそのまま口に出したところで説明が不足している事に気づく。
慌てて補足しようとしたがアリスからの言葉で遮られた。
「分かっているわよ。……イメージが流れ飲んだ時に薄々そうじゃないかと思っていたもの。……体を渡したってことはエイシェルの意志で渡せたのよね?……もう分かっていると思うけど、私の中にいるのは魔王よ。わたしを怒らせて体を乗っ取ってきたわ」
「乗っ取ってきたって……やっぱり急いでどうにかしないと危ないじゃないか!早く魔法を解かないと……あれ?それでどうにかなるのか?」
アリスがそう言うとエイシェルが焦ったように言う。しかし、具体的な話をしようとした時違和感に襲われた。
そして、その違和感の正体はアリスも分かっていた。
「そう、多分エイシェルが思っている通りよ。エイシェルと勇者との間に"魔法のつながり"を感じない。違う?エイシェルが呪文で呼んでくれた時に感じたけど、エイシェルの事しか分からなかった。つまり、魔法を解いても消えることは無いんだと思う」
「そんな……それじゃこのままだとアリスは……!」
エイシェルはアリスの答えを聞き絶望するかのような表情を浮かべる。
今まで王都に行き魔法のことを調べれば解決すると信じて突き進んでいた。
それが叶わないと分かると手詰まりを感じて絶望したのだった。
アリスはエイシェルの様子を見て慌てて補足する。
「あぁ、それは大丈夫だと思う。最初は無理やりだったけど……最後に流れ込んできたイメージってすごく優しかったから。もう乗っ取るなんて事はして来ないんだと思う。中に入ったままの状況は変わらないけどそこは安心していいわ」
「そう、なのか……?そうだといいんだが……でもやっぱり心配だ」
「ありがとう、でも大丈夫だから。それとは別に魔法は解かなきゃだから王都に着いたら解き方を調べないとね」
アリスはなるべく心配をかけないようにと思いながらも本心から答えた。
確かに魔王から怒るようなことをされたがアリスは不思議と根に持つような感情が生まれなかったのだ。
理由は分からないがスッと納得したかのように気にならなくなっていた。
「そうだな。王都についたら調べよう。……しかし、アリスが怒るっていったい何されたんだ?」
「え!?」
アリスが気にならなくなったところをエイシェルが蒸し返す。
まさかエイシェルが蒸し返してくるなんて考えもしなかった為アリスは焦っていた。
かつてアリスに怒られたエイシェルとしてはもう怒られたく無い為何が原因なのか気になったのだ。
「い、いや……大したことはないよ?うん!今思えばなんでもない!!」
「そんなことはないだろ……もしかして言い辛い事なのか?弱みを握られてるとか?」
「あー、えーっと……?まぁそんなとこ?でも気にしないでいい事だからね」
アリスはテンパっていた。まさか原因の一端はあなたですなんて言えるはずもなく、歯切れの悪い答えとなってしまった。
しかも、無駄に肯定してしまった為にややこしくしてしまっていた。
「そういうわけにもいかないだろ!よければ話してくれ。力になりたいんだ」
「だ、だから気にしなくていいって」
「でも、心配なんだ。また乗っ取られるかもしれないし、出来ることがあるならしておきたい」
「あー!!もー!!大丈夫って言ってるでしょ!?言い辛いって言ってるんだからスルーしてよね!?いつも心配してくれるのは嬉しいけど、わたしが大丈夫って言ってるんだから大丈夫なんだって!!それともわたしの話が信用できないの!?」
「い、いや……そう言うわけじゃ……」
(あれー?なんかすごく怒ってるんだけど……)
アリスはエイシェルが一向に引かなかった為、焦りとテンパりがピークに達しエイシェルに怒り出した。
エイシェルも少ししつこくしてしまったとは思っていたが、まさか急に怒り出すとは思ってもいなかった。
アリスの怒りを買わない為にしようとした事で怒られ、本末転倒なエイシェルであった。
それを機に宴会が始まるのだった。
エイシェル達は飲み物(エイシェル達はジュース)片手に話しかけてくる人に挨拶と他愛もない会話を繰り返していた。
特にエイシェルとフルームの魔法やフラムの剣について質問が来たがどれも訓練したとだけ答えて重要な部分はぼかしていた。
勇者の魔法については話せるわけもない。魔王と勇者の会話から『人間族』側で何かがあったのは間違いない。
万が一知らないところで漏れてトラブルでも起きてしまったら目を当てられない。
その為エイシェルとアリスは自然とはぐらかすようにしたのだった。
また、フルームの魔法やフラムの剣についても説明するには竜玉の効果が不可欠である。
セラスの忠告もあったことから竜玉については触れず訓練したとだけしかいえなかったのだ。
