ジェミニ 〜魂の契約者達〜

えいりす

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第四章 王都防衛戦

137.王都防衛報酬

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 魔物が王都を襲撃してから一夜が明け、4人は冒険者ギルドのギルド長室に呼ばれていた。部屋にはアイトネとジレトニー、あともう一人いた。白く長い顎の髭を生やしたおじさん。そんな印象の男だった。
 4人がアイトネに促され椅子に座るとアイトネが喋り出した。

「まずは、皆さん昨日はご苦労様でした。皆さんのお陰で被害なくこの未曾有の事態を乗り切ることができました。本当にありがとうございます」

 そういうとアイトネは4人に向かって深々と頭を下げる。それに合わせてジレトニーともうひとりも頭を下げる。
 ギルドマスターにサブギルドマスター、もうひとりもこの場にいるということはそれなりの役職のものだろう。その3人が頭を下げるのは通常であれば考えられないことだ。つまり、4人の功績がいかにすごいことだったかを物語っている。
 しばらく頭を下げたままの3人にエイシェル達4人は困惑していたが、声をかけようと思った時には姿勢を戻しまた喋り出した。

「今回の依頼の報酬ですが、本来であれば参加した冒険者に一律金貨5枚、そこに魔物から剥ぎ取った素材を別途買い取るような内容なのですが、みなさんの活躍を考えると安すぎるのです。そこで、皆さんには特別報酬として金貨一万枚をお渡しします。クラーケンの分と合わせて金貨二万枚ですね……ちょっと置き場所がないのでいったんギルドの金庫に入れておきます。受け取りの際はお声がけ下さい」

 クラーケン討伐の報酬として金貨一万枚と言われた時でもとんでもない金額だと思ったが、まさかの倍になってしまった。4人で割ったとしても一人当たり金貨5千枚である。余程大きな買い物をしない限り生活に困ることはないだろう。
 臨時収入に固まる4人。最初は何を言っているのか頭に入ってこなかったようだが遅れて理解すると素直に喜ぶのだった。

 4人がひとしきり喜んだ後にジレトニーが喋り出した。

「しかし、よくやるぜ。本当に森を消し飛ばすなんてな。一緒に魔物まで消し飛ばしたから思ったより魔物の剥ぎ取り素材の買取申告が少なかったよな?サフ?」

「全くだ!予想の半分だぜ?討伐数も他の冒険者使って調べたが五千に満たねえ。つまり最初の爆発で半分消し飛ばしちまったってことだ」

 ジレトニーにサフと呼ばれた白い髭の男はまるで怒っているかのように大きな声で喋っている。するとアイトネから紹介があった。

「紹介が遅れましたね。彼はサフ。当冒険者ギルドの買取、資材調達部署の長をしてもらっています」

「サフだ。コイツから紹介があったように素材の買取や必要な物資の調達する部署にいる。何か困ったことがあれば相談に乗るぜ」

「おまえが今困ってるけどな」

 サフが自己紹介したところでジレトニーが茶々を入れる。

「仕方ねえだろ?城から補助もらうのに申請した分の半分なんだから」

 サフの言葉でアリスがピンと来た。最初に話していた魔物の半分を吹き飛ばしたことによって困っているのだと気付いたのだ。

「あ、あの。すみませんでした!」

 仕方のないことだとはいえ罪悪感を覚えたアリスはサフに謝る。するとサフはキョトンとした後、豪快に笑い出した。

「ガハハハ!そうか!おまえがやったのか!気にせんでいい、ただ申請の訂正がものすごくめんどくさいだけだ。むしろギルドとしては助かってるぞ?城からの補助は遅れて入ってくるからな。まずギルドの負担になるんだ。その間はギルドの資金が減るからどうしようかって話をしてたんだが……負担が半分になったんならなんとかなりそうって話になってる」

「……それなら……よかったです!」

 サフの説明に今度はアリスがキョトンとする番だった。だが自分のした事でただ迷惑をかけたわけではないと安心して笑顔になる。しかし、次の瞬間にはその屈託のない笑顔が瞬時に固まった。

「しかし、ひとりで森を吹き飛ばすなんて大したもんだな"涙食姫"」

「!!?」

「その若さで通り名持ちなんざなかなかいないぞ?なぁ"涙食姫"」

「ぁ……ぁ……」

「さ、サフ?彼女はその名前が……」

「もっと胸を張っていいんだぜ"涙食姫"」

「うわああああああああああああああん」

「ちょっ!?」

「アリス!?」

「どこ行くんだ!?」

 サフがアリスの通り名を連呼する。次第にアリスの顔が赤くなり震え出したところでアイトネがフォローをしようとする。しかしフォローする間も無くサフがとどめを刺しアリスはエイシェルの言葉も虚しく顔を真っ赤にして走り去るのだった。

「……俺、なんか悪いことしたか?」

 サフは事態についていけないのだった。




 恥ずかしさのあまりつい走り出してしまった。ギルドの入り口まで走ったところで冷静になる。

(思わず走って逃げちゃったけどだいぶ失礼よね……わたし……。戻って謝る?ううん、それはそれで恥ずかしすぎる……どうしよおおお!)

「おーい!」

 アリスが頭を抱えていると後ろから声が聞こえた。どうやらエイシェルが後を追いかけてきたようだ。

「え、エイシェル……急に出て行ってごめん。その……みんなは……?」

 追いかけてきたのがエイシェルひとりだとわかると他のみんなが何をしているのか気になる。全員で追いかけられても困るのだがいないといないで気になる。
 アリスの申し訳なさそうな顔を見たエイシェルは少し困った顔を浮かべながらもすぐに柔らかな顔になり説明する。

「フラムとフルームはまだアイトネさん達と話してるよ。この後フェルスさんが来るらしくてフェルスさんがふたりに用事があるみたいだ。だからフェルスさんがくるまで雑談してるみたい。おれとアリスはさっきの話で終わりだったからもういいみたい。だからおれだけ先に出てきたってわけ。それから、アイトネさんがすみません、だってさ」

 エイシェルが説明をするとアリスはホッとしながらもなんともバツの悪い複雑な気持ちになっていた。それでも今から戻るのはそれはそれで恥ずかしいのと、アイトネから謝罪の言葉があったということはも取らなくても良いように気を遣ってくれたのだろう。
 また今度会った時にちゃんと謝ろうと心に決めたアリスは今は気にしない事に決めた。

「それで、これからどうする?フラムもフルームも用事があるみたいだし……」

「そうね、せっかくだから王都を見てまわらな……い?」

 この時ふたりは自分達の置かれている状況に気付いた。

(あれ、よく考えたらアリスとふたりっきり……?)

(どうしよう……!エイシェルとふたりっきり!)

(まるでデートじゃないか!?)
(まるでデートじゃない!!?)

 似たもの同士とはこの事である。
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