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第七守 英雄出発。
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襲撃から2日後。
トグローフ村は以前のような賑わいを見せていた。
そんな賑わいを見せているトグローフ村をスキップをし、鼻歌を歌いながらパトロールする万の姿があった。
「あっ!シュウエイさん!これ!うちの畑で育ったりんご!持って帰ってサーリセルカちゃんたちと一緒にどうぞ!」
と、一人の老婆が万に木製ボウルに溢れる程入ったりんごを渡してきた。
「クーケッリさん!うわ!こんなにいいんですか!?」
「えいさえいさ!昨日実ったばっかりでうまい思うぜよ!それじゃあパトロール頑張ってね!」
その言葉に万は「ありがとうございます!」と敬礼し、またスキップをし始めた。
「おー!シュウエイ!これからイノシシ狩りに行くがやけんどおんしも行くかー?」
と、今度はどこにでもいそうな顔立ちをした青年三人組の一人に話しかけられた。
「おっ!狩り好き三人組!!すまねぇ、今日は用事があっていけねぇや!代わりにダイノに行かせるよ!」
「あぁ、わかった!もしダイノに会うたらわし達北の森におるって伝えちょいてくれ!」
と言うと、三人組は元気よく門へと向かって走っていった。
「いや~元気でよろしい!」
万はそう言うと、感心するようにウンウンと首を立てに振った。
「おーい!シュウエイー!」
すると前方から万を呼ぶ男の声がした。
「ん?あれ?コタティエさん?王都に出かけてたんじゃ?」
「あぁ、そうなんやけんど肝心の通行手形を忘れちまってねや。わしの親父どこに行ったか知らん?家におらんでさ~」
コタティエ。このトグローフ村の行商人。コタティエの父は通行手形と呼ばれる王国や王都などに行く際に用いるチケットのようなもの。
その通行手形をこの村で唯一コタティエの父のみが発行しており、休日などはコタティエの家は賑わっている。
「あ~。ラーニラさんなら郵便局に向っていくのをさっき見ましたよ。」
「ほんまか!ほんなら良かった!手形発行しちゅー最中やったらわしの発行の時間後回しにされちまうきに~ありがとうねや!」
と、万に手を振り走って郵便局の方へ向っていった。
「どうも~!」
と、万も走るコタティエに手を振った。
「……あの襲撃から2日後。ブラック・ナイト達は襲って来ないし、この村に平和が訪れた……あとは」
万はサーリセルカの家の前に到着した。
「俺があっちの世界に帰れる方法。旅の軌跡の魔力充填ができる大賢者さまさまを探しにいくだけだな!!」
そう言って万は家の扉を開けた。
「たっだいまー!シュウエイちゃんのおかえりでっせ~!」
そう言うと、台所で母親と一緒に料理をしていたサーリセルカが万に気がついた。
「あっ!秀映さん!!」
するとサーリセルカはエプロンをつけたまま万に駆け寄った。
「おかえりなさい!わー!凄いりんご!!クーケッリおばあちゃんのりんご?」
と、万が抱えたりんごが大量に入ったボウルを驚きながら見てそう言った。
「そうだぜ~!採れたていっぱいくれたからよ!アップルパイでも作ろうぜ!」
万がそう言うと、サーリセルカはわーい!と手を上げた。
「あっ……バ、万さんおかえりなさい……」
と、階段から本を持ったダイノが不気味な笑顔で現れた。
「よ~!ダイノ!さっき狩り好き三人組にイノシシ狩りにダイノを行かせるって言っといたから頼むぞ!」
「え?!イ、イノシシ狩りですか?ど、どこの森に?」
「北の森だってさ」
そう言うと、ダイノは「わかりました!」と、机に立てかけてあったモーニングスターを手に取り走って行った。
「おかえりなさい。シュウエイさん。りんごもろうてしまうね。」
