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第四章 王都防衛戦
128.願い
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王からの無茶振りに戸惑う4人であったが、意を決してアリスが言葉を発する。
「ありがとうございます。ただ、一度仲間と相談してから決めても良いでしょうか?」
アリスとしてはこの場でどこまで真にうけて良いものかはかりかねていた。そこで一度王都に馴染みのあるフラムとフルームに相談しようと考えたのだ。何も知らなければそれでもいい。みんなで考えるから。もしも何かヒントがもらえるなら儲けもんである。
そんなことを考えていると王はその考えをぶち壊してきた。
「ん?別に相談せずとも良い。4人それぞれで願いを言えばよいではないか?」
いや、そうじゃない。そうじゃないんだ。王の回答に途方に暮れるアリス。発言をしてしまった手前何か言わなければならないだろうがここで好き放題願い事を言うのはきっとまずいだろう。……まずいのか?あれ、本当に好き放題言っていいの?アリスが自身の気持ちが揺らぐのを感じる。そんな中、思ってもみないところから発言があった。
「……身に余る光栄に存じます。実は私達は魔法について見識を深めようと旅をしております。もしお赦しを得られるのであれば何か魔法の理を解く手がかりを戴きたく存じます」
慌てて声のする方を見るエイシェルとアリス。こんな話し方をする人がいただろうかと。声の主を確認するとそこにはフルームがいた。エイシェルとアリスは開いた口がふさがらなかったが、フラムが平然としているところをみると特段変な事ではないのだろう。しかし、いつもとのギャップがあった為エイシェルとアリスからするとお前誰だ状態である。
「ふむ、魔法……か。それなら城の書庫にある本の閲覧を認めよう。門兵には話を通しておくから好きな時に来て案内して貰いなさい。古い文献に何か手がかりがあるやもしれぬ。あとは魔法部隊の者に話を聞いてみるのも良いかもしれぬな」
「はっ!恐悦至極に存じます!」
まさかの城の中へ入る許可をもらうフルーム。書庫限定とはいえ城の中を見知らぬ冒険者が歩くのは問題ではないか?うっかり廊下の花瓶を割って逮捕されないか?そう考えてしまうアリスは小心者なのかもしれない。一方でエイシェルはなにやら難しい顔をしている。
その後はすぐ退室となった。ウンブラに連れられ応接室へと通され賞金の金貨一万枚の受け取りについて相談と冒険者カードの更新、入城許可証の発行をしてもらい部屋を出る。ちなみに金貨一万枚は持てる量ではないので冒険者ギルドに送って貰う事になった。ギルドのロッカーなら仕舞うことが出来るだろう。
そのまま城の外へ出た4人はウンブラと別れ道を歩く。
「……んー!緊張して肩凝っちゃった。……夢じゃないよね?わたし達本当にAランク冒険者になったんだよね!?」
緊張から解けたアリスは両手を天高く伸ばして身体を伸ばした。伸びをしているアリスは実に気持ちよさそうである。いままで散々警戒していた相手から賛辞があり、報酬も夢かと思うくらい貰え、しまいにはランクアップしたのだ。夢と言った方が現実味のある驚きの結果である。はしゃいでしまうのは仕方がないことだ。
「その分責任も生まれちゃったけどね。国やギルドが依頼、招集をかけたら応じなくちゃいけないわ」
「そうか、それがAランクを維持する条件ってことか……あれ、1年以内に一回はランク相当の依頼を受けなきゃいけないんじゃなかったか?」
「そうそう、それわたしも気になってた!Aランク相当の依頼ってそんなにあるの?掲示板見てもほとんどがCランクだったような……そもそも、Aランクの依頼ってどんな依頼なんだろう?」
フラムのひと言にエイシェルが疑問を浮かべる。アリスも同じことを思っていたようでエイシェルの思ったことを代弁した。
「それねーAランク"相当"ってところがミソだよ」
エイシェルとアリスが考えているとフルームから答えが返ってくる。
「うちのパパがそうだけど、騎士団の団長してるでしょ?あれってギルドからの依頼ってことになってて、それがAランク相当の依頼になるみたい」
