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第五章 アンダーグラウンド
161.緊急依頼発注
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「んーーーー!生きててよかった!」
「あなた生後1日でしょ……でも気持ちは分かるわ!」
ディアとアリスが恍惚とした表情をしながらエイシェルの作ったイノシシ料理を食べていた。
メニューは様々で、単純に塩を振って焼いたものから、肉が柔らかくなるように煮込んだものもある。エイシェルは手持ちの限られた調味料でも出来る料理を考えて4人に振る舞っていた。
流石にイノシシの解体現場で食事をするわけにはいかない為、料理を食べている4人は少し離れたところにいる。
「いつも思うけどよくこんな美味しく作れるわね」
「これならいくらでも食べれるよ」
ディアとアリスだけでなくフラムとフルームも満足そうな表情を浮かべエイシェルの料理を食べる。
先程まで魔物が押し寄せていたのが嘘のように和やかである。事実、不安がないと言えば嘘になるが危機が去った今この時くらいは楽しもうとエイシェルは考えていた。そして、そのエイシェルが作った料理を食べた4人にもその想いは伝わった。
食べ進めるうちに食事に感動したのか、張り詰めていた気が抜けたのかわからないが、ディアが涙を流したのも仕方のないことだろう。
「ふぅー……文字通り生き返ったわ。ありがとね、エイシェル」
「お粗末さまでした」
ひと通り料理を作り終えたエイシェルも食事に参加し、5人で料理を平らげる。しかし、解体現場(森の入口付近)には解体してなお余ったイノシシ肉と、氷漬けになった大量のイノシシの魔物の山があった。
「もう食べられないけど、お肉はまだまだいっぱいあるんだよねー」
「凍らせてるからしばらくは保つと思うけど……勿体無いけどあのお肉全部は食べられないかな……」
「あなた達どれだけ食べるつもりなのよ……。そもそもあれを肉と呼ぶか……」
フルームとアリスが残った肉に想いを馳せる。氷漬けになった魔物の山を肉としか言わない2人にフラムは少し心配になるのだった。
「皆さん!」
「あ、アイトネさん!と、サフさんも!」
5人が少し休んでいると坂の下の方から声が聞こえたと思い、声の方を見るとそこにはアイトネとサフがいた。2人は呼吸を乱すことなく坂を登ってきた。
「やっぱりお前達だったか……ん?そこの黒髪の別嬪さんは誰だ?」
「あっ……」
「えっと……」
サフがディアを見つけ質問をする。アリスとエイシェルがなんで説明していいか悩んでいるとディアが自己紹介を始めた。
「初めまして。ディアと申します。4人とは昨日知り合いまして、坂の上にあるオムライスが美味しいお店を知っていると言うので道案内をしてもらっていたんです。西側のお店ならもしかするとやってないかなと思い……」
平然と嘘をつくディア。エイシェルとアリスがディアを見るとディアからは笑顔で「何か?」という表情を返される。
2人は色々聞きたいことはあるがここは黙って従うべきと判断し何も言わなかった。
そんなディアの自己紹介を受けてサフとアイトネも"何事もなく"自己紹介をし返している。
エイシェルとアリスだけでなくフラムとフルームまでそわそわしているがそんな事を気にする事なくアイトネが話し続ける。
「残念ですが昨日のことがあり、すべてのお店は臨時休業中です。ある程度の復興の目処が立ったらまた営業再開すると思いますのでお待ち下さい」
「あら、こちらもお休みなんですね。残念です」
お前は誰だと言わんばかりの視線を向けるアリス。ディアはその視線を知ってか知らずか見事なまでの無視を決める。
そんな事は気付かないアイトネが会話を続ける。
「それはそうと、先程大きな音と眩しい光がこちらからしたので来てみたのですが……ってなんですかあれは!?」
アイトネは視線を公園奥の森に移した瞬間驚きの声を上げる。奥には氷漬けになったイノシシの魔物の山があるのだから驚くのは当然であった。
横にいたサフも言葉を失いただ口を開けたまま固まるのだった。
「…………魔物の群れが突然現れてこちらに向かってきた、と。そして異常を知らせる為に上空で爆発を起こし、待っている間に足止めをしていた……が待っている間に殲滅した。という事ですね」
アイトネはふたつの意味で頭を抱えながら今聞いた話を要約した。
ひとつ目はギルドとして王都を守る義務があるにも関わらず、魔物の襲撃に気付けなかった事だ。エイシェル達がたまたま通り掛からなければ昨日の王都東北部同様に甚大な被害が出た事だろう。今まで山に面しておきながら大して対策を取っていなかったツケがまわってくるところであったが、それをエイシェル達が未然に防いでくれたのだ。
アイトネは知らせを受けたにも関わらず、対処に間に合わなかった事を不甲斐なく思う。
