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番外編3
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「忠臣さん!こっちです!」
ホテルのロビーで待っているとオーラを放った男性その番いが一緒入ってきた。
大学の先輩の忠臣さんと番いの雅人さんだ。
今日は忠臣さんにヒロを紹介するために会うことになったのだ。
「今日はありがとうございます。こっちが番いのヒロです。」
「こんにちは…。」
ヒロはそのオーラに圧倒されたようで小さい身体をさらに小さくさせて緊張している。
「ちょっと、忠臣。オメガの子が萎縮しちゃってるだろ?そのオーラやめてよ。」
隣に立っている忠臣さんのオメガが慌てたように言った。
「え?ああ、ついな。おまえに何かされたら困るからな。」
「はぁ?何もするわけないだろ?見境なしに威嚇するなよ。ごめんね、えっと比呂くんだっけ?」
優しく比呂見て話しかけてくれる。
「はい。」
「忠臣の番いの雅人です。よろしくね。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
「まだお腹目立たないね。そのうち何するのも苦しくなっちゃうよ。」
雅人さんは自分のお腹を撫でた。忠臣さんはその様子を優しい顔で見つめている。
来月には出産の予定だと言っていた。
「とにかく座ろうか。」
忠臣さんの言葉に頷きラウンジのサンルームに向かった。
昼間は喫茶店になっていて、ケーキが評判の店だ。
俺たちはもう一度自己紹介をして日当たりの良いソファー席に座る。
雅人さんが腰掛けるときは忠臣さんがそっと身体を支えてあげていた。
「忠臣、ありがと。」
見たことのない蕩けるような笑顔を雅人さんに向ける。
二人は大学一年のときに番いになり卒業と同時に結婚した。結婚三年目だけどラブラブだ。
忠臣さんはうっとりと隣の雅人さんを見つめて大きくなったお腹を撫でた。
「あの…病院を紹介してくれてありがとうございました。ヒロもそこで産むことにしたんです。」
「そうなんだ!」
雅人さんが笑顔でヒロを見た。
「はい。」
ヒロはまだ緊張していて口数が少ない。
そんなヒロの緊張をほぐすように雅人さんが話しかけてくれる。
「主治医は誰?」
「山科先生です。」
「あぁ、俺と一緒だ。優しくて面白くていい先生だよね。」
「はい。」
その後も二人はお勧めのマタニティグッズやベビーグッズの話で盛り上がっていた。
ヒロはマタニティの先輩の話に興味津々だ。
しばらくすると二人はスマホでいろいろな店のサイトを見始めた。ここが良いとかあれが良いとか情報交換をしている。
「この間、病院でショックな話を聞いたんだ。岩澤も心した方がいい。」
二人に聞こえないように忠臣さんが小声で俺に囁いた。
その顔は深刻だ。
え?何だろう。ヒロにも関係することだろうか。
男のオメガの出産に関することか?
