4 / 20
4
しおりを挟む
「比呂、これ…。」
夏樹が見せてくれた画面にはあの美涼が笑っていた。
『プロポーズされました。』笑顔の美涼と婚約指輪の写真。男と二人で写った背中…。日付はどれも最近だ。
マジかよ…。婚約者がいて高校生に手を出したんだ。
「最悪だな。岩澤は知ってんのかね?」
「どーだろ。」
SNSの中の美涼はキラキラ輝いていた。美人で、有名大学で、婚約者までいる。
何で航なんだ?本気で航が好きなのか?
「夏樹、美涼は航に本気か?」
「いや、違うだろ。そんなヤツが『プロポーズされました』何て載せないだろ。」
「そうだよな。」
何なんだよ。何もかも持ってるのにまだ人のものを欲しがるのか。
最低だな。
この時俺は怒りが100%になった。
ちょっとそれよく見せて、と言ってスマホを奪った。SNSのフォロワーやコメント欄を見る。どこかにあるはずだ。
「あ…あった。」
「何が?」
夏樹が覗き込む。
「この人が美涼の婚約者だ。」
「どれ?」
「この人だ。間違いない。ほら、このコメント。こっちも。」
この人は何も知らないのだろうか?幸せそうな二人に腹が立ってきた。
クソっ!やられたらやり返す!何かのドラマだ。
「夏樹、俺はやるぞ?」
「え、何を?」
「復讐だ。俺は泣き寝入りするオメガようなじゃない!」
夏樹は怖い物を見るような目で俺を見たが、すぐにガッツポーズした。
早速俺のスマホから検索してDMを送った。
『山木美涼さんの婚約者ですよね?俺の恋人と浮気してました。ぜひお会いしてお話しさせて下さい。』
「返事来るか?」
「さあ?」
「迷惑メールとか、いたずらとか思われるかもよ。」
「まあな。」
それでもいい。何もしないよりはマシだ。
はっきりと写った写真はないがアルファだしイケメンなのは分かる。
おかしなDMなんて山のように来るだろう。
『ピコン』
「えっ?マジか…。」
俺はスマホを持って固まった。
「返事来た。会いたいですって。」
「え?どれ?うわっ!マジか~。どうする。」
「会うしかないだろ。」
「変なやつかもよ。」
「昼間のファミレスなら大丈夫だろ。」
俺は二日後の土曜の十四時を指定した。
場所はこのファミレスだ。
アウェイは避けたい。
木、金は最低だった。
俺と航の様子から別れたことが何となく分かったみたいだ。
そりゃそうだろ。休み時間も別々だし、廊下で顔を合わせても話しもしない。
みんな興味津々だ。
聞いてくるヤツにははっきり別れたと言った。
「すげ~噂になってるぞ。俺にまで聞いてくる。」
「うん。ごめんな。巻き込んで。」
「いいよ。人の噂も…何だっけ?四十九日?」
「いや七十五日だろ。って長いな…」
航は未だにメッセージを送ってくる。『おはよう』みたいな何でもないものや『好きだ』とか『ごめん』とか。
金曜日に通知をブロックした。
本当に終わった。
明日は美涼の婚約者に会う。
どんな人だろう。暴れたりしないよな…。
少し憂鬱になってきた。夏樹は隣の席で待機してくれるらしい。
本当にいいヤツだ。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「ちょっと出かけてくる。」
「いってらっしゃい。」
リビングでテレビを見ていた母さんに声をかけて家を出た。
電車で二駅先のファミレスに行く。
本当に婚約者さんは来るのだろうか。
来なかったら夏樹と二人でカラオケにでも行くか。
十五分前にファミレスに着いた。もう夏樹もいた。
俺たちは別々の席に座る。
『来るかな?』
『分からん』
『場所は?』
『今窓側の一番奥にいるって送った』
夏樹とメッセージアプリで会話する。
何か変な感覚。自分のことのようでどこか俯瞰で見ている感じだ。
俺たちはしばらくどうでもいいやり取りを続けていた。
来た…。
たぶんあの人だ。
十四時ぴったりにその人は来た。
点内を見回して俺の顔を見て動きを止めた。
ゆっくりこっちに近づいて来る。
背の高いめちゃくちゃイケメンだ。theアルファって感じがする。歳は俺より十歳くらい上に見える。
