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「だからっ、樹貴だけは、樹貴だけは…。」
「ちょっと待て。何を言ってるんだ?謝るのは俺の方だ。」
「え?」
「本当に申し訳なかった。樹里にあんな事をして置き去りにしてしまって。本当に本当にすいませんでした。」
俺は土下座して誠心誠意謝った。樹里は固まったまま俺を見ている。
「しかも妊娠してたなんて…。だから学校も辞めていなくなったんだろ?俺のせいで…。本当に申し訳ない。」
「ちょっ、ちょっと待って。何で慎一郎が謝るんだよ。僕のせいだよ。僕のフェロモンのせいなんだ。さっきも言ったけど僕、オメガになったんだ。慎一郎には…その…」
「ああ。知ってる。変異種オメガって言うんだろ?」
「そう。アルファはオメガのフェロモンには抗えないってシェルターで教わった。」
「確かにそうだ。運命の番いなら尚更だ。だからおまえを抱いてしまった。それなのに俺はおまえを置いて…。気が動転してどうしていいか分からなかったんだ。」
「え?運命の番い?」
「ああ。俺たちはそうだ。俺はおまえをベータだと思っていたからこの気持ちに気付かなかったんだ。本当にごめん。」
「え?え?慎一郎はここに何しに来たの?」
「何しに来たって、俺は樹里に謝りに来たんだ。そして俺と結婚して欲しい。」
「…。」
「聞こえなかったか?樹里、俺と結婚してくれ。」
「えぇーー!あっ。」
自分の声の大きさに驚いたのか樹里が慌てて口を押さえる。
樹貴が起きてしまうからな。
樹里がふすまをそっと開けると樹貴は寝息を立てていた。
「ちょっと待って。さっきもそんな事言ってたよね?どういう事?」
「どういう事って、そういう事だ。おまえと結婚したいんだ。」
「何で?」
そうだよな。自分の気持ちをちゃんとに伝えていなかった。
「そうか、ちゃんと言ってなかったな。」
俺は樹里の隣に移動して正座した。
「樹里、おまえが好きだ。だから結婚してくれ。」
「えーーっ⁉︎」
また樹里が大声を出した。でも今度は驚き過ぎているのか樹貴を見にいくことも忘れたようだ。
驚くのも無理はない。でももう二度と樹里を失いたくないんだ。もちろん樹貴も。
「樹貴が起きるだろ?」
「あ、うん。だって急にそんなこと言うからびっくりして。」
「確かにそうだな。樹里が居なくなって、最初はただ謝りたいと思って探していたんだ。でも違った。もちろん謝りたかったんだけどそれだけじゃない。おまえが居なくなって心にぽっかり穴が空いたみたいになって。辛くて苦しくて、なぜこんなふうになるのか自分でもよく分からなかった。」
俺はは正座した太腿の上でぎゅっと拳を握り締める。
樹里は唖然として俺を見つめていた。
「樹里をベータだと思ってたんだ。ベータの男に…。俺はヘテロセクシャルだ。ベータの男に惹かれるはずはないんだ。でも今思えば最初に会ったあの日からずっとおまえに惹かれてた。図書室に通ったのも別に本が好きな訳じゃない。樹里、おまえに会いたかっただけなんだ。それなのに、セクシャリティに縛られて大事なことを認められなかった。」
俺はこの間会った変異種オメガとその番いを思い出した。
九条さんは名執さんがベータの男でも、それでもいいと腹を括って告白しようとした。セクシャリティに関係なく自分の気持ちを認めてそれを受け入れた。
一足遅く名執さんは居なくなってしまったけどそんな九条さんだから名執さんと結ばれることができた。
でも俺は…。
樹里がオメガかもしれないと分かったとき、初めて自分の気持ち気付いた大バカ者だ。
初めて会った時からあんなに惹かれていたのに…。
そして樹里を傷つけ、たった一人で子どもを産んで育てさせたのだ。
自分のバカさ加減に涙が出る。
でもおまえが好きなんだ。
「樹貴を奪いに来たんじゃないの?」
「は?」
「僕はてっきり…。」
「そうだな。そうかもしれない。」
「え?」
「樹里も樹貴も奪いにきた。俺と一緒になってくれ。」