「フルームの言う通りで本来の所属は冒険者ギルドなんだけど、騎士団へしゅっこう?とかで肩書きは団長なのよね」
「「ほー……」」
疑問に思っていた2人はフルームとフラムの説明を聞き納得する。確かによく考えればアリスの両親もAランク冒険者なわけであり、少なくともアリスの父であるルードスは船で度々返ってくることからAランクを維持しているのだろう。一緒に生活していて両親が何か特別依頼を受けているような話は聞かない。つまり魔法部隊への魔法指南はギルドからのAランク相当依頼である可能性が高い。そう考えた時に母親のマーテルがなんちゃって外科医をしているのも納得ができる。外科医というには無理がありすぎるヒールのゴリ押し。それはマーテルをAランクに留めるためにギルドが無理矢理用意したポジションに違いない。
ギルドがそこまでしてAランク冒険者に仕事を斡旋するのか?という話はあるが実は考えてみるとそこまでおかしくはない。Aランク冒険者は冒険者の頂点である。それこそ全冒険者の憧れと言っても過言ではない。そのAランク冒険者がすぐに降格してしまい、現在誰もいませんなんて事になったあかつきにはAランクになるのは苦労するだけで旨味がないと思われ冒険者のやる気も無くなる。ランクを上げて名を上げようとする冒険者も一定数いる為、その層を失うのはギルドとしては手痛いだろう。
対外的にもAランク冒険者がいないというのは格好が悪い為、一度Aランク冒険者となった者へのランクを維持する為のサポートは結果的にギルドの為になるのだ。
エイシェルとアリスが勉強になったという顔をする中ふとエイシェルが気になっていたことを突っ込んだ。
「そういえば、フルーム?あの喋り方はなんだったんだ?すごくキリッとした喋り方してたけど……まさかフルームの中にも誰か別の人が……」
「そんなのいないよー。失礼しちゃうな。私だってその場所に相応しい喋り方くらいするよ。一応パパが有名人だからいろんな人と挨拶しなくちゃいけなくて、それで恥をかかないようにって小さい頃に教え込まれたんだよ」
「そんなに使う機会なんて無かったけどね。私達2人とも騎士になるんだーって言ったら剣の稽古メインに切り替わったし」
どうやら2人は小さい頃にマナーのお稽古で喋り方など礼儀作法を叩き込まれたようだ。エイシェルとアリスはそれはどこのお嬢様だ?とも思ったが、よく考えたらAランク冒険者であり国軍騎士団の団長を務める人の娘達だ。間違いなくお嬢様だろう。
「いや、あまりにも別人のようだったからびっくりしただけだ」
「ほんと、いつものフルームってこう、本能で喋ってる感あるじゃない?普段のフルームからは想像もできなかったもん」
「あははー普段の私がなんだってー?そういうことを言う口はここかなー?」
フルームがアリスの頬を引っ張る。流石にちょっと言い過ぎたようでフルームには珍しく怖い笑顔を浮かべている。
「い、いはいいはい(痛い痛い)!ご、ごへん(ごめん)!ごへんっへはー(ごめんってばー)!はなひへー(離してー)!」
「うりうりー」
「……それ、おれも痛いんだけど……」
「エイシェルも同じ目をしてたから同罪ね」
「んな理不尽な!」
ひとしきりアリスの頬をいじめたフルームはそろそろ勘弁してやるかと言った表情で手を離す。フルームの手から解放されたアリスは涙目になりながら頬に両手を当てている。
エイシェルもうっすら涙を浮かべるが手を添えるほどではないらしい。エイシェルとしては早くヒールをして欲しいところである。そんな事を考えていると痛みがひいた。たぶんアリスがヒールを使ったのだろう。
「うー……ごめんってば……」
アリスが涙目で謝る。痛みはひいたがフルームがここまで怒るとは思ってもみなかった為内心焦っていた。するとフルームが突然アリスを指差して言う。
「これからはもっと頼ってよね!私やお姉ちゃんだって得意なことはあるし、こういう時は支え合い!……あともうちょっと信頼してくれてもいいと思う」
要するにフルームが言いたいことはお互い得意なことが違うのだからもっと頼って欲しいと言うことだった。アリスは何か話さなきゃと王の前でいきなり喋り出したが、まず周りを見回して欲しかったのだ。そうすればフラムやフルームがアイコンタクトを送り、自分達に任せろと話し始めたであろう。ただ、最後に取ってつけたかのような言葉はなぜかぼそぼそっと不貞腐れたように喋る。
