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「佑月がなんかおかしいんだ…。」
「おかしいって、何だよ。」
涼はまた佑月の実家に来ていた。葉月と詩月、それから健人に佑月について相談している。
「ちゃんと大事にしてるんでしょうね?」
「それはもちろん!だってかわいいし、本当に…ヤバいくらいかわいくて…。」
いろいろ思い出してうっとりとしている。
「何だよ。惚気に来たの?」
「いや、違うんだ!その、佑月、俺と結婚したくないのかもしれない…。」
自分で言った言葉に自分で傷付いているようだ。みるみる顔が青ざめてがっくりと項垂れている。
「へぇ…。佑月もやっと目が覚めたんだ。」
「なっ!何で…。そんな…。」
「まぁ、それは冗談として。何があったの?」
葉月がニヤニヤして尋ねる。詩月は興味があるのかないのかよく分からないような表情で二人のやり取りを見ていた。健人は…相変わらず詩月にくっついて夢中で匂いを嗅いでいるだけで涼の話は聞いていない。
「プロポーズは受けてくれたんだ…。すごい喜んでくれて…。」
数週間前に改めて涼は佑月にプロポーズをした。
海沿いのリゾートホテルのスイートルームで精一杯の演出をした。
部屋中を薔薇で飾り、跪いてプロポーズしたのだ。
我ながらベタな演出だと涼は思ったが、何とか自分の気持ちを伝えたくて必死だった。佑月は感激して涙を流して喜んでくれた。
やはり学生のうちに籍を入れて卒業したら式を挙げようと二人で決めた。
涼は天にも昇る気持ちだった。佑月の周りに群がるアルファにヤキモキしたが、佑月は『涼君だけ…』と。
あの成島雪也のことも尊敬してはいるが何とも思っていないと言ってくれた。
それなのになぜか最近結婚の話になると逸らされてしまう。気のせいかも知れないがその話題を避けているようにしか思えなくなってしまったのだ。
「本人に聞けば?」
無表情で話を聞いていた詩月がサラリと言う。
「そんなこと…出来ない。」
もし、結婚を嫌がられたら?
涼はおそらく一生立ち直れない。
「何でそう思うの?」
「いや、何となく…。」
「ふーん。じゃあそうなのかもね。一緒に暮らしていくうちに嫌になったのかも。涼さん、家事とか出来ないでしょ?」
確かに葉月の言う通りだ。
好きでやっている、という佑月の言葉に甘えて涼はほとんど佑月に任せてしまっている。まともに出来るのは皿洗いや味見係りくらいだろう。
それを言うと葉月と詩月が爆笑した。
「味見係り?何それ!ウケる。」
「そんなの家事に入らないでしょ!」
散々笑ったあと二人は真面目な顔になって言った。
「夫婦になるならきちんと話し合わないと。これから先ずっと一緒にいるんでしょ?」
ごもっともな意見をもらい涼は今までの自分を振り返り反省する。嫌われたくなくて肝心なことを聞けなかった。
夫婦になるなら話し合いが出来ないとダメだ。
その後も味見係りについて笑い合っている双子に礼を言って善夜家をあとにした。
「佑月、ちょっと良いか?」
夕飯後、ソファーに座ってくつろいでいる佑月に声をかけた。
「なあに?」
「佑月は俺との結婚どう考えてる?」
「え?えっと、すごく嬉しい…」
顔を真っ赤にしている。
かわいい…。そしてフェロモンも濃くなった。
本当に喜んでいるのが分かる。
涼はそのフェロモンを吸い込みほっと息を吐いた。
「でも、その、結婚の話になると…避けてるというか…何か嫌なのかと…。」
それでも怖くてしどろになってしまう。
すると佑月が目を見開いて驚きしょんぼりとした。
や、やっぱり…。嫌なのか?
心臓が早鐘のように打って痛い。涼は胸をぐっと抑えた。
「嫌、なのか?」
恐る恐る聞いてみる。
「い、嫌じゃないっ!だって、だって…。ウチには詩月が居るし、葉月だって…。」
「どういうことだ?」
佑月は今にも泣きそうだ。でも涼には佑月が何をいっているのかさっぱり分からない。
「涼君は詩月が良かったって…だからまた詩月に会ったらら…詩月には番いが居るけど、葉月はまだ…。」
「え?」
そういうことか。
佑月は涼が詩月のことを好きだったと思っているのだ。
だからまた詩月に会えば気持ちが変わってしまうのが怖くて挨拶に行く話しを避けているのだ。
確かに見合い相手に詩月を指名した。しかしそれは何というか詩月には申し訳ないが消去法みたいだものだ。
何とも思っていないし、今の涼には佑月だけだ。
でも過去の自分がしたことが佑月を悲しませている。
「佑月、よく聞いて?」
「はい。」
顔を上げた佑月の大きな瞳からポロリと涙が溢れた。それを涼はちゅうと吸う。甘くて美味しくて身体が熱くなる。
「見合いに詩月を指名したのは正直誰でも良かったからだ。強いて言うなら、みたいな気持ちだ。でも今は違う。絶対に佑月じゃないと嫌だ。」
「涼君…。」
「ごめんな?佑月に嫌な思いさせて。」
「ううん。ごめんなさい。僕がヤキモチ妬いて…、ごめんなさい。」
かわいすぎるだろ!
詩月に嫉妬していたのか!