と、サーリセルカの母親。エテラリンネが微笑みながら万の持っていたボウルを受け取った。
「ありがとうございます!エテラリンネさん!何か手伝うこととかありますか?」
「今は大丈夫よ。ごとごとしちょって。」
そう言うと、エテラリンネは自分の持ち場へ戻っていった。
「いいんですか!では御言葉に甘えて~」
と、万は2階へと上がって行った。
「じゃあ秀映さんご飯できたら呼びに行くね~!」
サーリセルカが階段を登って行く万にそう呼びかけた。
「ほ~い!サーリちゃんよろしくぅ!」
万はサーリセルカに手を振ると一番奥の部屋に入って行った。
「ふ~……少し寝ようかな。」
万はそう言うと、身につけていた装備を外し、下着姿になった。
「よいしょ~!ふい~ベッド気持ち~!このまま寝落ちしちまいsグゴゴ……」
万は寝転がると、すぐに寝息を立て深い眠りについてしまった。
…………………
…………
……
…
「……ん?ここは……」
万はある空間で目を覚ました。
周りは暗く何も無い。万はしばらくあたりを見渡す。
「おっ?あ、あれは……」
万は前方に何か見つけた。
そのなにかに万は近づく。
「……トニーギスの……首?」
何か。それは目に光がなく不服な顔をしたトニーギスの首だった。
「なんでこんなとこに……俺が一昨日土に埋めたはずじゃ」
万がトニーギスに触れようとする。
その時だった。
ボウッッッッッ!!!
「?!」
トニーギスの首は激しく燃え上がり万を包みこんだ。
「なっ?!なんだこれ?!」
万が炎を振りほどく。
そして万は目撃する。
「…………は?」
万の眼の前に広がる光景。
炎がパチパチと音を立てて街を覆っている。
所々に銃声やヘリコプターのような音が聞こえ、地面には瓦礫。そしてよく見えないが、人の死体のようなものが転がっている。それも兵士のように見える。
「な……んで?ここ……台南?」
万の顔は青ざめていた。
そう。彼の故郷。台湾の台南に彼は立っていたのだ。
「秀映!秀映!」
すると、背後から万を呼ぶ声が聞こえてきた。
「ッ……?!金龍先生?」
その声の主。
特殊部隊のような格好に、額から血を流し銃を構えながら走って来る男だった。
「你佇遐出神啥啊!徛彼爿袂行細膩會死喔!!」
(なにボーっと突っ立ってんだ!そんなとこにいたら死ぬぞ!!)
「え……は……?」
万はただ唖然としていた。
死んだはずの先輩が今眼の前にいて、敵陣に突っ込んで行ったのだから当然だ。
「あっ……待って……そっちに行ったら!先生―――」
ドガアアアアアン!!
万が手を伸ばし一歩踏み出した瞬間。
走っていった金龍は大きな爆発に巻き込まれてしまった。
「あぁ……あっ……!ア……せ……先生ッッッッ!!」
万は涙を流し手を伸ばしながら爆発した方へ突っ込んでいった。
「ハア……ハア……せ、先生……」
すると万はまた真っ暗な空間へと飛ばされた。
そして眼の前には後ろを向き立ち尽くしている金龍の姿が。
万は息を切らしながら金龍に近づく。
「せ……先生……な、何してるんですか?一緒に帰りましょ―――」
万が金龍の肩に触れる。
その瞬間、金龍の首がボトッと地面に墜ちる。
「え……アッ……ひゅ……!ぐあッ……!あぁあ……!」
万はその場から二、三歩後ろへ下がる。
万は混乱する。吐き気、めまい、恐怖が押し寄せてくる。
「グ……うっ……い、痛い……」
その時万は自分の右側の顔に痛みを覚えた。
その痛みはどんどん増してゆき、まるで燃えているようだった。
「あぁ!痛い!痛いよ!目が溶けるっ!口が裂けるっ!あぁあ!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいい痛いいい痛いいい痛いいいいい痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」