「うん?信頼はしてるわよ?確かに目上の人と話す時とかは相談した方がいいわね」
「そこじゃないんだけどなー……あとで魔王さんから聞いてね。あ、質問はしちゃダメだよ?答えられなくなるから」
「……えっとー、何を聞いたのかしら……?」
フルームはアリスの問いかけに対してエイシェルをちらりと見る。当のエイシェルはフルームの視線に気づかずにいたが、その様子を見ていたアリスは瞬時に答えに辿り着く。魔王、フルーム、エイシェル。この3人が関係する事なんて一つしかない。そしてそれならフルームの言葉も納得がいく。
恐らく魔王は話したのだ。魔王がアリスの身体を乗っ取った時にあった事を。……アリスがフルームに嫉妬していたことを。でも、いつ?なんで?なんのためにそんなことをした?そんな考えがアリスの頭の中をぐるぐるまわる。
とりあえず何か言わなきゃと焦るアリスを見てフルームは思わず吹き出す。アリスの元へ駆け寄りこそこそと話し始めた
「大丈夫だよ。……昨日はちょっと私の悪ふざけが過ぎたけど私はずっと応援してるから!だから何も気にしないで。……負い目を感じる必要もないからね!」
「フルーム……!ごめんね。ごめんなさい……」
「謝らないでよー」
アリスはずっと胸に引っ掛かっていたのだ。クラーケンとの戦いでは危うくフルームを見殺しにしてしまうところだった。挑発してきた魔王が悪いのは間違いないがその挑発にアリスが乗ってしまったのは事実だ。挑発に乗ったということは少なからずその感情があったということ。アリスはどこか自分の中にフルームがいなくなればいいと思う自分がいたのではないかと考えていたのだ。もちろんそんな気はない。ないはずだがもしかしてとも思う。そう思うとフルームやフラムに対してさえもどこか一歩ひいていたように感じる。
フルームが歩み寄ってくれたおかげで胸のつっかかりがとれたアリスは思わず泣きながらフルームに抱きつくのだった。
「……ええっと、何があったんだ?アリスは大丈夫なのか?」
「……私に聞かないでよ。どうしてこんなことになってるのかさっぱりだもの」
事情を何も知らない外野2人は泣きじゃくるアリスとそれを宥めるフルームをみるだけでどうしたら良いのか分からず途方に暮れるのだった。
「ありがとうございます。ただ、一度仲間と相談してから決めても良いでしょうか?」
アリスとしてはこの場でどこまで真にうけて良いものかはかりかねていた。そこで一度王都に馴染みのあるフラムとフルームに相談しようと考えたのだ。何も知らなければそれでもいい。みんなで考えるから。もしも何かヒントがもらえるなら儲けもんである。
そんなことを考えていると王はその考えをぶち壊してきた。
「ん?別に相談せずとも良い。4人それぞれで願いを言えばよいではないか?」
いや、そうじゃない。そうじゃないんだ。王の回答に途方に暮れるアリス。発言をしてしまった手前何か言わなければならないだろうがここで好き放題願い事を言うのはきっとまずいだろう。……まずいのか?あれ、本当に好き放題言っていいの?アリスが自身の気持ちが揺らぐのを感じる。そんな中、思ってもみないところから発言があった。
「……身に余る光栄に存じます。実は私達は魔法について見識を深めようと旅をしております。もしお赦しを得られるのであれば何か魔法の理を解く手がかりを戴きたく存じます」
慌てて声のする方を見るエイシェルとアリス。こんな話し方をする人がいただろうかと。声の主を確認するとそこにはフルームがいた。エイシェルとアリスは開いた口がふさがらなかったが、フラムが平然としているところをみると特段変な事ではないのだろう。しかし、いつもとのギャップがあった為エイシェルとアリスからするとお前誰だ状態である。
「ふむ、魔法……か。それなら城の書庫にある本の閲覧を認めよう。門兵には話を通しておくから好きな時に来て案内して貰いなさい。古い文献に何か手がかりがあるやもしれぬ。あとは魔法部隊の者に話を聞いてみるのも良いかもしれぬな」
「はっ!恐悦至極に存じます!」
まさかの城の中へ入る許可をもらうフルーム。書庫限定とはいえ城の中を見知らぬ冒険者が歩くのは問題ではないか?うっかり廊下の花瓶を割って逮捕されないか?そう考えてしまうアリスは小心者なのかもしれない。一方でエイシェルはなにやら難しい顔をしている。
