ジェミニ 〜魂の契約者達〜

えいりす

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第五章 アンダーグラウンド

172.憶測

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 ディアが復讐心に燃えている中、ステラがふとしたことに気付いた。

「そういえば、クラーケンの時は生命力が半分くらい還元されたと思うんだけど、それはなんで?ルミナレクイエム使ったんだよね?」
「……あいつが中途半端だったからよ」
「あいつ?」
「勇者よ勇者!あいつ私と生命力繋がってるくせに手加減するから」

 事実、魔力変換効率が生前と異なるためディアのフォローがないと危ない状況であったが、勇者の割に使った魔力が控えめであった。最低限ディアの知っている1000年前の勇者ならもっと魔力を注ぎ込めるはずだった。
 それを聞いたステラは顎に手を当てて考えながら答えた。

「それは……お母さんを気遣ったからじゃないかな?」
「はぁ?気遣う?あいつが?」
「詳しくはわからないけど、そうとしか思えないもん。……聞いたところ勇者はお母さんに心を許してたって話だし……お母さんが完全に消滅しないように考えたんだと思う」
「……あの馬鹿」

 ディアはそう言いながら悔しそうな表情を浮かべる。確かに下手をするとディアと勇者の魂ごと消滅する恐れがあった。それだけ危険な魔法なのだ。
 気遣われたと思うと無性にむしゃくしゃした魔王は話題を変えるため仕切り直した。

「そういえば、よく祖龍の情報なんて手に入ったわね。私の時なんて祖龍の"そ"の字も情報なかったのに」
「あの筋肉だるまが教えてきたんだよ。守護者として知っておくべきだって。……今まで隠してロクなことにならなかったから敢えて教えるって言ってた」

 ステラの説明にピンとくるディア。確か祖龍は何度も勇者と魔王が2人がかりで討伐に来たと言っていた。
 きっとそれは神からしたら想定外の出来事だったのだろう。星を維持する為に何をするか、それを考えた時に一番生命力を消費している祖龍にたどり着くのは時間の問題である。ディアの時はルミナドレインの魔法が現れた為そちらの解析を優先したのだ。だからこそ祖龍との接点を持たずにいられた。
 そこでディアもふと気になったことがありステラへと質問する。

「……そういえば、ルミナドレインの元凶についてただ指をくわえて見てたわけじゃないんでしょ?当たりはついてないの?」

 それは魔王が死ぬまで探していたものである。魔法をなくす方法と並行して根本原因を探していた。しかし、志半ばで倒れてしまったのだ。後継者であるステラが調べていないはずがなかった。

「……確かに、ある程度目処はついてる。だけど、証拠が出てこないんだ。怪しさであれば1000年前から怪しいんだけど……まだ憶測の域を出ない」
「…………インサニア王ね」
「…………そう。分かってたんだね……」

 もとより怪しかった。魔王が死んだのは勇者が死んでジェミニの魔法の効果で道連れになった為である。かなりの実力者である勇者を殺すとしたら闇討ちしかない。
 相当なお人よしだった勇者のことだ。魔王との和平について馬鹿正直に話したのだろう。それがインサニア王にとっては都合が悪く、暗殺されたのだろう。


「それなら今回の出来事も納得出来るわ。不自然すぎるもの。クラーケンを討伐し、ドラゴンをも屠った英雄を反逆者扱いでしょ?まともな思考の人ならあり得ないわ」

 ディアの言葉はもっともである。太古の災害であるクラーケンを討伐し、王都を襲ったドラゴンをも討伐した。ましてや被害者を蘇生までして巷では天使様とまで言われている相手をどうして反逆者にしようと思うか。どう考えても不自然極まりない。

「そして、ルミナドレインの魔法を使って生き続けている……ヒト族にも関わらず1000年も前から」
「そこは証拠がないとなんともいえないわね」
「ただ、気になるのが今まで用意周到にやってきたように見えたけど、今回があまりにも場当たり的だったなと思って……もしかすると誰かサポートしてる人がいたんじゃないかと思ってる。そして、何かがあって焦ってことを仕損じた」
「……この1000年間尻尾も捉えられなかったんでしょ?確かに何かありそうね……」