楽しそうに話すヒロたちを幸せな気持ちで眺めていた俺は一気に緊張した。
「出産は一週間も入院するらしい。オメガの男はもっと長くなるかもしれない。」
「え?」
「一週間も離れて寝るんだ。」
「……。」
「雅人と一週間も…。」
忠臣さんは頭を抱えて項垂れている。
俺は意味が分からず忠臣さんを見つめていた。
「もう、忠臣。またその話?」
隣の雅人さんが呆れた声を出した。
「だって、一週間もだぞ?病院にあんなに頼んだのに泊めてくれないって。」
「仕方ないだろ?ホテルじゃないんだ。病院なんだから。命がかかっている場所なんだよ。」
「俺だって命がかかってる。寂しくて死ぬかもしれない…。」
「はぁ?そんなことある訳ないだろ。」
俺とヒロは二人のやり取りをポカンと見ていた。
それに気付いた雅人さんが顔を赤くして慌てている。
「ずっとこの調子なんだ。たった一週間なのに。」
「一週間もだ。」
忠臣さんが雅人さんに抱きついて首筋に顔を埋めている。
「ちょっと、恥ずかしいだろ。」
「一週間もなんて…。」
雅人さんは首まで赤くなっている。引き剥がそうとしているが忠臣さんはがっちり抱きついて離れない。
「あ、で、でも電話とかメッセージとか出来るんですよね?」
何故かヒロも釣られて顔が赤い。
「もちろんだよ。午後は面会もできるし。」
みんなの会話でやっと忠臣さんが言っていることの意味が分かった。
パンフレット面会時間は十四時から十八時と書いてあったのを思い出した。
あれには俺も含まれているのか。俺もずっと一緒に居られないんだ。
入院期間中泊まるつもりでいたのに…。
忠臣さんが病院に頼んでもダメって言ってた。
もちろん俺もダメなはずだ。
「忠臣さん、それ本当ですか?俺、泊まるつもりでした…。
」
「え?航?」
ヒロが目を丸くして俺を見ている。
「そうなんだ。いろいろな病院をあたってみたけど夫や番いが泊まれる病院はないんだ。俺と雅人は運命なのに…。」
そう言って忠臣さんは雅人さんをさらにキツく抱きしめて首筋に吸い付き出した。
一週間離れることを想像して苦しいんだろう。
分かる。俺も同じだ。
ヒロと一週間も離れる…。
出産は大変なことだ。だからこそずっと側に居たいのに。
「わ、航?何で泣いてるの?」
ヒロと一週間離れることを想像したらいつの間にか泣いていた。
よりを戻してからずっと一緒にいた。もちろん寝る時もヒロを抱きしめてヒロの匂いを嗅いで寝ていた。
それが出来ないんだ。
「ヒロ…ヒロ…、うっ、うぅ。一週間もなんて…」
「え?え?ちょっと、知らなかったの?普通のことだよ?オメガの男じゃなくてもみんな入院して出産するんだよ?」
「うぅ、ヒロ、ヒロ…。」
俺はヒロに抱きついて泣いた。
忠臣さんは雅人さんの自分の匂いを擦り付けて頸にキスをしていた。
ホテルのロビーで待っているとオーラを放った男性その番いが一緒入ってきた。
大学の先輩の忠臣さんと番いの雅人さんだ。
今日は忠臣さんにヒロを紹介するために会うことになったのだ。
「今日はありがとうございます。こっちが番いのヒロです。」
「こんにちは…。」
ヒロはそのオーラに圧倒されたようで小さい身体をさらに小さくさせて緊張している。
「ちょっと、忠臣。オメガの子が萎縮しちゃってるだろ?そのオーラやめてよ。」
隣に立っている忠臣さんのオメガが慌てたように言った。
「え?ああ、ついな。おまえに何かされたら困るからな。」
「はぁ?何もするわけないだろ?見境なしに威嚇するなよ。ごめんね、えっと比呂くんだっけ?」
優しく比呂見て話しかけてくれる。
「はい。」
「忠臣の番いの雅人です。よろしくね。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
「まだお腹目立たないね。そのうち何するのも苦しくなっちゃうよ。」
雅人さんは自分のお腹を撫でた。忠臣さんはその様子を優しい顔で見つめている。
来月には出産の予定だと言っていた。
「とにかく座ろうか。」
忠臣さんの言葉に頷きラウンジのサンルームに向かった。
昼間は喫茶店になっていて、ケーキが評判の店だ。
俺たちはもう一度自己紹介をして日当たりの良いソファー席に座る。
雅人さんが腰掛けるときは忠臣さんがそっと身体を支えてあげていた。
「忠臣、ありがと。」
見たことのない蕩けるような笑顔を雅人さんに向ける。
二人は大学一年のときに番いになり卒業と同時に結婚した。結婚三年目だけどラブラブだ。
忠臣さんはうっとりと隣の雅人さんを見つめて大きくなったお腹を撫でた。
「あの…病院を紹介してくれてありがとうございました。ヒロもそこで産むことにしたんです。」
「そうなんだ!」
雅人さんが笑顔でヒロを見た。
「はい。」
ヒロはまだ緊張していて口数が少ない。
そんなヒロの緊張をほぐすように雅人さんが話しかけてくれる。
「主治医は誰?」
「山科先生です。」
「あぁ、俺と一緒だ。優しくて面白くていい先生だよね。」
「はい。」
その後も二人はお勧めのマタニティグッズやベビーグッズの話で盛り上がっていた。
ヒロはマタニティの先輩の話に興味津々だ。
しばらくすると二人はスマホでいろいろな店のサイトを見始めた。ここが良いとかあれが良いとか情報交換をしている。
「この間、病院でショックな話を聞いたんだ。岩澤も心した方がいい。」
二人に聞こえないように忠臣さんが小声で俺に囁いた。
その顔は深刻だ。
え?何だろう。ヒロにも関係することだろうか。
男のオメガの出産に関することか?
