ジェミニ 〜魂の契約者達〜

えいりす

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第四章 王都防衛戦

155.天使

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 取り残されたエイシェル、アリス、フラム、フルームはその場でエイシェルの魔法が終わるのを待っていた。しかし、広がる範囲が広いのかなかなか終わらない。先程まで真っ赤になっていた竜玉も元の色に戻り熱も無くなっている。その為、魔力の爆発を抑えつけていたアリスはその任から解放されていた。

「ふぅ……」

 爆発を避けられ一安心するアリス。ただ、別の心配事が生まれていた。

「ねぇ、エイシェル?これ後どれくらい魔力使うの?」

 竜玉の中の魔力が一気に減った上にまだまだ魔力を消費し続けているのだ。当然後どれくらい必要になるかが気になる。
 アリスに質問されるとエイシェルは答えにくそうな表情をしていた。

「……悪い、足りないかも」

「え?」

 エイシェルの答えに顔が引き攣るアリス。あれだけ竜玉に魔力を込めたというのに足りないと言い出した。

「し、しょうがないわね。今、竜玉に魔力を追加するから」

 幸い竜玉の中にはまだ魔力が残っている状態である為、そこにアリスが魔力を注ぎ続ければ良い。そう考えてアリスが竜玉に手をかざした瞬間事件が起きた。

ピキッ

「は?」

「ん?」

 不穏な音が聞こえエイシェルとアリスは竜玉を見る。すると竜玉にヒビが入っていた。

「なんか、ヒビが入ったけど……これ大丈夫なの?」

「嫌な予感しかしないんだけど……」

 横から見守るフラムとフルームも不安になり問いかける。その不安はすぐ現実のものになるのだった。



ピキピキ……パリンッ

「あ!?」

「えぇ!?」

アリスが追加で魔力を込め始めるとすぐに割れてしまったのだ。アリスは慌てて割れた竜玉に魔力を込めようとするが割れてしまったせいか魔力をこめることができない。それどころか竜玉に残っていた魔力も竜玉が割れた瞬間に霧散してしまった。

「アリス!?」

「分かってる!!」

 エイシェルの呼びかけに即座に反応するアリス。竜玉の魔力が使えないとなれば当然自前の魔力を使う必要が出てくる。それはつまりエイシェルとアリスの生命力に直結する。その為アリスは急ぎ生命力の回復に努めるのだった。

「……ダメだ!このままだと生命力が減る一方だ!」

「やばいやばいっ!?こんなんどうすりゃいいのよ!?」

「お姉ちゃん!なんかない!?」

「なんかってなによ!?私の持ってる竜玉も魔力残ってないわ!」

 4人は焦っていた。このままではエイシェルとアリスの魔力が、つまり生命力が枯渇してしまう。それはつまり死を意味する。このままでは危険だと分かってはいるがエイシェルとアリスは焦ってしまい解決策を見つけられずにいた。
 横から見ているフラムとフルームも何か手伝えることはないかと考えるが打ち手がない。フラムとフルームの竜玉もドラゴンとの戦いで魔力が尽きている。
 どうしようもないと4人が慌てているとどこからともなく声が聞こえてきた。

『エイシェルはこの娘から魔力を使って!あなたは魔力生成に集中する!』

 アリスのカバンから声がし、魔王が的確に指示を出す。今はエイシェルの生命力から魔力を生成し魔法を使っている。アリスはそれに引っ張られて消耗される自分の生命力を回復させていた。
 そのままではエイシェルが生命力を魔力に変換する際にロスが生じてしまう。そのロスをアリスが変換した魔力を直接使うことで軽減しようというのだ。

 エイシェルは言われた通り竜玉から魔力を使うのと同じ感覚でアリスから魔力を貰おうとする。しかし、思うように魔力が使えない。仕方なく自分で生命力から変換した魔力を使う。

「ダメだ!他人の魔力は使えないみたいだ」

『そんなこと……他の人ならまだしもあなた達なら出来るはず……』

 魔王は少し考えた後あることを思いつき提案する。

『……手を繋いでみたらできない?』

「「手を……?」」

 エイシェルとアリスは魔王に言われるがまま向かい合い両手を繋いでみた。すると光っていたエイシェルの身体同様に手を繋いだアリスの体も光り出した。エイシェルはまるで体が一つになったかのようにアリスの生み出した魔力を使うことができた。それはあたかも、もともと自分のものであるかのような錯覚すら覚えるほど自然な感覚であった。

「すごい……これなら……!」

 エイシェルとアリスは光り輝きながら魔法を使い続けるのだった。

「……さっきよりきらきら増えてる……なんか神秘的」

「……それに、光がハネのように広がっているわね……まるで御伽話に出てくる天使みたいだわ」

 フルームとフラムがそれぞれ感想を述べる。エイシェル達が手を繋いでからより一層光の粒が増えたのだ。まるで魔法の力が増したようだった。
 実はそれはあながち間違ってはいない。アリスが持っている真珠によりエイシェルの魔法の効果も上がったのだ。カバンの中で真珠が光っているのだが、アリス自身も光っている為気が付かなかった。



 そのまま魔法を使い続けていると人が集まってきた。アイトネたちが蘇生した人に布を渡していると、無事だった人々がその奇跡の正体を見つけようと光の粒が濃い場所へ向かってきたようだ。

「あれは……白衣の天使様……!」

「あの男の子は……瓦礫の下から助けてくれた……!」

「あの子達は天からの使いだったのか……!」

 集まってきた人が各々感想を述べる。その光景はまさに御伽話そのものであり、誰もがその光景に釘付けになっている。

 そのまましばらくすると次第に光が収まり魔法の効果が終わったようだ。気付けば周りには奇跡の正体を一目見ようと集まった人々で埋め尽くされている。






「…………ふぅ。……ってえぇ!!?」

「なにかあったか……?ってはあぁ!!?」

 魔法を使っている時なんとなく目を瞑っていたふたりは目を開けて周りを見渡し驚く。そこにはどこから湧いてでてきたのか人で溢れていた。

「天使様!」

「天使さまー!」

 誰かが叫ぶ。するとその声に便乗しどんどん声が大きくなる。それは次第に大きな歓声になりその場を埋め尽くした。

「何がどうなってるんだ……?」

「え、えぇぇ……?」

「えぇ?って、ふたりとも自分のしたことを考えてみて?」

 エイシェルとアリスが驚く中、フラムが冷静に声をかける。エイシェルはよくよく考えてみるととんでもないことをしたような気がしてきた。

「わ、わたしはそんな大した事してないわよ?魔力補充してただけだし……」

「それも十分すごいってそろそろ気づいてもいいんじゃないかな……?」

「ほんとよ。それに、アリスがいなかったらエイシェルは今頃魔力不足で大変な事になってたと思うわ」

 事実、途中で竜玉が割れアリスなしでは今回の魔法を成功させることはできなかっただろう。ふたりだからこそ成し遂げられたのだ。

「それに、ふたりとも光って羽が生えたようになってたから……」

「本当の天使みたいだったね!」

「あぅ……」

 天使と言われ恥ずかしくなるアリス。もう新しい二つ名が決まったも同然だった。
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