 ステラとディアは思い思いに憶測を述べるが決定打はなかった。これ以上話しても仕方がないと考えたディアは自室へ戻ろうとする。
 しかし、ディアはステラに袖を摘まれて動きが止まる。ステラはずっと俯いたまま顔色が窺えなかった。

「……どうしたの?アモル」

 ディアが不思議に思い尋ねると

「……今日一緒に寝ていい?」

 そんな答えが返ってきた。ちょっと恥ずかしそうなステラの顔がチラッと見える。

「………………仕方ないわね」

 今まで1000年もの間、親のぬくもりを奪われ、魔族を率いる重圧に耐えていたステラ。今までずっと気を張っていたのだろう。守護者に選ばれた時点でその身体の時は止まる。ステラは1000年生きてはいるが見た目は子どもそのものである。だからこそ、今だけは1000年前のように年相応に甘えたかったのだ。そして、きっと今日くらいは許されるだろう。孤独に戦ってきたご褒美と思えば。








 ディアとステラがそんなやりとりをしている中、部屋へと戻ったアリスは悶絶していた。

「あああああああああああああああああああ!」

(恥ずかしすぎて消えたい……エイシェルもなに真面目な顔であんなこと言ってるのよ!!わたしまで言っちゃったじゃない!!…………でも………へへ……好きな人かぁ……そうかぁ……へへへ……)

 アリスは早速情緒不安定になっていた。ベッドの上で転がっていたと思ったら気づけばニヤニヤしている。色々あったがエイシェルとアリスはお互いの気持ちを確かめ合ったのだ。相思相愛。恥ずかしい反面、とても嬉しくも感じており、いわば面倒くさい状態となっている。

(えへへ……わたしってエイシェルの彼女さんなんだよね!…………はて、彼女さんって何をすればいいんだろう)

 冷静に考え始めるアリス。普通に買い物や美味しい食べ物を食べに行くのであればいつも通りであり、ただの仲間でも出来る。いざ彼氏彼女になったからといって特別何をすればいいのかと疑問に思ったのだ。
 恋人同士になったのだから関係はより親密になるだろう。しかし、どうやって?少し考えたアリスはふとある考えに思い至り、また顔が真っ赤になる。

「んにゃあああああああああああああああああ!」

 再び叫び出すアリス。ベッドから転げ落ちそうになる程ゴロンゴロンベッドの上を転がり往復していた。

(や、だって、恋人の先って夫婦よね!夫婦ってことは家庭があって、家庭ってことは子供がいて…………うわあああああああああああああ!!!!!)

「うわあああああああああああああ!!!!!」

 心の声がそのまま出てくるほどには頭が真っ白になるのだった。





 同じ頃、エイシェルもベッドにもたれ掛かっていた。

「あー……恥ずかしい……。あんなみんなの前で告白まがいなこと言うなんて……」

 アリスを守りたい一心でがむしゃらに話してしまったが為周りが見えていなかった。アリスが自分を犠牲にしようと言い出した為、説得しようとした結果があれである。

(でも、まぁ何も問題無いみたいだし良かったのかな。……しかし、目的は分かったけどどうやって魔法を消すか、だよな。……きっと先代の勇者と魔王は具体的にどうやるのかについても知っているに違いない。魔王は答えられないだろうから……勇者に聞くしかないな。)

 ステラは魔法をなくす方法について見当も付かないと言っていた。だから実際に魔法を無くそうとしていた本人達に聞くのが確実だろう。
 そうなると転魂箱の完成を待つことになる。最初は材料がないようなことを言っていた為不安であったが、今はステラを信じるしかない。

(今は、信じて待つだけだな)

 エイシェルはそう考え、夕食まで休もうとベッドで横になっていると徐々に意識が遠ざかるのだった。
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