万は泣きながら右顔を押さえ膝から崩れ落ちる。
「あぁ……!姉御!先生!みんな……みんな……ごめんなさい……グスッ……守れんくて……ご……めんな……さ―――」
………………………
………………
…………
……
…
「……あぁ。ここは……」
万が目を覚ます。
眼の前には木製の天井であろうものが写った。
(夢……か。久々に死体みたからかな……)
「あ……秀映さん……大丈夫?すごい唸っちょったけど……」
万が起き上がろうとすると、サーリセルカが心配そうな顔で万の腕に抱きついていることに気がついた。
「あぁ……サーリちゃん。大丈夫。ちょっと楽しくねぇ夢見てただけさ。」
と、万はサーリセルカに笑顔を向けベッドから起きあがる。
「うーん!よく寝た!サーリちゃんがいるってことはご飯かな?いや~腹減ったぜ~!」
と、万はあくびをしながら一階へと向っていった。
「……秀映さんの素顔……初めて見たかも……」
サーリセルカが万の部屋でただ一人そう呟いた。
「危ねえ~!服とマスク忘れてた~!」
と、万が慌てながら部屋に戻って来た。
「お?サーリちゃん下いかねぇの?ヴァンハセルカさんもダイノも帰って来てるよ!」
「う、うん!じゃあうちら先ご飯食べゆーね!」
と、サーリセルカは足早に一階へと向っていった。
「…………サーリちゃんにこの顔。見られちゃったな~。」
と、万は自分の焼け焦げて茶色になり、目は潰れ、口が大きく裂けた顔をさすっていた。
「は~お腹すいたっ!とっとと着替えてご飯たーべよっと!」
万はそう言うとヘルメットの下につけるいつものマスクを被り、ヴァンハセルカにもらった軽装に着替え一階に向って行った。
---------夕食後-----------
「相変わらず。夜になると星がきれいに見えるな~」
万は夕食後、外に出て夜空を眺めていた。
「ほんまに……行ってしまわれるがかえ?」
すると背後からエテラリンネがやってきた。
「えぇ、ここにいつまでも居ても迷惑でしょうし。それに……俺には守りたい人たちがあっちにいるので。」
万がそう言うとエテラリンネは少し悲しい顔をして
「そうやか……」
と俯いた。
「でもこの世界に居る間はいつか必ずここに帰って来ます!それまで待っててください!」
そう言うと、エテラリンネはパアっと笑顔になり
「い、いつじゃちもんて来てえいきね!村のみんなあも旦那も大歓迎ぞね!」
と、万にずいっと近づく。
「わ、わかりました!帰れるタイミングがあれば帰りますね!!」
「わかったちや!さっ!あいたは早うに出るがやろう?もう夜遅いき、早めに寝とーせ!」
とエテラリンネ満面の笑みで万にそう言った。
「はい!ではおやすみなさい!」
「うん!おやすみなさい!」
万はそのままエテラリンネより早く家の中に入って行った。
-----------翌日------------
トグローフ村の門の前には村の住人全員が集まっていた。
「シュウエイさん気ぃ付けてなあ!」
「何かあったらここにもんてきてえいきねや!」
「サーリセルカちゃんの見守りしっかり頼むがやぞー!」
村のみんながこれから旅に出る万に様々な言葉を送っていた。
「皆さん。短い間でしたけどお世話になりました!また戻ってきます!」
と、万はみんなに向って敬礼をした。
「サーリセルカー!シュウエイの言うことはちゃんとききやー!」
と、群衆の奥からヴァンハセルカがサーリセルカに向って言った。
「はいはいわかっちゅー!きちんと言う事聞くー!」
と、サーリセルカは軽く受け流していた。
「ダイノくんも気ぃ付けてね!顔めちゃくちゃかわいいがやき変な人に狙われんようにね!」
「そうぜよ~!これから先変な魔物や人がいっぱいおるがやき!」
「困ったらうちらを頼ってね!」
ダイノはライガー族の若い女性たちに囲まれていた
