ジェミニ 〜魂の契約者達〜

えいりす

文字の大きさ
156 / 226
第四章 王都防衛戦

156.奇跡の結果

しおりを挟む
 集まった人々が様々な声をあげる。そのどれもがエイシェルとアリスを讃えるものであった。
 そんな時人ごみをかき分けて近づいてくる人がいた。

「皆さん!」

「あ、アイトネさん!」

「まさか本当に死者を生き返らせるなんて思いもしませんでしたよ……。まずは皆を助けていただきありがとうございました」

 突然のギルドマスターの登場に辺りがどよめき、アイトネがお礼を言い頭を下げるとそのどよめきがさらに広がる。
 アイトネは王都の中でも知名度が高い。ギルドの長なのだから当然だろう。そのギルドの長が頭を下げる相手などなかなかいない為皆驚いたのだ。
 皆が驚きざわざわする中でアイトネが続けて話す。

「皆さんにはきてもらいたい場所があります。ついてきてください」

「えっと……はい……」

「わかった……」

 アイトネに言われるがまま着いていく4人。エイシェルとアリスはとにかくこの場にいることが耐えられなかった為、渡りに船であった。
 フラムとフルームは人がどんどん集まる様を見ていた為半ば諦めている。もちろん最初はどうにかしようとしたのである。集まった人に危険だからとか、魔法の邪魔になるからどこかに行くように言ったのだが「もし危険があっても天使様のそばにいたい」だの「一緒に祈らせて下さい」だの言うことを聞いてくれなかったのだ。しまいにはフラム達も天使を守る騎士と呼ばれてしまい諦めたのだ。
 この時アリスの気持ちがわかったのは言うまでもない。



 アイトネについて行くとそこは遺体安置所だった。ただ、先ほどまでの辛気臭い空気は微塵も感じられず辺りが賑わっていて騒がしい。
 そのまま中に入ると横たわっていた遺体はどこにもなく、中にいるのは生きた人間だけであった。

「あ、あの人……」
 
 アリスの目に先ほど助けられなかった人が映る。彼女だろうかキレイな女性を抱きしめて涙を流している。

「ここにいるみんな、あなた達が救ったんですよ?」

「わたし達が……」

 アイトネはエイシェル達がした偉業を、その結果を見せたかったのだ。その光景をみたアリスは心打たれていた。助けられなかった人が、思い出の中でしか生きられないと思った人が目の前で生きている。喜びのあまり涙を流している。素直に良かったと思えた。彼女さんにも悲しい思いをさせずに済んだ。……いや、きっと一度絶望したのだろう。ただ奇跡が起きた。その結果がコレである。

「アリス……?」

「え?」

 エイシェルに心配されてアリスは自分の目から涙が溢れていることに気が付いた。
 アリスは先ほどまでの苦しい空気に負けないようにと気を張っていた。しかし、この奇跡に喜ぶ人々を見た途端気が抜けていまい目から涙が溢れ出た。

「大丈夫。……助けられなかった人がいたんだけど、元気になったみたいで……よかったなと……」

 アリスは喋ってるうちに感極まってしまった。その様子を見たエイシェルはそっとアリスの肩を抱き寄せる。エイシェルは約束を守ったのだ。アリスが助けたいと思った人も助ける。そうアリスに誓った。その言葉通りアリスの助けたかった人を、みんなを救うことができた。

(なんか私達邪魔になってない?)

(だよね)

 フラムとフルームがこそこそ話す。エイシェルとアリスがちょっといいムードになってるので少し距離を取ろうとした。そんな時横から声をかけられる。

「フルーム!みんな!」

 エイシェルとアリス、アイトネも含めた5人が声のした方を向くと目の周りを赤く腫らしたディルがこちらに手を振って近づいてくるところだった。その後ろには先ほど横たわっていたアニスもいる。