その後はすぐ退室となった。ウンブラに連れられ応接室へと通され賞金の金貨一万枚の受け取りについて相談と冒険者カードの更新、入城許可証の発行をしてもらい部屋を出る。ちなみに金貨一万枚は持てる量ではないので冒険者ギルドに送って貰う事になった。ギルドのロッカーなら仕舞うことが出来るだろう。
そのまま城の外へ出た4人はウンブラと別れ道を歩く。
「……んー!緊張して肩凝っちゃった。……夢じゃないよね?わたし達本当にAランク冒険者になったんだよね!?」
緊張から解けたアリスは両手を天高く伸ばして身体を伸ばした。伸びをしているアリスは実に気持ちよさそうである。いままで散々警戒していた相手から賛辞があり、報酬も夢かと思うくらい貰え、しまいにはランクアップしたのだ。夢と言った方が現実味のある驚きの結果である。はしゃいでしまうのは仕方がないことだ。
「その分責任も生まれちゃったけどね。国やギルドが依頼、招集をかけたら応じなくちゃいけないわ」
「そうか、それがAランクを維持する条件ってことか……あれ、1年以内に一回はランク相当の依頼を受けなきゃいけないんじゃなかったか?」
「そうそう、それわたしも気になってた!Aランク相当の依頼ってそんなにあるの?掲示板見てもほとんどがCランクだったような……そもそも、Aランクの依頼ってどんな依頼なんだろう?」
フラムのひと言にエイシェルが疑問を浮かべる。アリスも同じことを思っていたようでエイシェルの思ったことを代弁した。
「それねーAランク"相当"ってところがミソだよ」
エイシェルとアリスが考えているとフルームから答えが返ってくる。
「うちのパパがそうだけど、騎士団の団長してるでしょ?あれってギルドからの依頼ってことになってて、それがAランク相当の依頼になるみたい」
「フルームの言う通りで本来の所属は冒険者ギルドなんだけど、騎士団へしゅっこう?とかで肩書きは団長なのよね」
「「ほー……」」
疑問に思っていた2人はフルームとフラムの説明を聞き納得する。確かによく考えればアリスの両親もAランク冒険者なわけであり、少なくともアリスの父であるルードスは船で度々返ってくることからAランクを維持しているのだろう。一緒に生活していて両親が何か特別依頼を受けているような話は聞かない。つまり魔法部隊への魔法指南はギルドからのAランク相当依頼である可能性が高い。そう考えた時に母親のマーテルがなんちゃって外科医をしているのも納得ができる。外科医というには無理がありすぎるヒールのゴリ押し。それはマーテルをAランクに留めるためにギルドが無理矢理用意したポジションに違いない。
ギルドがそこまでしてAランク冒険者に仕事を斡旋するのか?という話はあるが実は考えてみるとそこまでおかしくはない。Aランク冒険者は冒険者の頂点である。それこそ全冒険者の憧れと言っても過言ではない。そのAランク冒険者がすぐに降格してしまい、現在誰もいませんなんて事になったあかつきにはAランクになるのは苦労するだけで旨味がないと思われ冒険者のやる気も無くなる。ランクを上げて名を上げようとする冒険者も一定数いる為、その層を失うのはギルドとしては手痛いだろう。
対外的にもAランク冒険者がいないというのは格好が悪い為、一度Aランク冒険者となった者へのランクを維持する為のサポートは結果的にギルドの為になるのだ。
エイシェルとアリスが勉強になったという顔をする中ふとエイシェルが気になっていたことを突っ込んだ。
「そういえば、フルーム?あの喋り方はなんだったんだ?すごくキリッとした喋り方してたけど……まさかフルームの中にも誰か別の人が……」
「そんなのいないよー。失礼しちゃうな。私だってその場所に相応しい喋り方くらいするよ。一応パパが有名人だからいろんな人と挨拶しなくちゃいけなくて、それで恥をかかないようにって小さい頃に教え込まれたんだよ」
「そんなに使う機会なんて無かったけどね。私達2人とも騎士になるんだーって言ったら剣の稽古メインに切り替わったし」
どうやら2人は小さい頃にマナーのお稽古で喋り方など礼儀作法を叩き込まれたようだ。エイシェルとアリスはそれはどこのお嬢様だ?とも思ったが、よく考えたらAランク冒険者であり国軍騎士団の団長を務める人の娘達だ。間違いなくお嬢様だろう。