「み、みなさんありがとうございます……が、がんばります……」
と、鎧を着込み兜だけ外したダイノが頭を何度も下げていた。
「全く。ダイノは女の子にモテモテでいーなー。結局どの世界でも顔面が物を言うのかよ!ちぇ……」
と、万がダイノに嫉妬していると「おほん!」と咳払いが下から聞こえてきた。
「あっ。村長さん。」
「行ってしまうのやねや。」
相変わらずムスッとした顔で万にそう言った。
「えぇ。今までお世話になりました。」
万は深くお辞儀する。
「帰れるなら帰る言いよったけんど、別に永遠にもんて来いでもよいで。ワシはおらん方が清々するきねや。」
と、村長はそっぽを向いてしまった。
「はあ~あ!相変わらず堅物ジジィやねや~!親父は!」
「な、なんじゃ?!ヴァンハセルカ!」
先程の言葉を聞いたヴァンハセルカが、ニヤニヤとした表情で村長の肩を組んだ。
「落ち込む必要はないぜよ、シュウエイ!このジジィほんまはおんしが離れるががちっくと寂しいがぜよ~!」
「そ、そがなわけないろうがっ!このバカ息子っ!」
と、村長が怒りながらヴァンハセルカの頭を殴る。
「アハハ……そ、それはどうも、ありがとうございます……」
その様子を見て万は苦笑いだった。
「たく……まぁ、村を救うてくれたことにはまっこと感謝しちゅー。ありがとう。シュウエイ。」
「い、いえ!俺は俺のやれることをしただけです!」
と、万は村長に敬礼をした。
「さぁ!行くならとっとと行け!」
そう言うと村長は万達に背中をみせた。
「は、はい!では!みなさん!行ってまいります!」
「みんなあお土産待っちょってねー!」
「せ、精一杯が、頑張り……ます」
そうして
万秀映。
サーリセルカ。
ダイノ・ストクリフ。
この3人の最前線冒険譚。
最前線のブークリエが始まる……
トグローフ村は以前のような賑わいを見せていた。
そんな賑わいを見せているトグローフ村をスキップをし、鼻歌を歌いながらパトロールする万の姿があった。
「あっ!シュウエイさん!これ!うちの畑で育ったりんご!持って帰ってサーリセルカちゃんたちと一緒にどうぞ!」
と、一人の老婆が万に木製ボウルに溢れる程入ったりんごを渡してきた。
「クーケッリさん!うわ!こんなにいいんですか!?」
「えいさえいさ!昨日実ったばっかりでうまい思うぜよ!それじゃあパトロール頑張ってね!」
その言葉に万は「ありがとうございます!」と敬礼し、またスキップをし始めた。
「おー!シュウエイ!これからイノシシ狩りに行くがやけんどおんしも行くかー?」
と、今度はどこにでもいそうな顔立ちをした青年三人組の一人に話しかけられた。
「おっ!狩り好き三人組!!すまねぇ、今日は用事があっていけねぇや!代わりにダイノに行かせるよ!」
「あぁ、わかった!もしダイノに会うたらわし達北の森におるって伝えちょいてくれ!」
と言うと、三人組は元気よく門へと向かって走っていった。
「いや~元気でよろしい!」
万はそう言うと、感心するようにウンウンと首を立てに振った。
「おーい!シュウエイー!」
すると前方から万を呼ぶ男の声がした。
「ん?あれ?コタティエさん?王都に出かけてたんじゃ?」
「あぁ、そうなんやけんど肝心の通行手形を忘れちまってねや。わしの親父どこに行ったか知らん?家におらんでさ~」
コタティエ。このトグローフ村の行商人。コタティエの父は通行手形と呼ばれる王国や王都などに行く際に用いるチケットのようなもの。
その通行手形をこの村で唯一コタティエの父のみが発行しており、休日などはコタティエの家は賑わっている。
「あ~。ラーニラさんなら郵便局に向っていくのをさっき見ましたよ。」
「ほんまか!ほんなら良かった!手形発行しちゅー最中やったらわしの発行の時間後回しにされちまうきに~ありがとうねや!」