俺の席の前で足を止める。すごい良い匂いがする。これは大人のアルファのフェロモンだろうか。
航もこんな大人のオメガのフェロモンに誘惑されたのだろうか…。
「君…だよね?」
「美涼さんの婚約者の方ですか?」
「あぁ。座っても良い?」
「あ、はいどうぞ。」
近くで見るその人はイケメンなんてもんじゃなかった。大きくて切れ長の瞳、スッとした鼻筋、薄い唇はやや冷たい印象を受ける。こんな人と婚約しているのに浮気するなんて…。
俺は呆けて見ていたらしい。クスっと笑ってその人は言った。
「相良京介です。君は?」
「あ、野村比呂です。N校の二年です。」
「高校生か…。君の恋人は?」
「もう別れました。同じです。N校の二年。」
「DMのことは本当?」
俺は口で言うよりも直接見たほうがいいと思い、スマホで撮った写真を見せた。
たまたま部屋に行ったら見てしまったと言った。
あとは二人のやりとりをスクショしたものも見せた。
相良さんは航と自分の婚約者のあられもない写真をじっと見て指で拡大したりしている。
「くくく、野村君、写真上手いね。」
笑いながら見ている。
大丈夫かな?笑ってる。何か怖い。
スマホ壊されないよね?
「あの…スマホ。」
「あ、あぁごめん。そのデータ後でもらえる?」
「はい…。」
「で?野村君はどうしたいの?お金?」
金?あぁ、ゆするために呼び出したと思われたのか。
金なんてもらってもどうしようもない。そんな気持ち悪い金使いたくもない。
「いえ。俺の気がすむようにしてるだけです。航とは、美涼さんの浮気相手とは番う約束をしていました。美涼さんが本気ならまだ許せたかもしれない。でも違った。航も…俺の元カレも土下座して謝って来た。遊びだったんです。そんないい加減な気持ちで俺を踏み躙った……」
ダメだ…涙が…。枯れたはずの涙がボロボロ出できた。
この人は悪くないのに。すいません、と謝りながら泣き続けた。
これだから子どもは、と思われているだろう。
夏樹が見せてくれた画面にはあの美涼が笑っていた。
『プロポーズされました。』笑顔の美涼と婚約指輪の写真。男と二人で写った背中…。日付はどれも最近だ。
マジかよ…。婚約者がいて高校生に手を出したんだ。
「最悪だな。岩澤は知ってんのかね?」
「どーだろ。」
SNSの中の美涼はキラキラ輝いていた。美人で、有名大学で、婚約者までいる。
何で航なんだ?本気で航が好きなのか?
「夏樹、美涼は航に本気か?」
「いや、違うだろ。そんなヤツが『プロポーズされました』何て載せないだろ。」
「そうだよな。」
何なんだよ。何もかも持ってるのにまだ人のものを欲しがるのか。
最低だな。
この時俺は怒りが100%になった。
ちょっとそれよく見せて、と言ってスマホを奪った。SNSのフォロワーやコメント欄を見る。どこかにあるはずだ。
「あ…あった。」
「何が?」
夏樹が覗き込む。
「この人が美涼の婚約者だ。」
「どれ?」
「この人だ。間違いない。ほら、このコメント。こっちも。」
この人は何も知らないのだろうか?幸せそうな二人に腹が立ってきた。
クソっ!やられたらやり返す!何かのドラマだ。
「夏樹、俺はやるぞ?」
「え、何を?」
「復讐だ。俺は泣き寝入りするオメガようなじゃない!」
夏樹は怖い物を見るような目で俺を見たが、すぐにガッツポーズした。
早速俺のスマホから検索してDMを送った。
『山木美涼さんの婚約者ですよね?俺の恋人と浮気してました。ぜひお会いしてお話しさせて下さい。』
「返事来るか?」
「さあ?」
「迷惑メールとか、いたずらとか思われるかもよ。」
「まあな。」
それでもいい。何もしないよりはマシだ。
はっきりと写った写真はないがアルファだしイケメンなのは分かる。
おかしなDMなんて山のように来るだろう。
『ピコン』
「えっ?マジか…。」
俺はスマホを持って固まった。
「返事来た。会いたいですって。」
「え?どれ?うわっ!マジか~。どうする。」
「会うしかないだろ。」
「変なやつかもよ。」
「昼間のファミレスなら大丈夫だろ。」