しかし、実はエイシェル達が知らせの魔法を放った時にアイトネは迅速に行動していたのだ。昨日の事もあったため事務作業を全てジレトニーに押し付けることで現場に駆けつけることが出来た。
ジレトニーは文句を言っていたが、仕事を押しつけてジレトニーを置いてきたのは彼を心配してのことである。持ち直したとはいえ一度は心が折れてしまったことをアイトネは聞いていた。流石に2日連続で絶望的な現場に居合わせたら今度こそ再起不能となるかもしれない。そう思い置いてきたのだ。
実際、アイトネはそうそう絶望的な場面には遭遇しないだろうとたかを括っていたが、目の前の光景は十分絶望的な量であった為、ジレトニーを置いてきて良かったと改めて思った。
アイトネ本人は間に合わなかった思いが強いが実は最善の行動を取れており、それでも間に合わないのは仕方のない事だった。
頭を抱えた理由のふたつ目は目の前の魔物の山は到底いち冒険者パーティで対処できるものではなかったからだ。そこらに凍っている魔物1体見ただけでもBランク冒険者でなければ対処出来ないであろう魔物に見える。それをこの量の魔物をたった4人で討伐したのだとアイトネは考えた。そんな事が出来てしまう目の前の4人にアイトネはある意味で呆れ、そしてとても感謝している。
実際はディアも参戦していたり、エイシェル、フラム、フルームだけでも十分対処出来たのだが、そんな事は夢にも思わないだろう。
サフもディアにさぞ怖かっただろうと慰めるような事を言っているが、そんな気遣いは無用である。
「昨日のドラゴン討伐のみならず、連日助けていただきありがとうございます。今回の報酬は後ほどお伝えします」
「報酬って……たまたま出会した魔物を討伐しただけですけど貰えるんですか?」
「そんな事を言ったら昨日のドラゴン討伐に参加した皆さんタダ働きになってしまいますよ?」
「そういえばそうね……」
「はい。なのでキチンと貰ってくださいね」
「がっはっは。ギルドにある金のほとんどがお前達の懐に入りそうな勢いだな」
アリスの質問に当然のように返すアイトネ。サフは笑っていたがあながち冗談ではない状態になっている。サフはこの短期間に次々に高額の報奨金を得ているエイシェル達をみていると金銭感覚が狂いそうになっており、ただ笑うことしか出来ずにいた。しかし、流石に笑うだけでは役目が果たせない為、頭をなんとか切り替えて話を再開する。
「で、だ。あれはどうするつもりなんだ?」
サフは顎で魔物の山を指す。
それを見てエイシェル達5人は少し話し合った。
買取を依頼するにも基本買取カウンターまで運ばなければならない。その時点で買取は選択から外れる。もし、エイシェル達が頼めば買取もしてくれるだろう。ただ、ここ数日のことを考えるとギルド職員はみなほとんど休んでいないように思えた。実際にアイトネとサフの眼の下にはクマが出来ている。その為、出張買取の依頼をするのは申し訳なく思えた。
実際、今時点お金に困ってるわけではないのでアイトネやサフへの気遣いが優先される。
話し合った結果を皆を代表してエイシェルが話し始めるのだった。
「流石に全ては処理しきれないので燃やそうと思ってます」
「ん?買取とか言い出すかと思えば、それでいいのか?」
「はい。買取にもギルド職員がここに来て全て査定しないといけないんですよね?数が多くて大変だろうし、ここ数日みなさん休んでないと思うので、余計な仕事を増やしたくないなと」
エイシェルの話を聞いたアイトネとサフは思わず涙ぐんでしまい目頭を押さえたり目を擦る。その様子を見る限り、ここ数日本当に休めていないのだとわかった。
しかし、アイトネは姿勢を正すと毅然とした態度で話し始める。
「気を使わせてしまってすみません。ですが、冒険者が活躍したのに対価が払われないのはギルドとして見過ごせません」
「いや、でも討伐の報酬は貰えるから、それで十分な気が……」
「若えもんが遠慮なんてするな。俺たちは俺たちの仕事をするだけだ。……って言っときながら悪いが肉だけは買い取れん。いや、一頭くらいならどうにか出来そうだが、こんなに多いと保管する場所がねえ」
アイトネとサフはギルドの中で責任のある位置にいる。そんな彼らがいち冒険者の言葉に甘えるわけにはいかない。そういった思いで大量の魔物の素材買取を申し出たのだ。
しかし、買取の大半となるであろう肉は保存の都合上買い取ることは難しい。もし全てを買い取ったとしても腐らせてしまうと意味がない。
干し肉など長期に保存できる様にしようとしても加工が必要であり、人手が必要になる。現状、復興が必要な状態で干し肉の加工に割ける人員は限られるため肉は諦めることとなるのだ。
しかし、そんなサフの話を受けて異をとなえる声が上がる。
「お肉……買い取りはいらないので、街のみんなに料理を振る舞うことって出来ないですかね?」
「お、流石アリス。同じこと話そうと思ってたよ」
アリスとフルームである。一度は処理しきれないので諦めてはいたが、捨てる事に抵抗があったのだ。今食べれる状態なのに捨てる事が忍びないのだ!