と、万に手を振り走って郵便局の方へ向っていった。
「どうも~!」
と、万も走るコタティエに手を振った。
「……あの襲撃から2日後。ブラック・ナイト達は襲って来ないし、この村に平和が訪れた……あとは」
万はサーリセルカの家の前に到着した。
「俺があっちの世界に帰れる方法。旅の軌跡の魔力充填ができる大賢者さまさまを探しにいくだけだな!!」
そう言って万は家の扉を開けた。
「たっだいまー!シュウエイちゃんのおかえりでっせ~!」
そう言うと、台所で母親と一緒に料理をしていたサーリセルカが万に気がついた。
「あっ!秀映さん!!」
するとサーリセルカはエプロンをつけたまま万に駆け寄った。
「おかえりなさい!わー!凄いりんご!!クーケッリおばあちゃんのりんご?」
と、万が抱えたりんごが大量に入ったボウルを驚きながら見てそう言った。
「そうだぜ~!採れたていっぱいくれたからよ!アップルパイでも作ろうぜ!」
万がそう言うと、サーリセルカはわーい!と手を上げた。
「あっ……バ、万さんおかえりなさい……」
と、階段から本を持ったダイノが不気味な笑顔で現れた。
「よ~!ダイノ!さっき狩り好き三人組にイノシシ狩りにダイノを行かせるって言っといたから頼むぞ!」
「え?!イ、イノシシ狩りですか?ど、どこの森に?」
「北の森だってさ」
そう言うと、ダイノは「わかりました!」と、机に立てかけてあったモーニングスターを手に取り走って行った。
「おかえりなさい。シュウエイさん。りんごもろうてしまうね。」
と、サーリセルカの母親。エテラリンネが微笑みながら万の持っていたボウルを受け取った。
「ありがとうございます!エテラリンネさん!何か手伝うこととかありますか?」
「今は大丈夫よ。ごとごとしちょって。」
そう言うと、エテラリンネは自分の持ち場へ戻っていった。
「いいんですか!では御言葉に甘えて~」
と、万は2階へと上がって行った。
「じゃあ秀映さんご飯できたら呼びに行くね~!」
サーリセルカが階段を登って行く万にそう呼びかけた。
「ほ~い!サーリちゃんよろしくぅ!」
万はサーリセルカに手を振ると一番奥の部屋に入って行った。
「ふ~……少し寝ようかな。」
万はそう言うと、身につけていた装備を外し、下着姿になった。
「よいしょ~!ふい~ベッド気持ち~!このまま寝落ちしちまいsグゴゴ……」
万は寝転がると、すぐに寝息を立て深い眠りについてしまった。
…………………
…………
……
…
「……ん?ここは……」
万はある空間で目を覚ました。
周りは暗く何も無い。万はしばらくあたりを見渡す。
「おっ?あ、あれは……」
万は前方に何か見つけた。
そのなにかに万は近づく。
「……トニーギスの……首?」
何か。それは目に光がなく不服な顔をしたトニーギスの首だった。
「なんでこんなとこに……俺が一昨日土に埋めたはずじゃ」
万がトニーギスに触れようとする。
その時だった。
ボウッッッッッ!!!
「?!」
トニーギスの首は激しく燃え上がり万を包みこんだ。
「なっ?!なんだこれ?!」
万が炎を振りほどく。
そして万は目撃する。
「…………は?」
万の眼の前に広がる光景。
炎がパチパチと音を立てて街を覆っている。
所々に銃声やヘリコプターのような音が聞こえ、地面には瓦礫。そしてよく見えないが、人の死体のようなものが転がっている。それも兵士のように見える。
「な……んで?ここ……台南?」
万の顔は青ざめていた。
そう。彼の故郷。台湾の台南に彼は立っていたのだ。
「秀映!秀映!」
すると、背後から万を呼ぶ声が聞こえてきた。
「ッ……?!金龍先生?」
その声の主。
特殊部隊のような格好に、額から血を流し銃を構えながら走って来る男だった。
「你佇遐出神啥啊!徛彼爿袂行細膩會死喔!!」
(なにボーっと突っ立ってんだ!そんなとこにいたら死ぬぞ!!)
