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10 ~置いてけぼりのふたり~
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「うわー!こいつら早速イチャイチャ登校してるー!」
教室に入った途端に響いた梨亜の怒号で来夢とまりあは現実に帰還した。
小走りで近寄り、綺麗に整列した二人を交互に指差した後不自然に置かれた二人の距離を見て溜息をつく。
「え、なんで微妙に離れてるの…?」
二人の間は人ひとり入れるか入れないかの絶妙な距離があった。来夢もまりあも両手は体側で姿勢良く、綺麗に並んでいる。側から見ればこの二人が先日ドラマチック風に付き合ったとは到底思えないだろう。人によっては何かの罰ゲームかとも思われる程、このカップルは固い表情で前だけを見ている。
こう着状態をほんの数秒挟む。すると二人の間をスッと棒立ちの男女より一回り小柄な影が抜けていった。そして梨亜の横で止まり踵を返す。
「これどういう状態?」
萠華が怪訝な顔で問いかける。梨亜もどうしたもんかという表情で首を傾げる。今しがた覚醒した男女は道中のことを必死に思い出そうとしていた。
最後の記憶はシャンプーの香りだった。待ち合わせの改札で彼女を見つけ、目があった瞬間に昨日の出来事が脳内でフラッシュバックした。
挨拶は…、交わしたと思う。彼女の頬は少し赤らんでいた気がする。さほど混んでいない電車の中で外を眺めている視界の端で彼女の横顔を見ていたはず。そしてそこでも目が合ったかもしれない。だがこれ以上は何も思い出せない。まさに一瞬の出来事のように教室までたどり着いていた。きっともっとあったはず…、えと、えと…。
ドスン。
「うえっ!?」おもわず漏れる間抜けな声。
「聞いてる?」萠華の手刀が来夢の脳天に直撃した。
「効いてる…。結構なダメージ…」
「そういうことじゃない!」
再び振り上げた右手に反応して両手で防御姿勢をとる。二撃目は振り落とされなかったが代わりに大きなため息を吐かれた。そのタイミングでチャイムが鳴り三三五々席に戻った。
その後の授業でも来夢たちの脳裏では今朝の記憶をノックしている。しかしその扉はうんともすんとも言わない。そうこうしているうちにその日最後のチャイムが鳴った。
放課後、来夢が机の物を鞄に詰めていると目の前に誰かが来た。顔を上げると梨亜と萠華がいた。今までなら考えられないことだったが、昨日から少しずつクラスメイト達との距離も縮まってきて昼休みにも寺町卓人、唐島一樹と会話した。と言っても卓人からは普段彼が忍ばせている菓子を貰っ たり、一樹からは昨日あったことを改めて聞かれた程度だ。そして空が茜色に染まり始めた頃、クラスの女帝達が来夢を見下ろす。梨亜はやれやれといった表情だが萠華の方は何故か怒っているように見える。
「な、何かな?」おっかなびっくり問いかける。
すると二人の同時に巨大なため息をつき、ダンッと机に手をつき一瞥くれる。そして隣に座るまりあをキッと見てから一言。
「お前ら何か喋れよ!」
「まりあも何故にあたしらとばっか喋るの?いや別に良いんだけどさ」
そう。この二人、あれから一言も交わしていない。横目でチラチラ姿を窺っていただけでこの時間になってしまった。教室移動の際も来夢は男子、まりあは女子のクラスメイトの後ろにつき、お昼も来夢は学食、まりあは持参した弁当を同じく他のクラスメイト達と食べていた。同席した生徒達も頭の片隅で疑問を抱きながらも新しい交友関係を楽しんでいた。
「もしかしてもう別れた?」梨亜が問う。
すると互いを見合い、徐々にその顔を不安に歪ませていく。そのままの顔で梨亜を見て、萠華を見て…。
「好きなんだよね…?お互いに」またも梨亜が答える。その横で愛嬌ある萠華の表情が崩れていく。
果たして二人は同時に首肯し、見つめ合い、頬を赤らめて下を向く。
その直後、梨亜の隣でプチン、と何かが切れたような音がした。チラリと横に目をやると限界まで見開かれた目で見下していた。その表情は黒い女神とは程遠い、まさに黒鬼と言わんばかりの激しさを備えていた。そのまますぅーっと大きく息を吸う。長い付き合いだがここまでの萠華を見たことがない梨亜は少したじろいだが吸い込んだ息はそのままの勢いでただ吐き出された。そして一言。
「よし、お前ら明日デート行け」交互に指差しながら告げ、続けた。
「どうせお前らだけだと、な~~んにもっ!進展しなさそうだから私達も同伴します」
「え、あたしも行くの?」
「そうよ」
「まいっか、面白そうだし」
梨亜の了解を得て具体的な内容を決めようとすると更に後ろから声が飛んできた。
「遊び行くの?じゃあ俺とカズも混ぜてよ」
ルンルンな卓人に引かれ一樹が来た。あくまで主役は来夢とまりあということを言い聞かせて、結果的にトリプルデートのようなものが出来上がった。渦中の二人がドギマギしている間に残り全ての予定が組まれた。