「ディル!良かったね!」

「ああ!」

 フルームがそう言うと満面の笑みでディルが答える。その後ろからアニスが会釈をし話し始める。

「お話は聞きました……。みなさん、ディルを助けていただき本当に有難うございました……!聞けば私も生き返らせてもらったみたいで……」

「お礼ならこのふたりに言ってよ。ふたりがいなかったドラゴンも倒せなかったし、そもそもみんなを生き返らせたのはこのふたりだし」

 フルームがそう言うとエイシェルとアリスの方へ向く。アニスはふたりを見て少し悩んだ後思い出したかのように叫んだ。

「あ!クレープ屋にいたカップル!」

「このふたり……あの宝石を持ってた!?」

「待って!エイシェル!このふたりは大丈夫だから!」

 アニスの発言にエイシェルが思い出す。アリス同様に祖龍との関係を疑ったのだ。咄嗟にアリスを庇うような体勢になったところでアリスがエイシェルを説得する。



 アリスから説明を受けたエイシェルはふたりが敵でないことを納得し改めて挨拶をした。
 アリスとアニスは名前が似ている事から話しのキッカケは簡単にでき、話しているうちにすぐ仲良くなったようだ。そこへフラムとフルームも加わり姦しい空間が出来上がっていた。

「エイシェルさん、アイトネさん」

 ディルが残された男どもに話しかける。その面持ちは真剣なものでなにやら覚悟を決めたようにも見える。

「さっきアリスさんに説明してもらった通り、今回の騒動は俺の責任です。どんな罰でも受ける覚悟です。罪は償うつもりですから……」

 ディルがそんなことを言ってきた。それを聞いたアイトネは困ったような表情で考え、何か思いついたかのように話し始める。

「そうですね……。確かにここまでの騒動になったのであれば罰を与えなくてはならないでしょう」

「ち、ちょっと待って!ディルは悪くないでしょ?魔石を納品していたとしても結果は変わらなかったはずだし!」

 女子4人で話をしていたがディル達の会話が聞こえたようでフルームが割り込んできた。ディルは運が悪かっただけだ。それなのに罰を与えるなんて酷いと思ったのだ。

「わたしも……わたしも共犯です。ディルが罰を受けるのなら私も受けます!」

「アニスさん……!」

「アイトネさん、どうにか出来ないんですか?」

 ディルが罰を受けるのであれば自分もとアニスまでいいだし、アリスが驚く。フラムがアイトネに罰を無くせないのか打診するがアイトネは笑顔で話す。

「ダメですよ。黙って"宝石を着服しようとしていた罪"は償ってもらいます」

「……は?」

 ディルがポカンとする。それを見たアイトネだったが構わず言葉を続ける。

「本当はAランク冒険者の皆さんに手伝ってもらおうと思ったのですが…… 。ジレトニーから聞きました。ディル君も腕が立つようで。Bランクのつけ置き依頼がたんまりあるんです。それを消化し切るのを手伝ってもらいますよ?」

「え?いや、ドラゴンがみんなを殺してしまったのに……」

「はて?みんな生きてるじゃないですか?」

「それは……それに、俺はまだCランクだし」

「今回のドラゴン討伐の功績を称えBランクへ昇格です。あぁ、アニスさんも連帯責任でしたね。アニスさんもBランクに上げますので一緒につけ置き依頼消化しましょうね」

 アイトネはなんとも無いように告げる。ギルドとしてはこの事態になった手前何かしらの罰を与える必要が出てくる。ただ、ギルドの裁量で決められる為この様な罰にしたのだ。つけ置きの依頼は報酬が見合わない、ただただ面倒臭いといった、誰もやりたがらない依頼である。それを強制的に受けさせられるというのは本来ならとてつもない罰であろう。そう、誰もが嫌がる罰なのだ。それを与えるのであればギルドとして今回の事件について文句は言わせない。ディル4人達が素直につけ置き依頼をこなしているうちはギルドが後ろ盾になってくれるだろう。
 つまり、この罰はディル達を守る事にも繋がるのだ。

「アイトネさん……ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

「おや?罰を与えられて喜ばれるのはちょっと……まぁこれからよろしくお願いしますね」

「「はい!」」

 ディルとアニスは昇格し新しい役目を得る。その顔は希望に満ち溢れていた。つけ置き依頼はきっと大変なのだろう。でも、きっと終わらせることができるとふたりは確信する。何故ならばひとりではない。信頼するふたりだから、ディルとアニスだからどんな事でもやり切れてしまうと思えた。

 そんなふたりとアイトネと別れたエイシェル達4人はすっかり遅くなってしまった為宿に帰る。アリスのカバンの中が魔法が終わったにも関わらず光っている事に誰も気付く事はなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...