「え……は……?」
万はただ唖然としていた。
死んだはずの先輩が今眼の前にいて、敵陣に突っ込んで行ったのだから当然だ。
「あっ……待って……そっちに行ったら!先生―――」
ドガアアアアアン!!
万が手を伸ばし一歩踏み出した瞬間。
走っていった金龍は大きな爆発に巻き込まれてしまった。
「あぁ……あっ……!ア……せ……先生ッッッッ!!」
万は涙を流し手を伸ばしながら爆発した方へ突っ込んでいった。
「ハア……ハア……せ、先生……」
すると万はまた真っ暗な空間へと飛ばされた。
そして眼の前には後ろを向き立ち尽くしている金龍の姿が。
万は息を切らしながら金龍に近づく。
「せ……先生……な、何してるんですか?一緒に帰りましょ―――」
万が金龍の肩に触れる。
その瞬間、金龍の首がボトッと地面に墜ちる。
「え……アッ……ひゅ……!ぐあッ……!あぁあ……!」
万はその場から二、三歩後ろへ下がる。
万は混乱する。吐き気、めまい、恐怖が押し寄せてくる。
「グ……うっ……い、痛い……」
その時万は自分の右側の顔に痛みを覚えた。
その痛みはどんどん増してゆき、まるで燃えているようだった。
「あぁ!痛い!痛いよ!目が溶けるっ!口が裂けるっ!あぁあ!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいい痛いいい痛いいい痛いいいいい痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」
万は泣きながら右顔を押さえ膝から崩れ落ちる。
「あぁ……!姉御!先生!みんな……みんな……ごめんなさい……グスッ……守れんくて……ご……めんな……さ―――」
………………………
………………
…………
……
…
「……あぁ。ここは……」
万が目を覚ます。
眼の前には木製の天井であろうものが写った。
(夢……か。久々に死体みたからかな……)
「あ……秀映さん……大丈夫?すごい唸っちょったけど……」
万が起き上がろうとすると、サーリセルカが心配そうな顔で万の腕に抱きついていることに気がついた。
「あぁ……サーリちゃん。大丈夫。ちょっと楽しくねぇ夢見てただけさ。」
と、万はサーリセルカに笑顔を向けベッドから起きあがる。
「うーん!よく寝た!サーリちゃんがいるってことはご飯かな?いや~腹減ったぜ~!」
と、万はあくびをしながら一階へと向っていった。
「……秀映さんの素顔……初めて見たかも……」
サーリセルカが万の部屋でただ一人そう呟いた。
「危ねえ~!服とマスク忘れてた~!」
と、万が慌てながら部屋に戻って来た。
「お?サーリちゃん下いかねぇの?ヴァンハセルカさんもダイノも帰って来てるよ!」
「う、うん!じゃあうちら先ご飯食べゆーね!」
と、サーリセルカは足早に一階へと向っていった。
「…………サーリちゃんにこの顔。見られちゃったな~。」
と、万は自分の焼け焦げて茶色になり、目は潰れ、口が大きく裂けた顔をさすっていた。
「は~お腹すいたっ!とっとと着替えてご飯たーべよっと!」
万はそう言うとヘルメットの下につけるいつものマスクを被り、ヴァンハセルカにもらった軽装に着替え一階に向って行った。
---------夕食後-----------
「相変わらず。夜になると星がきれいに見えるな~」
万は夕食後、外に出て夜空を眺めていた。
「ほんまに……行ってしまわれるがかえ?」
すると背後からエテラリンネがやってきた。
「えぇ、ここにいつまでも居ても迷惑でしょうし。それに……俺には守りたい人たちがあっちにいるので。」
万がそう言うとエテラリンネは少し悲しい顔をして
「そうやか……」
と俯いた。
「でもこの世界に居る間はいつか必ずここに帰って来ます!それまで待っててください!」
そう言うと、エテラリンネはパアっと笑顔になり
「い、いつじゃちもんて来てえいきね!村のみんなあも旦那も大歓迎ぞね!」
