虚ろな光と揺るがぬ輝き

新宮シロ

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26 ~欲望渦巻くダークネス~

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 ここに日の光は入らない。あるのは怪しい光を放つ闇の霧。
 触れることすら許されぬ黒紫色の液体がドクドクと流れている。それに橋をかけるように灰色の固体が線を描く。生き物が動き回るにはその上を行くしかない。たとえここて生まれ育ったとしてもその液体は全てを飲み込む。もちろん、命すらも。
 巨大なクレーターのように下へ下へ深く伸びているこの世界には灰色の橋が螺旋状に続いている。その最深部へ潜っていくと巨大な竜のような形をした骨が現れる。それを見てはじめて今までの螺旋がこの竜の尻尾であったことがわかる。
 その竜骨にはそれぞれ集落が出来上がっている。足元が低レベルの生物が潜み、頭部にはこの世界の王が住んでいる。
 深淵の王、デュー。竜の骸の姿をした彼は玉座に腰掛け、深淵の沼から生み出した亜生物体、その中でもトップの力を持つ3体を見下ろしている。
「ドレイミーの再生の進捗は?」
 デューの発する重低音がその場を埋め尽くす。跪く幹部の一つ、彼と同じく竜の姿をした者が口を開いた。
「まもなく完了致します」
 淀みなく報告をすませるとデューは顎を上げ息を吐いた。
 すると左端にいた男が感心したように頷いた。
「ラシッド。カッコいい。おかげでドレイミー、まだ死なない。ミーファもそう思うだろ?」
 その見た目に負けない太めの声でゆっくりと、しかしどこか不器用に告げたのは象のような巨体にギラリと光る牙を携えた亜生物、ドラッソ。
「あぁ、そうね。あの馬鹿虎、見てて愉快だものね」
 クククと甲高い微笑を響かせながら背中の羽根で口元を隠している。この中で唯一女型として生まれ、鷹のような太い羽根で抜群の機動力を誇る。
 羽根をしまうと笑みは失せ、大きな瞳を細め艶のある声で続けた。
「でも、ドレイミーは単純馬鹿だけど実力は折り紙つき。それをあそこまでやるなんて…」
「ラシッド。ドレイミーの近くに敵の影はあったか?」デューが問いかける。
「はい。ただ二人とも死んでいたのでドレイミーの救助を優先しました」
 そうか。とだけいい。デューは右手を出した。
「キャトラムザジェイル」
 その手に現れたのはランタンのようなものだった。中には小さな黒い光がゆらゆらと揺れている。次の解放はまだ先。それまでにドレイミーを完全回復させ、成果を聞き、次の行動を考えねば。
「リソルト」
 ランタンを消し竜骨の眼窩から闇色の空を見る。この暗闇の世界の向こうに必ずそれはある。揺るがぬ輝き。長年の野望をいつか叶えてみせる。この空っぽの胸に何度目か忘れるほど繰り返された言葉を再度言い聞かせた。
 まだその時ではない。しかしその時は着実に近づいている。
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