オメガの秘薬

みこと

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番外編1

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「航、柔軟剤がもう切れそうだったよ。」

「そうだったね。ボディソープはこっちの方が良い?」

俺たちはクリスマスにまた付き合い始めて、その半年後に同棲した。
ヒロのご両親に挨拶に行ったときはすごく緊張した。
お義父さんに殴られるかもしれない。でも諦める選択肢はなかった。
覚悟して行った俺に予想外に喜んでくれた。俺に起こった事を知っていてお義母さんは泣いていた。

「こっちの匂いの方が良かった。」

「うん。分かった。」

学校の帰りに二人で買い物をして帰る。そんな何気ないことが幸せだ。

「来週あたりヒートでしょ?」

「うん。いつもごめん。」

「何で謝るの?楽しみだよ。」

「楽しみって…。」

ヒロはヒートの時の自分が恥ずかしいみたいだ。すごく可愛いのに。

「そろそろ準備しとこうね。」

「うん。」

恋人のヒートは大学に公休が申請できる。
早く来週にならないかな。ヒート中のヒロは甘えん坊ですごく可愛い。本当に楽しみだ。

これからもヒロのヒートをまた一緒に過ごせる。
そのためなら何でも出来る。
昨日のニュースで『オメガの秘薬』の特集が放送されていた。
もう何とも思わない。俺たちはこのことから逃げずにきちんと話し合った。
ヒロは俺を信じられなかったこと、新しい彼氏を結局傷付けたことを酷く苦しんでいた。
俺もヒロを裏切り傷付けたことと、ヒロと新しい彼氏との楽しそうな様子に悲しみ傷付いたことを伝えた。
それを含めて隠し事をせず、二人で良く話し合ってまた付き合いことになったのだ。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


「航…。来ちゃった。」

「うん、すぐ帰る。誰が来ても玄関を開けちゃダメだよ。」

先に家に帰っていたヒロから連絡があった。
ヒートが始まったのだ。
急いで家に帰る。タクシーよりも電車の方が早いかな。
まだ道は空いている。やっぱりタクシーにしよう。
車の免許を取っておけば良かったな。
そんなことを考えながら流しのタクシーを拾った。




「ヒロ!ただいま!」

玄関を開けるとヒロのフェロモンが広がる。
はぁ、もうこの匂いだけでイキそう。
荷物を置いてベッドルームのドアを開けるとさらに濃い匂いにくらくらする。

「航…。」

俺のパジャマや服をベッドに乗せてくるまっている。
ヒロはヒートの時に巣作りをするようになった。
可愛いくて堪らない。

「ヒロ、上手に巣作りできたね。」

服を脱がながらベッドに乗り上げた俺に抱きついてくる。
普段のヒロは恥ずかしがり屋だ。こんな大胆に求めて来ない。
可愛くて幸せで嬉しくて抱きしめてながらヒロの服を脱がせた。

「あ、待って薬。」

ベッドサイドテーブルの引き出しを開けてアルファ用の避妊薬を取り出して水なしで飲み込んだ。

「航、早く。お願い…。」

「うん。お待たせ。ヒロ、大好きだよ。」

なけなしの理性でベッドに優しくヒロを押し倒した。





五日間、たくさんセックスして愛し合った。
すごく幸せだ。

「ヒロ?大丈夫?」

「うん。」

発情はすっかり抜けたみたいだ。ベッドに座ってぼーっとしている。

「どうしたの?」

「恥ずかしくて…。」

「ふふ、ヒロすごかったもんね。アレは…」

「あーもう、いいよ。言わないでよ。」

もう一度愛し合って二人で抱き合って眠った。
残念だけど明日から学校に行けそうだ。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎



「ヒロ、もう食べないの?」

「うん。何か胃の調子が悪くて。」

この二、三日ヒロは食欲がない。
今日もヒロの大好きなハンバーグだけどほとんど食べていない。
昔、胃潰瘍で入院したことがあると言っていた。
心配だ。ヒロに何かあったら生きていけない。

「明日病院に行こう。ていうか連れてくから。」

「…うん。」


やっぱり元気がない。
ヒロを風呂に入れて早めに寝かせた。ヒロが眠ったのを見届けて頭にキスをして俺も眠った。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


「「え?」」

「おめでとうございます。妊娠五週目ですね。まだ心拍は確認できないので一ヶ月後に来て下さい。その間にも何かあったらすぐに受診して下さいね。」

「え、妊娠ですか…?」

「はい。ほら、これが胎嚢といって赤ちゃんのおうちですよ。」

俺とヒロはまだ信じられないといった様子で写真を見つめた。
内科を受診したらオメガ産科に回されたのだ。

「今後のことは看護師から聞いて帰って下さいね。」

先生は笑顔で俺たちを見送った。



「航、どうしよう…。」

家に帰って二人で話し合うことにした。
落ち着くためにお茶を淹れてソファーに座る。
当たり前だけどヒロはとても動揺している。もちろん俺もだ。
週数からいってこの間のヒートの時だ。
避妊薬を飲んでいたのに。
ヒロと俺の赤ちゃん。ヒロには苦労をかけることになるけどすごく嬉しい。

「あのさ、もちろんヒロが決めたことに従うけど、俺としては産んでほしい。」

「航…。」

「いろいろ問題は山積みだけど嬉しいんだ。俺とヒロの赤ちゃん。」

「…。」

「今決めなくても良いよ。でも俺、なんでもするし、赤ちゃん、諦めたくない。ごめん、自分勝手で…。」

ヒロは自分のお腹にそっと手を当てている。

「赤ちゃん、いるんだな。実感はないけどこの気持ち悪さはつわりだったんだ。」

「うん。」

ヒロの隣に座り直して俺もお腹の手に自分の手を乗せた。

「俺、産むよ。」

「え?」

「決めた。産む。航との赤ちゃんなんてすごく嬉しいよ。」

「ヒロ…ありがとう。」

ヒロとの赤ちゃん…。
嬉しい。本当に嬉しいよ。
俺は泣いていた。ヒロの顔を見るとヒロも泣いていた。
泣きながら笑って二人で頑張ろうと決めて抱き合った。
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