楽しそうに話すヒロたちを幸せな気持ちで眺めていた俺は一気に緊張した。
「出産は一週間も入院するらしい。オメガの男はもっと長くなるかもしれない。」
「え?」
「一週間も離れて寝るんだ。」
「……。」
「雅人と一週間も…。」
忠臣さんは頭を抱えて項垂れている。
俺は意味が分からず忠臣さんを見つめていた。
「もう、忠臣。またその話?」
隣の雅人さんが呆れた声を出した。
「だって、一週間もだぞ?病院にあんなに頼んだのに泊めてくれないって。」
「仕方ないだろ?ホテルじゃないんだ。病院なんだから。命がかかっている場所なんだよ。」
「俺だって命がかかってる。寂しくて死ぬかもしれない…。」
「はぁ?そんなことある訳ないだろ。」
俺とヒロは二人のやり取りをポカンと見ていた。
それに気付いた雅人さんが顔を赤くして慌てている。
「ずっとこの調子なんだ。たった一週間なのに。」
「一週間もだ。」
忠臣さんが雅人さんに抱きついて首筋に顔を埋めている。
「ちょっと、恥ずかしいだろ。」
「一週間もなんて…。」
雅人さんは首まで赤くなっている。引き剥がそうとしているが忠臣さんはがっちり抱きついて離れない。
「あ、で、でも電話とかメッセージとか出来るんですよね?」
何故かヒロも釣られて顔が赤い。
「もちろんだよ。午後は面会もできるし。」
みんなの会話でやっと忠臣さんが言っていることの意味が分かった。
パンフレット面会時間は十四時から十八時と書いてあったのを思い出した。
あれには俺も含まれているのか。俺もずっと一緒に居られないんだ。
入院期間中泊まるつもりでいたのに…。
忠臣さんが病院に頼んでもダメって言ってた。
もちろん俺もダメなはずだ。
「忠臣さん、それ本当ですか?俺、泊まるつもりでした…。
」
「え?航?」
ヒロが目を丸くして俺を見ている。
「そうなんだ。いろいろな病院をあたってみたけど夫や番いが泊まれる病院はないんだ。俺と雅人は運命なのに…。」
そう言って忠臣さんは雅人さんをさらにキツく抱きしめて首筋に吸い付き出した。
一週間離れることを想像して苦しいんだろう。
分かる。俺も同じだ。
ヒロと一週間も離れる…。
出産は大変なことだ。だからこそずっと側に居たいのに。
「わ、航?何で泣いてるの?」
ヒロと一週間離れることを想像したらいつの間にか泣いていた。
よりを戻してからずっと一緒にいた。もちろん寝る時もヒロを抱きしめてヒロの匂いを嗅いで寝ていた。
それが出来ないんだ。
「ヒロ…ヒロ…、うっ、うぅ。一週間もなんて…」
「え?え?ちょっと、知らなかったの?普通のことだよ?オメガの男じゃなくてもみんな入院して出産するんだよ?」
「うぅ、ヒロ、ヒロ…。」
俺はヒロに抱きついて泣いた。
忠臣さんは雅人さんの自分の匂いを擦り付けて頸にキスをしていた。
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