教室に入った途端に響いた梨亜の怒号で来夢とまりあは現実に帰還した。
小走りで近寄り、綺麗に整列した二人を交互に指差した後不自然に置かれた二人の距離を見て溜息をつく。
「え、なんで微妙に離れてるの…?」
二人の間は人ひとり入れるか入れないかの絶妙な距離があった。来夢もまりあも両手は体側で姿勢良く、綺麗に並んでいる。側から見ればこの二人が先日ドラマチック風に付き合ったとは到底思えないだろう。人によっては何かの罰ゲームかとも思われる程、このカップルは固い表情で前だけを見ている。
こう着状態をほんの数秒挟む。すると二人の間をスッと棒立ちの男女より一回り小柄な影が抜けていった。そして梨亜の横で止まり踵を返す。
「これどういう状態?」
萠華が怪訝な顔で問いかける。梨亜もどうしたもんかという表情で首を傾げる。今しがた覚醒した男女は道中のことを必死に思い出そうとしていた。
最後の記憶はシャンプーの香りだった。待ち合わせの改札で彼女を見つけ、目があった瞬間に昨日の出来事が脳内でフラッシュバックした。
挨拶は…、交わしたと思う。彼女の頬は少し赤らんでいた気がする。さほど混んでいない電車の中で外を眺めている視界の端で彼女の横顔を見ていたはず。そしてそこでも目が合ったかもしれない。だがこれ以上は何も思い出せない。まさに一瞬の出来事のように教室までたどり着いていた。きっともっとあったはず…、えと、えと…。
ドスン。
「うえっ!?」おもわず漏れる間抜けな声。
「聞いてる?」萠華の手刀が来夢の脳天に直撃した。
「効いてる…。結構なダメージ…」
「そういうことじゃない!」
再び振り上げた右手に反応して両手で防御姿勢をとる。二撃目は振り落とされなかったが代わりに大きなため息を吐かれた。そのタイミングでチャイムが鳴り三三五々席に戻った。
その後の授業でも来夢たちの脳裏では今朝の記憶をノックしている。しかしその扉はうんともすんとも言わない。そうこうしているうちにその日最後のチャイムが鳴った。
放課後、来夢が机の物を鞄に詰めていると目の前に誰かが来た。顔を上げると梨亜と萠華がいた。今までなら考えられないことだったが、昨日から少しずつクラスメイト達との距離も縮まってきて昼休みにも寺町卓人、唐島一樹と会話した。と言っても卓人からは普段彼が忍ばせている菓子を貰っ たり、一樹からは昨日あったことを改めて聞かれた程度だ。そして空が茜色に染まり始めた頃、クラスの女帝達が来夢を見下ろす。梨亜はやれやれといった表情だが萠華の方は何故か怒っているように見える。
「な、何かな?」おっかなびっくり問いかける。
すると二人の同時に巨大なため息をつき、ダンッと机に手をつき一瞥くれる。そして隣に座るまりあをキッと見てから一言。
「お前ら何か喋れよ!」
「まりあも何故にあたしらとばっか喋るの?いや別に良いんだけどさ」
そう。この二人、あれから一言も交わしていない。横目でチラチラ姿を窺っていただけでこの時間になってしまった。教室移動の際も来夢は男子、まりあは女子のクラスメイトの後ろにつき、お昼も来夢は学食、まりあは持参した弁当を同じく他のクラスメイト達と食べていた。同席した生徒達も頭の片隅で疑問を抱きながらも新しい交友関係を楽しんでいた。
「もしかしてもう別れた?」梨亜が問う。
すると互いを見合い、徐々にその顔を不安に歪ませていく。そのままの顔で梨亜を見て、萠華を見て…。
「好きなんだよね…?お互いに」またも梨亜が答える。その横で愛嬌ある萠華の表情が崩れていく。
果たして二人は同時に首肯し、見つめ合い、頬を赤らめて下を向く。
その直後、梨亜の隣でプチン、と何かが切れたような音がした。チラリと横に目をやると限界まで見開かれた目で見下していた。その表情は黒い女神とは程遠い、まさに黒鬼と言わんばかりの激しさを備えていた。そのまますぅーっと大きく息を吸う。長い付き合いだがここまでの萠華を見たことがない梨亜は少したじろいだが吸い込んだ息はそのままの勢いでただ吐き出された。そして一言。
「よし、お前ら明日デート行け」交互に指差しながら告げ、続けた。
「どうせお前らだけだと、な~~んにもっ!進展しなさそうだから私達も同伴します」
「え、あたしも行くの?」
「そうよ」
「まいっか、面白そうだし」
梨亜の了解を得て具体的な内容を決めようとすると更に後ろから声が飛んできた。
「遊び行くの?じゃあ俺とカズも混ぜてよ」
ルンルンな卓人に引かれ一樹が来た。あくまで主役は来夢とまりあということを言い聞かせて、結果的にトリプルデートのようなものが出来上がった。渦中の二人がドギマギしている間に残り全ての予定が組まれた。
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