「いや、あまりにも別人のようだったからびっくりしただけだ」
「ほんと、いつものフルームってこう、本能で喋ってる感あるじゃない?普段のフルームからは想像もできなかったもん」
「あははー普段の私がなんだってー?そういうことを言う口はここかなー?」
フルームがアリスの頬を引っ張る。流石にちょっと言い過ぎたようでフルームには珍しく怖い笑顔を浮かべている。
「い、いはいいはい(痛い痛い)!ご、ごへん(ごめん)!ごへんっへはー(ごめんってばー)!はなひへー(離してー)!」
「うりうりー」
「……それ、おれも痛いんだけど……」
「エイシェルも同じ目をしてたから同罪ね」
「んな理不尽な!」
ひとしきりアリスの頬をいじめたフルームはそろそろ勘弁してやるかと言った表情で手を離す。フルームの手から解放されたアリスは涙目になりながら頬に両手を当てている。
エイシェルもうっすら涙を浮かべるが手を添えるほどではないらしい。エイシェルとしては早くヒールをして欲しいところである。そんな事を考えていると痛みがひいた。たぶんアリスがヒールを使ったのだろう。
「うー……ごめんってば……」
アリスが涙目で謝る。痛みはひいたがフルームがここまで怒るとは思ってもみなかった為内心焦っていた。するとフルームが突然アリスを指差して言う。
「これからはもっと頼ってよね!私やお姉ちゃんだって得意なことはあるし、こういう時は支え合い!……あともうちょっと信頼してくれてもいいと思う」
要するにフルームが言いたいことはお互い得意なことが違うのだからもっと頼って欲しいと言うことだった。アリスは何か話さなきゃと王の前でいきなり喋り出したが、まず周りを見回して欲しかったのだ。そうすればフラムやフルームがアイコンタクトを送り、自分達に任せろと話し始めたであろう。ただ、最後に取ってつけたかのような言葉はなぜかぼそぼそっと不貞腐れたように喋る。
「うん?信頼はしてるわよ?確かに目上の人と話す時とかは相談した方がいいわね」
「そこじゃないんだけどなー……あとで魔王さんから聞いてね。あ、質問はしちゃダメだよ?答えられなくなるから」
「……えっとー、何を聞いたのかしら……?」
フルームはアリスの問いかけに対してエイシェルをちらりと見る。当のエイシェルはフルームの視線に気づかずにいたが、その様子を見ていたアリスは瞬時に答えに辿り着く。魔王、フルーム、エイシェル。この3人が関係する事なんて一つしかない。そしてそれならフルームの言葉も納得がいく。
恐らく魔王は話したのだ。魔王がアリスの身体を乗っ取った時にあった事を。……アリスがフルームに嫉妬していたことを。でも、いつ?なんで?なんのためにそんなことをした?そんな考えがアリスの頭の中をぐるぐるまわる。
とりあえず何か言わなきゃと焦るアリスを見てフルームは思わず吹き出す。アリスの元へ駆け寄りこそこそと話し始めた
「大丈夫だよ。……昨日はちょっと私の悪ふざけが過ぎたけど私はずっと応援してるから!だから何も気にしないで。……負い目を感じる必要もないからね!」
「フルーム……!ごめんね。ごめんなさい……」
「謝らないでよー」
アリスはずっと胸に引っ掛かっていたのだ。クラーケンとの戦いでは危うくフルームを見殺しにしてしまうところだった。挑発してきた魔王が悪いのは間違いないがその挑発にアリスが乗ってしまったのは事実だ。挑発に乗ったということは少なからずその感情があったということ。アリスはどこか自分の中にフルームがいなくなればいいと思う自分がいたのではないかと考えていたのだ。もちろんそんな気はない。ないはずだがもしかしてとも思う。そう思うとフルームやフラムに対してさえもどこか一歩ひいていたように感じる。
フルームが歩み寄ってくれたおかげで胸のつっかかりがとれたアリスは思わず泣きながらフルームに抱きつくのだった。
「……ええっと、何があったんだ?アリスは大丈夫なのか?」
「……私に聞かないでよ。どうしてこんなことになってるのかさっぱりだもの」
事情を何も知らない外野2人は泣きじゃくるアリスとそれを宥めるフルームをみるだけでどうしたら良いのか分からず途方に暮れるのだった。
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