実際に訓練している姿を見たものもいる為、幸い深く追求されることもなかった。
それらとは別に、フルームがあれだけの攻撃を受けて今ピンピンしていることについても質問があったが、回復薬学者のセルロが作った高級回復薬のおかげだと答えていた。
その話がフェルスの耳に届き、次にパエニンスラの港町へ行く時は必ず訪問しなくてはと密かに計画するのだった。
挨拶もひと段落し何か食べる物でも取ろうとした4人だったが驚きの光景が目に入る。
「ん?あれは……まさか!?」
「え?あれってたべれるの!?」
「……よく食べる気になったわね」
「あれって私が切り落としたやつでは?」
エイシェル、アリス、フラム、フルームはそれぞれ思ったことが口から出るほどに驚いていた。
なぜならば今日戦っていたクラーケンの串焼きが振る舞われていたのだ。
フルームが決死の思いで切り落とした触手は甲板に横たわっており、片付ける際に海に捨てようか話が出たが、滅多にない代物だから食べてみようと話になったのだ。
そして厨房の料理人と相談してこの様に切り分けてから串焼きにするといったモノに決まったのだった。
「やぁ、皆さん。今回も大活躍だったみたいですね」
4人が驚いていると声をかけてくるものがいた。
「あ、メルカさん」
船内ではあまり遭遇することはなかった為忘れかけていたがメルカも乗船客として宴会に招かれていた。
聞くところによると騎士団員向けの回復薬の準備や、いざとなった時に重い荷物を捨てて逃げられるようにと奔走していたらしい。
戦えないものは戦えないなりに乗員全員でこの危機を乗り越えたのだ。
そんな話を聞いていたところでアリスが話を切り出す。
「それで、あそこにあるものですけど……」
「ん?皆さんが倒した魔物ですが?海に捨てられそうだったところを料理できないか料理長に相談してみたらこうなりました」
まさかの発起人だった。
「実はここに食材を卸してまして。ちょうど料理長と打ち合わせる機会があったのが幸いしました。私も料理長も分野に違いはあれど珍しいものには手を出さないと気が済まない性分なので……せっかくなので食べてきたらどうですか?せっかくあなた達が倒したのですから」
メルカはそう言うとどこかへ行ってしまった。
宴会こそ縁を繋げる絶好の場所である。
商人として縁はとても大事であり、出来るだけ多くの人と話すことにしているのだ。
そんなメルカを見送るとアリスがパッと切り替えて話し出す。
「それじゃあ、せっかくだから食べてみましょう!」
「あれを食べるのか……?」
「イカは食べたことあるけどあんなに大きいと大味じゃないかしら……?」
「私、あれにやられたからちょっと複雑な気分だよ」
「そんな事言ってないで!ほら!行きましょ!」
アリスはあまり乗り気でない3人を引き連れて串焼きを貰いに行く。
アリスは魔法と食事の事になるととても積極的なのだ。
「これは……見た目と匂いは美味しそうね」
「一応、イカだしな」
「もっとブヨブヨしてるかと思ったわ」
「私は斬ったり叩きつけられたりしてたからもっとカチコチかと思ってたよ。あの時はすごく硬かったんだけどなー」
串焼きを貰った4人はそれぞれ感想を述べると意を決してクラーケンの串焼きに食らいついた。
すると予想外にも美味しく笑顔が溢れる。
「なにこれ!?美味しい!」
「甘塩っぱいタレが弾力のあるイカの身に絡みついて美味しいな。淡白な身に濃いめの味付けがよくあってる」
「歯応えも硬すぎず柔らかすぎず、ちょうどいいわね」
「こんなに美味しいなんて……体を張った甲斐があったね……!」
串焼きがあまりにも美味しかった為、4人は何度もおかわりをしてクラーケンの串焼きを堪能するのだった。
「うぷ……ちょっと食べすぎたか……?」
エイシェルは船のヘリにもたれかかり休んでいた。
4人で串焼きを食べていたのは良かったがアリスとフルームの食べるペースにつられて食べていた為気付けば結構な本数食べていたのだ。
お腹いっぱいになった為エイシェルは夜風に当たろうと宴会の輪から少し外れた場所で休むことにしたのだ。
「それにしても勇者か……なんでおれの中にいるんだろう……?おかげで助かったけど……っていうかそもそもおれの中に居なかったら旅にも出てないか。……父さんも母さんも死なずに済んだのかな……」
エイシェルの頭の中でぐるぐると考えが回っていた。
もし、勇者がエイシェルの中にいなかったら今頃何をしていたのだろうかとか、狩りもしていなかっただろうとか。もともと好きで作っていた料理の道に進んでいたのかなど様々な考えが浮かんでは消えるを繰り返していた。
エイシェルが物思いにふけっていると背後から声がかけられる。
「どうしたの?海をぼーっと見ちゃって」
「ん?アリスか。串焼きはもういいのか?」