「街のみんなですか……?料理人に声をかけることは出来るかもですが、料理人への報酬も考えなきゃいけませんし……」
「それならわたし達の報酬から差し引いてもらって構いません!」
「依存なし!」
「ち、ちょっと!?」
アリスが提案しフルームが乗っかる。フラムは突然の提案に困惑するがエイシェルの言葉がトドメをさした。
「そうだな……街のみんなにもイノシシ料理を食べてもらいたい。お願い出来ますか?」
「エイシェルまで!?」
3対1となり分が悪いフラム。
「そうね。せっかくのお肉なんだし勿体無いわね」
「ディアまで!?……あー!もう!わかったわよ!依頼発注でもなんでもすればいいじゃない!」
思わぬ伏兵に吹っ切れるフラム。自分が間違っている様な錯覚を覚えながらも4人の意見を認めるのだった。
「えっと……分かりました。依頼として料理人に声をかけてまわります」
「街全体にとなると結構な人数必要だが、大丈夫か?」
「大丈夫です!もし足りなかったら不足分払うんで!」
「そうだよ!お肉を守りたい!」
「……もう、いいわ……」
アリスとフルームの勢いに押されて緊急の依頼が発注されるのであった。
「あなた生後1日でしょ……でも気持ちは分かるわ!」
ディアとアリスが恍惚とした表情をしながらエイシェルの作ったイノシシ料理を食べていた。
メニューは様々で、単純に塩を振って焼いたものから、肉が柔らかくなるように煮込んだものもある。エイシェルは手持ちの限られた調味料でも出来る料理を考えて4人に振る舞っていた。
流石にイノシシの解体現場で食事をするわけにはいかない為、料理を食べている4人は少し離れたところにいる。
「いつも思うけどよくこんな美味しく作れるわね」
「これならいくらでも食べれるよ」
ディアとアリスだけでなくフラムとフルームも満足そうな表情を浮かべエイシェルの料理を食べる。
先程まで魔物が押し寄せていたのが嘘のように和やかである。事実、不安がないと言えば嘘になるが危機が去った今この時くらいは楽しもうとエイシェルは考えていた。そして、そのエイシェルが作った料理を食べた4人にもその想いは伝わった。
食べ進めるうちに食事に感動したのか、張り詰めていた気が抜けたのかわからないが、ディアが涙を流したのも仕方のないことだろう。
「ふぅー……文字通り生き返ったわ。ありがとね、エイシェル」
「お粗末さまでした」
ひと通り料理を作り終えたエイシェルも食事に参加し、5人で料理を平らげる。しかし、解体現場(森の入口付近)には解体してなお余ったイノシシ肉と、氷漬けになった大量のイノシシの魔物の山があった。
「もう食べられないけど、お肉はまだまだいっぱいあるんだよねー」
「凍らせてるからしばらくは保つと思うけど……勿体無いけどあのお肉全部は食べられないかな……」
「あなた達どれだけ食べるつもりなのよ……。そもそもあれを肉と呼ぶか……」
フルームとアリスが残った肉に想いを馳せる。氷漬けになった魔物の山を肉としか言わない2人にフラムは少し心配になるのだった。
「皆さん!」
「あ、アイトネさん!と、サフさんも!」
5人が少し休んでいると坂の下の方から声が聞こえたと思い、声の方を見るとそこにはアイトネとサフがいた。2人は呼吸を乱すことなく坂を登ってきた。
「やっぱりお前達だったか……ん?そこの黒髪の別嬪さんは誰だ?」
「あっ……」
「えっと……」
サフがディアを見つけ質問をする。アリスとエイシェルがなんで説明していいか悩んでいるとディアが自己紹介を始めた。
「初めまして。ディアと申します。4人とは昨日知り合いまして、坂の上にあるオムライスが美味しいお店を知っていると言うので道案内をしてもらっていたんです。西側のお店ならもしかするとやってないかなと思い……」
平然と嘘をつくディア。エイシェルとアリスがディアを見るとディアからは笑顔で「何か?」という表情を返される。
2人は色々聞きたいことはあるがここは黙って従うべきと判断し何も言わなかった。
そんなディアの自己紹介を受けてサフとアイトネも"何事もなく"自己紹介をし返している。
エイシェルとアリスだけでなくフラムとフルームまでそわそわしているがそんな事を気にする事なくアイトネが話し続ける。
「残念ですが昨日のことがあり、すべてのお店は臨時休業中です。ある程度の復興の目処が立ったらまた営業再開すると思いますのでお待ち下さい」
「あら、こちらもお休みなんですね。残念です」
お前は誰だと言わんばかりの視線を向けるアリス。ディアはその視線を知ってか知らずか見事なまでの無視を決める。
そんな事は気付かないアイトネが会話を続ける。
「それはそうと、先程大きな音と眩しい光がこちらからしたので来てみたのですが……ってなんですかあれは!?」
アイトネは視線を公園奥の森に移した瞬間驚きの声を上げる。奥には氷漬けになったイノシシの魔物の山があるのだから驚くのは当然であった。
横にいたサフも言葉を失いただ口を開けたまま固まるのだった。
「…………魔物の群れが突然現れてこちらに向かってきた、と。そして異常を知らせる為に上空で爆発を起こし、待っている間に足止めをしていた……が待っている間に殲滅した。という事ですね」
アイトネはふたつの意味で頭を抱えながら今聞いた話を要約した。
ひとつ目はギルドとして王都を守る義務があるにも関わらず、魔物の襲撃に気付けなかった事だ。エイシェル達がたまたま通り掛からなければ昨日の王都東北部同様に甚大な被害が出た事だろう。今まで山に面しておきながら大して対策を取っていなかったツケがまわってくるところであったが、それをエイシェル達が未然に防いでくれたのだ。
アイトネは知らせを受けたにも関わらず、対処に間に合わなかった事を不甲斐なく思う。
しかし、実はエイシェル達が知らせの魔法を放った時にアイトネは迅速に行動していたのだ。昨日の事もあったため事務作業を全てジレトニーに押し付けることで現場に駆けつけることが出来た。
ジレトニーは文句を言っていたが、仕事を押しつけてジレトニーを置いてきたのは彼を心配してのことである。持ち直したとはいえ一度は心が折れてしまったことをアイトネは聞いていた。流石に2日連続で絶望的な現場に居合わせたら今度こそ再起不能となるかもしれない。そう思い置いてきたのだ。
実際、アイトネはそうそう絶望的な場面には遭遇しないだろうとたかを括っていたが、目の前の光景は十分絶望的な量であった為、ジレトニーを置いてきて良かったと改めて思った。
アイトネ本人は間に合わなかった思いが強いが実は最善の行動を取れており、それでも間に合わないのは仕方のない事だった。
頭を抱えた理由のふたつ目は目の前の魔物の山は到底いち冒険者パーティで対処できるものではなかったからだ。そこらに凍っている魔物1体見ただけでもBランク冒険者でなければ対処出来ないであろう魔物に見える。それをこの量の魔物をたった4人で討伐したのだとアイトネは考えた。そんな事が出来てしまう目の前の4人にアイトネはある意味で呆れ、そしてとても感謝している。
実際はディアも参戦していたり、エイシェル、フラム、フルームだけでも十分対処出来たのだが、そんな事は夢にも思わないだろう。
サフもディアにさぞ怖かっただろうと慰めるような事を言っているが、そんな気遣いは無用である。
「昨日のドラゴン討伐のみならず、連日助けていただきありがとうございます。今回の報酬は後ほどお伝えします」
「報酬って……たまたま出会した魔物を討伐しただけですけど貰えるんですか?」
「そんな事を言ったら昨日のドラゴン討伐に参加した皆さんタダ働きになってしまいますよ?」
「そういえばそうね……」
「はい。なのでキチンと貰ってくださいね」
「がっはっは。ギルドにある金のほとんどがお前達の懐に入りそうな勢いだな」
アリスの質問に当然のように返すアイトネ。サフは笑っていたがあながち冗談ではない状態になっている。サフはこの短期間に次々に高額の報奨金を得ているエイシェル達をみていると金銭感覚が狂いそうになっており、ただ笑うことしか出来ずにいた。しかし、流石に笑うだけでは役目が果たせない為、頭をなんとか切り替えて話を再開する。
「で、だ。あれはどうするつもりなんだ?」
サフは顎で魔物の山を指す。
それを見てエイシェル達5人は少し話し合った。
買取を依頼するにも基本買取カウンターまで運ばなければならない。その時点で買取は選択から外れる。もし、エイシェル達が頼めば買取もしてくれるだろう。ただ、ここ数日のことを考えるとギルド職員はみなほとんど休んでいないように思えた。実際にアイトネとサフの眼の下にはクマが出来ている。その為、出張買取の依頼をするのは申し訳なく思えた。
実際、今時点お金に困ってるわけではないのでアイトネやサフへの気遣いが優先される。
話し合った結果を皆を代表してエイシェルが話し始めるのだった。
「流石に全ては処理しきれないので燃やそうと思ってます」
「ん?買取とか言い出すかと思えば、それでいいのか?」
「はい。買取にもギルド職員がここに来て全て査定しないといけないんですよね?数が多くて大変だろうし、ここ数日みなさん休んでないと思うので、余計な仕事を増やしたくないなと」
エイシェルの話を聞いたアイトネとサフは思わず涙ぐんでしまい目頭を押さえたり目を擦る。その様子を見る限り、ここ数日本当に休めていないのだとわかった。
しかし、アイトネは姿勢を正すと毅然とした態度で話し始める。
「気を使わせてしまってすみません。ですが、冒険者が活躍したのに対価が払われないのはギルドとして見過ごせません」
「いや、でも討伐の報酬は貰えるから、それで十分な気が……」
「若えもんが遠慮なんてするな。俺たちは俺たちの仕事をするだけだ。……って言っときながら悪いが肉だけは買い取れん。いや、一頭くらいならどうにか出来そうだが、こんなに多いと保管する場所がねえ」
アイトネとサフはギルドの中で責任のある位置にいる。そんな彼らがいち冒険者の言葉に甘えるわけにはいかない。そういった思いで大量の魔物の素材買取を申し出たのだ。
しかし、買取の大半となるであろう肉は保存の都合上買い取ることは難しい。もし全てを買い取ったとしても腐らせてしまうと意味がない。
干し肉など長期に保存できる様にしようとしても加工が必要であり、人手が必要になる。現状、復興が必要な状態で干し肉の加工に割ける人員は限られるため肉は諦めることとなるのだ。
しかし、そんなサフの話を受けて異をとなえる声が上がる。
「お肉……買い取りはいらないので、街のみんなに料理を振る舞うことって出来ないですかね?」
「お、流石アリス。同じこと話そうと思ってたよ」
アリスとフルームである。一度は処理しきれないので諦めてはいたが、捨てる事に抵抗があったのだ。今食べれる状態なのに捨てる事が忍びないのだ!
「街のみんなですか……?料理人に声をかけることは出来るかもですが、料理人への報酬も考えなきゃいけませんし……」
「それならわたし達の報酬から差し引いてもらって構いません!」
「依存なし!」
「ち、ちょっと!?」
アリスが提案しフルームが乗っかる。フラムは突然の提案に困惑するがエイシェルの言葉がトドメをさした。
「そうだな……街のみんなにもイノシシ料理を食べてもらいたい。お願い出来ますか?」
「エイシェルまで!?」
3対1となり分が悪いフラム。
「そうね。せっかくのお肉なんだし勿体無いわね」
「ディアまで!?……あー!もう!わかったわよ!依頼発注でもなんでもすればいいじゃない!」
思わぬ伏兵に吹っ切れるフラム。自分が間違っている様な錯覚を覚えながらも4人の意見を認めるのだった。
「えっと……分かりました。依頼として料理人に声をかけてまわります」
「街全体にとなると結構な人数必要だが、大丈夫か?」
「大丈夫です!もし足りなかったら不足分払うんで!」
「そうだよ!お肉を守りたい!」
「……もう、いいわ……」
アリスとフルームの勢いに押されて緊急の依頼が発注されるのであった。
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