俺は二日後の土曜の十四時を指定した。
場所はこのファミレスだ。
アウェイは避けたい。
木、金は最低だった。
俺と航の様子から別れたことが何となく分かったみたいだ。
そりゃそうだろ。休み時間も別々だし、廊下で顔を合わせても話しもしない。
みんな興味津々だ。
聞いてくるヤツにははっきり別れたと言った。
「すげ~噂になってるぞ。俺にまで聞いてくる。」
「うん。ごめんな。巻き込んで。」
「いいよ。人の噂も…何だっけ?四十九日?」
「いや七十五日だろ。って長いな…」
航は未だにメッセージを送ってくる。『おはよう』みたいな何でもないものや『好きだ』とか『ごめん』とか。
金曜日に通知をブロックした。
本当に終わった。
明日は美涼の婚約者に会う。
どんな人だろう。暴れたりしないよな…。
少し憂鬱になってきた。夏樹は隣の席で待機してくれるらしい。
本当にいいヤツだ。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「ちょっと出かけてくる。」
「いってらっしゃい。」
リビングでテレビを見ていた母さんに声をかけて家を出た。
電車で二駅先のファミレスに行く。
本当に婚約者さんは来るのだろうか。
来なかったら夏樹と二人でカラオケにでも行くか。
十五分前にファミレスに着いた。もう夏樹もいた。
俺たちは別々の席に座る。
『来るかな?』
『分からん』
『場所は?』
『今窓側の一番奥にいるって送った』
夏樹とメッセージアプリで会話する。
何か変な感覚。自分のことのようでどこか俯瞰で見ている感じだ。
俺たちはしばらくどうでもいいやり取りを続けていた。
来た…。
たぶんあの人だ。
十四時ぴったりにその人は来た。
点内を見回して俺の顔を見て動きを止めた。
ゆっくりこっちに近づいて来る。
背の高いめちゃくちゃイケメンだ。theアルファって感じがする。歳は俺より十歳くらい上に見える。
俺の席の前で足を止める。すごい良い匂いがする。これは大人のアルファのフェロモンだろうか。
航もこんな大人のオメガのフェロモンに誘惑されたのだろうか…。
「君…だよね?」
「美涼さんの婚約者の方ですか?」
「あぁ。座っても良い?」
「あ、はいどうぞ。」
近くで見るその人はイケメンなんてもんじゃなかった。大きくて切れ長の瞳、スッとした鼻筋、薄い唇はやや冷たい印象を受ける。こんな人と婚約しているのに浮気するなんて…。
俺は呆けて見ていたらしい。クスっと笑ってその人は言った。
「相良京介です。君は?」
「あ、野村比呂です。N校の二年です。」
「高校生か…。君の恋人は?」
「もう別れました。同じです。N校の二年。」
「DMのことは本当?」
俺は口で言うよりも直接見たほうがいいと思い、スマホで撮った写真を見せた。
たまたま部屋に行ったら見てしまったと言った。
あとは二人のやりとりをスクショしたものも見せた。
相良さんは航と自分の婚約者のあられもない写真をじっと見て指で拡大したりしている。
「くくく、野村君、写真上手いね。」
笑いながら見ている。
大丈夫かな?笑ってる。何か怖い。
スマホ壊されないよね?
「あの…スマホ。」
「あ、あぁごめん。そのデータ後でもらえる?」
「はい…。」
「で?野村君はどうしたいの?お金?」
金?あぁ、ゆするために呼び出したと思われたのか。
金なんてもらってもどうしようもない。そんな気持ち悪い金使いたくもない。
「いえ。俺の気がすむようにしてるだけです。航とは、美涼さんの浮気相手とは番う約束をしていました。美涼さんが本気ならまだ許せたかもしれない。でも違った。航も…俺の元カレも土下座して謝って来た。遊びだったんです。そんないい加減な気持ちで俺を踏み躙った……」
ダメだ…涙が…。枯れたはずの涙がボロボロ出できた。
この人は悪くないのに。すいません、と謝りながら泣き続けた。
これだから子どもは、と思われているだろう。
21
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる