ジェミニ 〜魂の契約者達〜

えいりす

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第五章 アンダーグラウンド

171.真実3

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「ふー……」

 5人の姿が見えなくなったステラは大きなため息を吐いた。

(思ったより大変なことになってるな……祖龍接触、神の介入……あぁでも転魂箱もどうにかしないと……急にいろいろ起きすぎだよ……)

「なに疲れきった顔してるのよ」
「ぬぁ!?」

 物思いに耽っていると後ろから突然声をかけられ変な声を出すステラ。そこにはディアが立っていた。

「なんで……」
「なんでって……さっきはもっと話したそうにしてたじゃないの。先に行ってもらったのよ」

 先程エイシェル達と一緒に出て行ったはずのディアがわざわざ戻ってきたようだ。ステラとしても個別に話せるのは嬉しいことだった。

「それで?なにが聞きたい?」
「……そうだね。まずは、ディアって1000年前の魔王本人ってことでいいの?」
「その質問には答えられないわね」
「……ここまできて隠す必要無くない?」
「いや、隠すとかじゃ無くて答えられないのよ」
「それってどういう……あぁ!」

 ディアが困った顔をしながら事実を述べるとステラも気付いたようだ。きっとアリスが質問したのだろう。自分のカバンに入った転魂箱を見てもどかしく感じる。そういうものとして作ったがこういう事態になると障害でしかなかった。……そもそもこういった事態は想定していないわけだが。

「うーん、まぁほぼ確定だよね……うん、そうとして話すよ。そうなると、本当に1000年前の人そのものなの?」
「1000年前の人か?って事ね……魂的にはそう。いろいろあの娘に引っ張られちゃってる部分はあるけど1000年前の記憶もあるわね……。ただ、使命とかそういうしがらみからはもう解放されてるわ」
「!?……やっぱり……。復讐とか考えないの?だってあなたは……」
「ディアよ」
「えっ?」

 ふと出た「あなた」という言葉にディアが反応する。突然訂正され驚くステラ。それに構わずディアは言葉を続ける。

「今の私はディア。他の何者でもないあの4人の仲間よ」
「そう……だよね……」

 ディアの言葉を聞いたステラは酷く寂しそうであった。近づこうとした瞬間拒絶されたかのような感覚に陥る。
 だが、ディアはあらかじめ言う気であったのが言葉を続けた。

「えぇ。でもそれは普段の私。……ステラが許してくれるのなら……2人きりの時くらいは昔の関係に戻りたいわ……ねぇ、"アモル"」
「!!?……っぱり……なんだ。……さん……お母さんなんだよね!……お母さん!!」

 それは遠い過去に捨てた名前であった。分かっては今もののいまいち確信が得られなかった為に勇気が出せなかった。本来の名前を呼ばれて思わずディアの胸に飛び込む。今までの重圧もあったからだろうかディアの言葉を聞き一気にタガが外れたのか、見た目の年相応に泣きじゃくるステラがいた。

「よく頑張ったわね」

 ディアも嬉しいのかステラの頭を撫でつつ涙を流す。1000年前の突然の別れから時間がかかったがやっと親子としての関係が築けた瞬間だった。








 ひとしきり泣きじゃくった後にステラが続ける。

「お母さん……ごめん。試すような真似して……」
「仕方ないわよ。使命の縛りから解放されたら自由になるから……実際世界を滅ぼそうかと思ったわよ。……ハクと勇者に止められたけどね」
「先生に?」

 ハクと聞き顔を上げるステラであったが、すぐその表情は曇るのであった。

「でも、先生を殺しちゃったんでしょ?」
「……それに関しては申し訳ないとしか言えないわね。一応救済措置はしておいたけど」
「救済措置……?……まさか!?」

 ステラはディアの言葉に驚きを隠せない。恐らく禁忌の魔法を使ったのだろう。そう思いついたからだ。そしてその予想は当たっている。
 ディアはバツが悪そうに白状するのだった。

「いや、ちょっと悪いことしちゃったなって、せめて次の生は謳歌してほしいなと思って……てへっ⭐︎」
「てへっ⭐︎じゃないよ!あれやると魂をそのまま引き継ぐから星に生命力還元されないんだよ!?先生の生命力結構あるはずだから還元するべきなのに……!」
「だから悪かったわよ……その考えも守護者によるものだと思うけどね」
「……そこは否定しないよ」

 ディアは忌々しそうに話す。そしてステラも否定はしないのだった。

「神に守護者として選ばれると星の維持への感情が最優先される。だから私怨の感情は起こらなくなる」
「……だから心配だったんだ。お母さんが使命から解放されて、星を滅ぼそうとしないかって……。お母さんと戦いたくないもん……」
「そうね……」

 切実な願いであった。星の守護者は何よりも星を守ることが優先される。だからこそ対立した際には戦うしかないのだ。それを思うと命をかけて守ってくれたハクには頭が上がらない。

「……あと、言いにくいんだけどプルートが消滅したわ」
「……うん。知ってる。プルートおじさんの痕跡が全くないもん……」

 ディアが亡くなってから親代わりと言ってもいい程面倒を見てもらった。それが"この星から消えてしまった"この事実は由々しき事態であった。

「ルミナレクイエム……。完全なルミナレクイエムが使われたってことだよね……?」
「普通はあり得ないんだけどね。……ジェミニのせいでそれが出来ちゃったみたいね……」

 ルミナレクイエム。スコーピオの魔法で制限が解除される魔法。レクイエム。それは鎮魂歌であり魂を鎮めるものである。しかし、それはこの星からの死を意味する。
 完全なルミナレクイエムを受けたものはこの星での輪廻転生が出来ない。完全にこの星の摂理から外れてしまうのだ。それは通常起こる星への生命力還元が行われないことを意味する。
 その為、無闇に使うものではないのだ。だからこそ魔法解除の為のスコーピオがある。むやみに使えないように2段階の安全策が取られていた。
 もっとも、完全なルミナレクイエムは普通の人の何人分もの魔力を使わないと成立しない。普通はあり得ないのだ。
 だからこそ神であるオージンですら驚いた。完璧なルミナレクイエムなど本来使えるはずがないのだから……

 ディアは事実を伝えたことで気になっていたことを聞く。

「エイシェルを恨んでる?」

 自分のせいとは言え、親の自分が死に、親代わりとなったプルートをエイシェルがその手で屠ったのだ。普通は恨んでも仕方がないところである。しかし、ステラは首を横に振り、ただ「仕方がない」と言った。
 話によるとプルートは突然「マオウサマガフッカツスル」と言い出し「キケンナメハハイジョスル」と言ってステラの前から姿を消していた。

「きっと何かきっかけがあったんだと思う。普段冷静なプルートおじさんがいきなりいなくなるなんておかしいもん。……その結果討伐されたんなら、それは仕方の無いことだよ」

 ディアは少し悲しくなり、同時に腹立たしくもあった。ステラのその感情は守護者としての感情に違いない。親代わりのプルートがいなくなって悲しくないわけがなかった。だが、それでも私的な感情は押さえつけられる。守護者としてのステラには復讐したいなんて感情は起こり得ないのだった。

(胸糞悪いわね……私の時もそうだったけど人を世界の歯車みたいに……今度会ったら一発ぶん殴ってやろうかしら……。いや、一発なんて手ぬるいわね。私の娘に何してくれてるのか。絶対に許さないんだから……!)

 ディアは密かに復讐心に燃えてるのだった。
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