「うん。これ以上食べたら明日の朝ごはんが食べれなくなるからほどほどにしてきた」
「ほどほど、ね」
アリスが串焼きのおかわりループを切り上げてエイシェルのもとに来たようだ。
既にかなりの量を食べていた筈だがアリスにとってはほどほどらしい。
ツッコんでいいものか悩んだエイシェルだったが百害あって一利なしと判断しツッコむことをやめた。アリスもエイシェルの呟きは気にしていない様子である。
言わぬが花である。
「で、どうしたの?」
「いや、どうしておれの中に勇者が入ってるんだろうって思ってさ。……あ、まだ言ってなかったか、さっき体渡してたって言ってたのは……」
エイシェルは思ったことをそのまま口に出したところで説明が不足している事に気づく。
慌てて補足しようとしたがアリスからの言葉で遮られた。
「分かっているわよ。……イメージが流れ飲んだ時に薄々そうじゃないかと思っていたもの。……体を渡したってことはエイシェルの意志で渡せたのよね?……もう分かっていると思うけど、私の中にいるのは魔王よ。わたしを怒らせて体を乗っ取ってきたわ」
「乗っ取ってきたって……やっぱり急いでどうにかしないと危ないじゃないか!早く魔法を解かないと……あれ?それでどうにかなるのか?」
アリスがそう言うとエイシェルが焦ったように言う。しかし、具体的な話をしようとした時違和感に襲われた。
そして、その違和感の正体はアリスも分かっていた。
「そう、多分エイシェルが思っている通りよ。エイシェルと勇者との間に"魔法のつながり"を感じない。違う?エイシェルが呪文で呼んでくれた時に感じたけど、エイシェルの事しか分からなかった。つまり、魔法を解いても消えることは無いんだと思う」
「そんな……それじゃこのままだとアリスは……!」
エイシェルはアリスの答えを聞き絶望するかのような表情を浮かべる。
今まで王都に行き魔法のことを調べれば解決すると信じて突き進んでいた。
それが叶わないと分かると手詰まりを感じて絶望したのだった。
アリスはエイシェルの様子を見て慌てて補足する。
「あぁ、それは大丈夫だと思う。最初は無理やりだったけど……最後に流れ込んできたイメージってすごく優しかったから。もう乗っ取るなんて事はして来ないんだと思う。中に入ったままの状況は変わらないけどそこは安心していいわ」
「そう、なのか……?そうだといいんだが……でもやっぱり心配だ」
「ありがとう、でも大丈夫だから。それとは別に魔法は解かなきゃだから王都に着いたら解き方を調べないとね」
アリスはなるべく心配をかけないようにと思いながらも本心から答えた。
確かに魔王から怒るようなことをされたがアリスは不思議と根に持つような感情が生まれなかったのだ。
理由は分からないがスッと納得したかのように気にならなくなっていた。
「そうだな。王都についたら調べよう。……しかし、アリスが怒るっていったい何されたんだ?」
「え!?」
アリスが気にならなくなったところをエイシェルが蒸し返す。
まさかエイシェルが蒸し返してくるなんて考えもしなかった為アリスは焦っていた。
かつてアリスに怒られたエイシェルとしてはもう怒られたく無い為何が原因なのか気になったのだ。
「い、いや……大したことはないよ?うん!今思えばなんでもない!!」
「そんなことはないだろ……もしかして言い辛い事なのか?弱みを握られてるとか?」
「あー、えーっと……?まぁそんなとこ?でも気にしないでいい事だからね」
アリスはテンパっていた。まさか原因の一端はあなたですなんて言えるはずもなく、歯切れの悪い答えとなってしまった。
しかも、無駄に肯定してしまった為にややこしくしてしまっていた。
「そういうわけにもいかないだろ!よければ話してくれ。力になりたいんだ」
「だ、だから気にしなくていいって」
「でも、心配なんだ。また乗っ取られるかもしれないし、出来ることがあるならしておきたい」
「あー!!もー!!大丈夫って言ってるでしょ!?言い辛いって言ってるんだからスルーしてよね!?いつも心配してくれるのは嬉しいけど、わたしが大丈夫って言ってるんだから大丈夫なんだって!!それともわたしの話が信用できないの!?」
「い、いや……そう言うわけじゃ……」
(あれー?なんかすごく怒ってるんだけど……)
アリスはエイシェルが一向に引かなかった為、焦りとテンパりがピークに達しエイシェルに怒り出した。
エイシェルも少ししつこくしてしまったとは思っていたが、まさか急に怒り出すとは思ってもいなかった。
アリスの怒りを買わない為にしようとした事で怒られ、本末転倒なエイシェルであった。
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