運命はいつもその手の中に

みこと

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「で?うちに来たの?」

仏頂面の満が玄関のドアを開けて立っている。
下を見ると大きな靴がある。平林がいるな、と思っていると奥からそいつが出てきた。

「上がってもらえよ。」

「平林、ありがとな。」

お邪魔します、と言って二人で家に上がった。

「何?手なんか繋いじゃって。拓実、コイツのどこが良いんだよ。性格悪いぞ。」

「うるせーよ。茶ぐらい出せ。」

「図々しいヤツだな。拓実、こんなヤツやめろよ。啓がもっと良いやつ紹介してくれるぜ。」 

拓実は困ったような顔をして笑った。

「亮平は優しいよ。カッコいいし。」

恥ずかしそうに言った。

「拓実…。拓実だって優しくて可愛いよ。」

抱きしめて頭にキスをする。

「人んちでイチャイチャすんな。」

「まあまあ。満、アルファってのは自分のオメガにしか優しくしない生き物だよ。桜沢が優しくするって事は本気で好きって事だ。そうだろ?」

平林が俺の顔を見て言った。その言葉に大きく頷く。
その通りだ。アルファにとって大事なのは自分のオメガだけ。オメガのためなら肉親だって切り捨てる。

「仲直り?したの?」

「うん。」

「そ、良かったね。『大好きな亮平へ』だもんな。」

「えっ、うん。」

拓実の顔が真っ赤だ。『大好きな亮平へ』って。手紙にそんな風に書いてたのか。

「俺も拓実が大好きだよ。」

また抱きしめて頭にキスをした。

「だーかーらー、人んちでやるなよ。つーか何しに来たんだよ。」

「家を出ようかと思って。クソババアが俺たちを引き裂いたのは間違いない。」

あの時の事を思い出していた。
母親に懇願されて渋々フランスに行った。祖母は腰が痛いくらいで元気だった。おかしいな、と思ったけどその当時はフランス語は簡単な日常会話しか出来なかったのでうやむやになってしまったのだ。
帰って来て拓実が居ないと母親に言った時のあの態度、担任の様子もおかしかった。知らないの一点張り。
転校先を知らないはずがない。

「亮平?」

拓実が黙ってしまった俺を心配そうに覗き込む。
可愛い。俺の大事なオメガ。
今度は俺が守る。もちろん拓実の両親も。
ぎゅっと抱きしめてキスをした。

「またやってるよ。」

満が呆れた声を出した。




「で?どうすんだ?」

今まであったこと、おそらく拓実の父親の転勤は俺の母親が絡んでいる事を話した。
拓実はショックを受けている。

「家を出る。金はあるんだ。もうあんな家には居られない。」

「それは分かるけど、そんな事したらお袋さんがまた拓実や拓実の親にも何かするぞ。」

「たぶんな。でも考えがある。一つだけ阻止する方法があるんだ。」

怯えている拓実に大丈夫だから、と言って頭を撫でた。

「あーーっ!もうこんな時間!啓っ!早く行かないとっ!」

時計を見た急に満が立ち上がって叫んだ。

「あ、本当だ。満、急いでっ!」

二人はバタバタと支度をして部屋を出て行った。
行きがてら満が拓実に『好きなだけ居ろよ』と声を掛けていた。
拓実が言うように本当は良いやつなのかもしれない。

「亮平、俺どうしたらいい?」

「拓実は何もしなくて良いよ。これは桜沢家の問題だ。」

「でも、家を出るんだろ?俺、働くよ。学校辞めても良いよ。」

きゅっと俺のシャツの裾を掴んで言った。
拓実は全然変わってない。可愛くていじらしくて真面目で。
それに比べて俺は捨てられたと思って何もかも嫌になってバカなことばかりしてきた。
抱きしめて身体を撫でた。

「そんな事しなくても大丈夫だよ。考えがあるって言っただろ?それよりも拓実やご両親に申し訳ない。俺の母のせいで…。本当にごめん。」

「ううん。F県に引っ越して最初は大変だったけど父さんと母さんは田舎が合ってるみたい。畑したり、車の免許取ったりして今は楽しそうだよ。」

拓実は優しいな。きっとすごく大変だったはずだ。
でも俺が気にしないようにそう言ってくれる。

「拓実…」

俺の腕の中にすっぽり埋まった拓実が顔を上げた。
ちゅっと音を立ててキスをする。
最初は触れるだけのキスから徐々に深いキスに変えていく。拓実はぎゅっと俺にしがみついている。
本当に可愛い。俺の拓実、俺のオメガ。

「ふ、んん、はぁ…。」

拓実を押し倒してキスをする。

「拓実、可愛い…」

「あ、満たち帰って来ちゃうよ…んんっ。」

可愛い。
このまましたいけどダメだ。あいつらも帰ってくるし、ちゃっちゃと適当にしたくない。最初だし丁寧に優しく抱きたい。
でも身体は正直で二人とも勃起している。
拓実のソレに押し付けて腰を揺らした。

「あ、あ、んん、亮平…」

はぁ、可愛い。もっと声が聞きたい。もっと気持ちよくさせたい。さらに押し付けて腰を揺らす。

ガチャガチャ、バタン。

満たちが帰ってきた。パッと離れて拓実を抱き起こした。

「ごめん、大丈夫?」

「うん。」

ぼーっとする拓実の乱れた髪と服を整える。

「ただいま~。良かった間に合って。あと十分遅かったらなくなってたね。」

平林が両手に買い物袋を持っている。

「買い物に行ってたの?」

「そう!今日特売日でさ。タイムセールで卵がお一人様ひとパック七十九円!二人で行ったからふたパック買えたよ。キャベツはこんな大きいのが一玉九十八円だし、もやしなんて五円だよ。いやー、安かった。間に合って良かった。」

興奮して嬉しそうな満を平林が優しい顔で見ていた。
買ってきた戦利品を二人で楽しそうに冷蔵庫にしまっている。
『満は俺の運命だ』
平林の言葉を思い出した。本当にそうかもな。
運命はある。それを手に入れられるかは自分次第だ。
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