と、万にずいっと近づく。
「わ、わかりました!帰れるタイミングがあれば帰りますね!!」
「わかったちや!さっ!あいたは早うに出るがやろう?もう夜遅いき、早めに寝とーせ!」
とエテラリンネ満面の笑みで万にそう言った。
「はい!ではおやすみなさい!」
「うん!おやすみなさい!」
万はそのままエテラリンネより早く家の中に入って行った。
-----------翌日------------
トグローフ村の門の前には村の住人全員が集まっていた。
「シュウエイさん気ぃ付けてなあ!」
「何かあったらここにもんてきてえいきねや!」
「サーリセルカちゃんの見守りしっかり頼むがやぞー!」
村のみんながこれから旅に出る万に様々な言葉を送っていた。
「皆さん。短い間でしたけどお世話になりました!また戻ってきます!」
と、万はみんなに向って敬礼をした。
「サーリセルカー!シュウエイの言うことはちゃんとききやー!」
と、群衆の奥からヴァンハセルカがサーリセルカに向って言った。
「はいはいわかっちゅー!きちんと言う事聞くー!」
と、サーリセルカは軽く受け流していた。
「ダイノくんも気ぃ付けてね!顔めちゃくちゃかわいいがやき変な人に狙われんようにね!」
「そうぜよ~!これから先変な魔物や人がいっぱいおるがやき!」
「困ったらうちらを頼ってね!」
ダイノはライガー族の若い女性たちに囲まれていた
「み、みなさんありがとうございます……が、がんばります……」
と、鎧を着込み兜だけ外したダイノが頭を何度も下げていた。
「全く。ダイノは女の子にモテモテでいーなー。結局どの世界でも顔面が物を言うのかよ!ちぇ……」
と、万がダイノに嫉妬していると「おほん!」と咳払いが下から聞こえてきた。
「あっ。村長さん。」
「行ってしまうのやねや。」
相変わらずムスッとした顔で万にそう言った。
「えぇ。今までお世話になりました。」
万は深くお辞儀する。
「帰れるなら帰る言いよったけんど、別に永遠にもんて来いでもよいで。ワシはおらん方が清々するきねや。」
と、村長はそっぽを向いてしまった。
「はあ~あ!相変わらず堅物ジジィやねや~!親父は!」
「な、なんじゃ?!ヴァンハセルカ!」
先程の言葉を聞いたヴァンハセルカが、ニヤニヤとした表情で村長の肩を組んだ。
「落ち込む必要はないぜよ、シュウエイ!このジジィほんまはおんしが離れるががちっくと寂しいがぜよ~!」
「そ、そがなわけないろうがっ!このバカ息子っ!」
と、村長が怒りながらヴァンハセルカの頭を殴る。
「アハハ……そ、それはどうも、ありがとうございます……」
その様子を見て万は苦笑いだった。
「たく……まぁ、村を救うてくれたことにはまっこと感謝しちゅー。ありがとう。シュウエイ。」
「い、いえ!俺は俺のやれることをしただけです!」
と、万は村長に敬礼をした。
「さぁ!行くならとっとと行け!」
そう言うと村長は万達に背中をみせた。
「は、はい!では!みなさん!行ってまいります!」
「みんなあお土産待っちょってねー!」
「せ、精一杯が、頑張り……ます」
そうして
万秀映。
サーリセルカ。
ダイノ・ストクリフ。
この3人の最前線冒険譚。
最前線のブークリエが始まる……
0
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死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
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引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
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