「ちょっと待て。何を言ってるんだ?謝るのは俺の方だ。」
「え?」
「本当に申し訳なかった。樹里にあんな事をして置き去りにしてしまって。本当に本当にすいませんでした。」
俺は土下座して誠心誠意謝った。樹里は固まったまま俺を見ている。
「しかも妊娠してたなんて…。だから学校も辞めていなくなったんだろ?俺のせいで…。本当に申し訳ない。」
「ちょっ、ちょっと待って。何で慎一郎が謝るんだよ。僕のせいだよ。僕のフェロモンのせいなんだ。さっきも言ったけど僕、オメガになったんだ。慎一郎には…その…」
「ああ。知ってる。変異種オメガって言うんだろ?」
「そう。アルファはオメガのフェロモンには抗えないってシェルターで教わった。」
「確かにそうだ。運命の番いなら尚更だ。だからおまえを抱いてしまった。それなのに俺はおまえを置いて…。気が動転してどうしていいか分からなかったんだ。」
「え?運命の番い?」
「ああ。俺たちはそうだ。俺はおまえをベータだと思っていたからこの気持ちに気付かなかったんだ。本当にごめん。」
「え?え?慎一郎はここに何しに来たの?」
「何しに来たって、俺は樹里に謝りに来たんだ。そして俺と結婚して欲しい。」
「…。」
「聞こえなかったか?樹里、俺と結婚してくれ。」
「えぇーー!あっ。」
自分の声の大きさに驚いたのか樹里が慌てて口を押さえる。
樹貴が起きてしまうからな。
樹里がふすまをそっと開けると樹貴は寝息を立てていた。
「ちょっと待って。さっきもそんな事言ってたよね?どういう事?」
「どういう事って、そういう事だ。おまえと結婚したいんだ。」
「何で?」
そうだよな。自分の気持ちをちゃんとに伝えていなかった。
「そうか、ちゃんと言ってなかったな。」
俺は樹里の隣に移動して正座した。
「樹里、おまえが好きだ。だから結婚してくれ。」
「えーーっ⁉︎」
また樹里が大声を出した。でも今度は驚き過ぎているのか樹貴を見にいくことも忘れたようだ。
驚くのも無理はない。でももう二度と樹里を失いたくないんだ。もちろん樹貴も。
「樹貴が起きるだろ?」
「あ、うん。だって急にそんなこと言うからびっくりして。」
「確かにそうだな。樹里が居なくなって、最初はただ謝りたいと思って探していたんだ。でも違った。もちろん謝りたかったんだけどそれだけじゃない。おまえが居なくなって心にぽっかり穴が空いたみたいになって。辛くて苦しくて、なぜこんなふうになるのか自分でもよく分からなかった。」
俺はは正座した太腿の上でぎゅっと拳を握り締める。
樹里は唖然として俺を見つめていた。
「樹里をベータだと思ってたんだ。ベータの男に…。俺はヘテロセクシャルだ。ベータの男に惹かれるはずはないんだ。でも今思えば最初に会ったあの日からずっとおまえに惹かれてた。図書室に通ったのも別に本が好きな訳じゃない。樹里、おまえに会いたかっただけなんだ。それなのに、セクシャリティに縛られて大事なことを認められなかった。」
俺はこの間会った変異種オメガとその番いを思い出した。
九条さんは名執さんがベータの男でも、それでもいいと腹を括って告白しようとした。セクシャリティに関係なく自分の気持ちを認めてそれを受け入れた。
一足遅く名執さんは居なくなってしまったけどそんな九条さんだから名執さんと結ばれることができた。
でも俺は…。
樹里がオメガかもしれないと分かったとき、初めて自分の気持ち気付いた大バカ者だ。
初めて会った時からあんなに惹かれていたのに…。
そして樹里を傷つけ、たった一人で子どもを産んで育てさせたのだ。
自分のバカさ加減に涙が出る。
でもおまえが好きなんだ。
「樹貴を奪いに来たんじゃないの?」
「は?」
「僕はてっきり…。」
「そうだな。そうかもしれない。」
「え?」
「樹里も樹貴も奪いにきた。俺と一緒になってくれ。」
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