ジェミニ 〜魂の契約者達〜

えいりす

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第四章 王都防衛戦

127.王

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 翌朝はみんな何事もなく起床し朝ごはんを食べ迎えを待っていた。
 魔王は寝る必要がないので夜間に誰か来ないか警戒していたようだが特に怪しい動きはなかったそうだ。
 余談だが朝ごはんも非常に美味しかった。昨晩の食事と比べると豪華さには欠けるがシンプルで素朴な味はとても繊細に感じられた。食事後に魔王がまた文句を言っていたが、魔王自身この感情は本来の自分のものではないと認識出来ていた為、昨日ほどの抵抗はなく諦めてくれた。ただ、わかってはいても文句のひとつでも言わないと気が済まなかったようだ。

 しばらく待っていると昨日の兵士とは別の男が現れた。その男が現れた瞬間待っていた4人に緊張が走る。船着場でフェルスを呼び出していた男だったからだ。

「待たせてしまったようですまない。貴公らが船を救った英雄で間違いないか?」

「英雄……かはわからないですけど、昨日2人の兵士にポルトゥスからここへ連れてきてもらいました」

 男の確認にエイシェルが曖昧に答える。流石に自分達の事を英雄かと聞かれて「はい、そうです」なんて答える度胸はない。それに、船に乗っていたみんなの力があったからこそ船を守ることが出来たのだ。
 ただ、「違います」というのはなんか違う。多分合っていると分かるほどの情報を提示して向こうの判断にゆだねた。一方でその男は何も気にすることなく話を進める。

「間違いないようだな。申し遅れた。私は国王直属の部隊長を務めるウンブラという者だ。……国王直属の部隊なんて知らないって思っただろ。この部隊は公表されていない。国に影響を及ぼす相手の前にしか姿を現さないからな。……あぁ、警戒しなくていい。国に影響とは言ってもいい影響の場合もある。今回の呼び出しはいい影響の結果だ。理由は王から直接聞いてくれ。俺のことは国王を守る秘密の部隊の長とでも思ってくれ。何か
質問はあるか?」

 ウンブラの説明が終わると4人は首を
横に振る。思うところはあるが聞いては
いけない気がしたのだ。
 ウンブラは言った。国に影響を及ぼす相手の前に現れると。そして、いい影響の"場合もある"と。裏を返せばほとんどの活動は悪い影響を及ぼす相手をどうにかしていると言うことだろう。そんな相手がどうなったか、そもそもの罪状はなんだったのか。聞いてしまえばきっと元には戻れない。そんな危険を感じ取ったのだ。

「質問はないみたいだな。では、早速王の元へ行こうか」

 そんな事を考えて緊張している4人を知ってか知らずかウンブラは建物の入り口に停めた馬車へ4人を誘導するのだった。



 少しだけ馬車に揺られるとすぐに目的地へ到着する。それもそのはず、宿から王城まで目と鼻の先なのだ。それでも馬車を手配するところをみるとエイシェル達を丁重に扱おうとする意志を感じた。……そもそも王が呼び出した相手なのだ。歩かせるのは論外だったのだろう。扱いはまさに国の要人そのものだ。

 ウンブラに城の中へ招き入れられ案内されるがままに歩くととびきり豪華な扉の前に着く。どうやらここが国王との謁見部屋のようだ。
 え、着いてすぐ謁見ですか?4人はそんな表情をし緊張しながらも扉を開け進む。というより場所が場所である為ウンブラについて行く以外の選択肢はない。
 部屋に入ると中央に分かりやすく玉座があり座っている人物が目に入った。通路の左右に何人もの人が参列している。どうやら何も準備出来ていなかったのはエイシェル達だけらしい。

「陛下、4人をお連れしました」

「うむ」

 4人が列の最前列に到着するととウンブラが玉座の男へ声をかける。玉座の男はそれに短く答える。
 左側をよく見ると昨日会話したアイトネが最前列にいた。
 また、右側をみると礼装用の装備だろうか白に統一された鎧を身にまとっていた為わからなかったがフェルスと騎士団が参列している。ローブを纏った人達も参列しているが、あれが魔術部隊だろう。剣術部隊の先頭にいるのがフェルスということは、魔術部隊の先頭にいるのが魔術部隊の団長だろう。……部隊なのだから部隊長ではないのだろうか?
 正直何用で呼ばれたのか分からない状況で知り合いがいるのは心強い。アイトネやフェルスの表情から見ても悪いことはなさそうだ。こちらの視線に気付いた2人がニコニコしている。
 エイシェルがそんな事を考えていると玉座の男が喋り出す。

「よく来てくれた。余はインサニア国の王、インサニア34世だ」

 その玉座に座る初老の男、インサニア34世は玉座にドッシリと構えており威厳が感じられた。34世ということは同じ名前で世襲でもしているのだろうか。ずっと同じ名前で世襲しているならひとりあたりの任期を30年としてだいたい1000年か?エイシェルはそんなことを考えていた。
 ……ただ、王様を目の前にして何故だが不自然な印象を受ける。
 エイシェルが不自然の原因を探るが一見しても分からない。もっと良く探ろうと国王を見るがその前に国王が喋り始めた。

「話は聞かせてもらった。此度はクラーケン討伐、実に大義であった。昔からあの海域はあの魔物が居座り常に危険と隣り合わせだった。逃げ切るだけの速度が出る船しか通れなかったがこれで他の船も安心して航海ができる。そこで、そなたらに褒美を与える」

 寝耳に水とはこの事だろう。ステラに言われ避けるようにと考えていたがそんな必要はなかったようだ。緊張していたエイシェル達は自然と頬が緩む。

「まず報酬として金貨一万枚を与えよう」

「い、いちまん!?」

「ち、ちょっと……!」

 王が報酬の額を伝えるとエイシェルが思わず声を上げる。王の前で声を出すのは流石にまずいと思ったのかアリスがエイシェルにしか聞こえないほどの声で注意した。注意したもののアリス自身も額に動揺している。

「よい。冒険者の身でこれだけの額を手にすることはなかろう。それに見合った働きをしたということだ。素直に受け取るが良い。そして、その働きを讃え冒険者のランクも上げることとする」

「それって……!」

 今度はアリスが声を上げてしまう。今のランクはなんだったか?そこから一つあげるとはどういうことか?そんなことは誰でもわかることだ。問題はそれが一番上のランクであること。

「今やこのランクの冒険者は数えるほどしかいない。是非ともこれからもそのランクに見合った働きを続けてほしい。おめでとう。ここに新たなAランク冒険者の誕生だ」

 王の言葉を皮切りに部屋全体が震えるほどの拍手喝采が起きる。部屋にいる皆でエイシェルたち4人を祝っているのだ。
 改めてAランクと言われウソではないのだと実感する4人。声を出してしまったエイシェルとアリスはもちろん、必死に我慢していたフラムとフルームでさえ手が震えていた。それもそのはず、現存するAランク冒険者とは過去にドラゴン討伐を成し遂げたメンバーだけである。亡くなってしまったエイシェルの両親であるアランとカレン、現役を引退し半ば隠居状態のフラターは対象外となる為、実質アリスの両親であるルードスとマーテル、フラムとフルームの父親のフェルスの3人だけとなる。そこに加わることができるのだ。全員平静を保つので精一杯だった。
 そんな状態にもかかわらず王がさらにぶっ込んでくる。

「さて、ここまでは決められた報酬だ。功績を考えるとそれでも足りないくらいだが……どうだろうか?何か望みはあるか?どんな願いでも叶えられるものなら叶えよう」

 ……突然言われても正直困る!意思疎通せずとも4人の考えは一致するのだった。
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