涼は申し訳ない気持ちと同時に嬉しいと感じてしまった。
「俺がいけないんだ。でも佑月が嫉妬してくれて嬉しい。佑月は本当にかわいいな。それに実は…」
涼は詩月には何度か会っている。こっそり善夜家に行っているからだ。それを佑月に打ち明けるととても驚いていた。
「えー!いつの間に僕の家に?」
「佑月が居ない時に…。佑月の好きなものとかいろいろ聞いたり相談したりしてた。」
佑月は涼にたくさんのプレゼントをもらっていた。いつも佑月の好きな物ばかりで感心していたのだ。
「ごめん。ちょっとでも佑月に好かれたくて。」
「ううん。ありがとう。その時に詩月にも?」
「そう。もちろん会っても何とも思わなかった。俺は佑月のことで頭がいっぱいだし…。」
「涼君…。」
二人は見つめ合って恥ずかしそうに笑った。
「おかしいって、何だよ。」
涼はまた佑月の実家に来ていた。葉月と詩月、それから健人に佑月について相談している。
「ちゃんと大事にしてるんでしょうね?」
「それはもちろん!だってかわいいし、本当に…ヤバいくらいかわいくて…。」
いろいろ思い出してうっとりとしている。
「何だよ。惚気に来たの?」
「いや、違うんだ!その、佑月、俺と結婚したくないのかもしれない…。」
自分で言った言葉に自分で傷付いているようだ。みるみる顔が青ざめてがっくりと項垂れている。
「へぇ…。佑月もやっと目が覚めたんだ。」
「なっ!何で…。そんな…。」
「まぁ、それは冗談として。何があったの?」
葉月がニヤニヤして尋ねる。詩月は興味があるのかないのかよく分からないような表情で二人のやり取りを見ていた。健人は…相変わらず詩月にくっついて夢中で匂いを嗅いでいるだけで涼の話は聞いていない。
「プロポーズは受けてくれたんだ…。すごい喜んでくれて…。」
数週間前に改めて涼は佑月にプロポーズをした。
海沿いのリゾートホテルのスイートルームで精一杯の演出をした。
部屋中を薔薇で飾り、跪いてプロポーズしたのだ。
我ながらベタな演出だと涼は思ったが、何とか自分の気持ちを伝えたくて必死だった。佑月は感激して涙を流して喜んでくれた。
やはり学生のうちに籍を入れて卒業したら式を挙げようと二人で決めた。
涼は天にも昇る気持ちだった。佑月の周りに群がるアルファにヤキモキしたが、佑月は『涼君だけ…』と。
あの成島雪也のことも尊敬してはいるが何とも思っていないと言ってくれた。
それなのになぜか最近結婚の話になると逸らされてしまう。気のせいかも知れないがその話題を避けているようにしか思えなくなってしまったのだ。
「本人に聞けば?」
無表情で話を聞いていた詩月がサラリと言う。
「そんなこと…出来ない。」
もし、結婚を嫌がられたら?
涼はおそらく一生立ち直れない。
「何でそう思うの?」
「いや、何となく…。」
「ふーん。じゃあそうなのかもね。一緒に暮らしていくうちに嫌になったのかも。涼さん、家事とか出来ないでしょ?」
確かに葉月の言う通りだ。
好きでやっている、という佑月の言葉に甘えて涼はほとんど佑月に任せてしまっている。まともに出来るのは皿洗いや味見係りくらいだろう。
それを言うと葉月と詩月が爆笑した。
「味見係り?何それ!ウケる。」
「そんなの家事に入らないでしょ!」
散々笑ったあと二人は真面目な顔になって言った。
「夫婦になるならきちんと話し合わないと。これから先ずっと一緒にいるんでしょ?」
ごもっともな意見をもらい涼は今までの自分を振り返り反省する。嫌われたくなくて肝心なことを聞けなかった。
夫婦になるなら話し合いが出来ないとダメだ。
その後も味見係りについて笑い合っている双子に礼を言って善夜家をあとにした。
「佑月、ちょっと良いか?」
夕飯後、ソファーに座ってくつろいでいる佑月に声をかけた。
「なあに?」
「佑月は俺との結婚どう考えてる?」
「え?えっと、すごく嬉しい…」
顔を真っ赤にしている。
かわいい…。そしてフェロモンも濃くなった。
本当に喜んでいるのが分かる。
涼はそのフェロモンを吸い込みほっと息を吐いた。
「でも、その、結婚の話になると…避けてるというか…何か嫌なのかと…。」
それでも怖くてしどろになってしまう。
すると佑月が目を見開いて驚きしょんぼりとした。
や、やっぱり…。嫌なのか?
心臓が早鐘のように打って痛い。涼は胸をぐっと抑えた。
「嫌、なのか?」
恐る恐る聞いてみる。
「い、嫌じゃないっ!だって、だって…。ウチには詩月が居るし、葉月だって…。」
「どういうことだ?」
佑月は今にも泣きそうだ。でも涼には佑月が何をいっているのかさっぱり分からない。
「涼君は詩月が良かったって…だからまた詩月に会ったらら…詩月には番いが居るけど、葉月はまだ…。」
「え?」
そういうことか。
佑月は涼が詩月のことを好きだったと思っているのだ。
だからまた詩月に会えば気持ちが変わってしまうのが怖くて挨拶に行く話しを避けているのだ。
確かに見合い相手に詩月を指名した。しかしそれは何というか詩月には申し訳ないが消去法みたいだものだ。
何とも思っていないし、今の涼には佑月だけだ。
でも過去の自分がしたことが佑月を悲しませている。
「佑月、よく聞いて?」
「はい。」
顔を上げた佑月の大きな瞳からポロリと涙が溢れた。それを涼はちゅうと吸う。甘くて美味しくて身体が熱くなる。
「見合いに詩月を指名したのは正直誰でも良かったからだ。強いて言うなら、みたいな気持ちだ。でも今は違う。絶対に佑月じゃないと嫌だ。」
「涼君…。」
「ごめんな?佑月に嫌な思いさせて。」
「ううん。ごめんなさい。僕がヤキモチ妬いて…、ごめんなさい。」
かわいすぎるだろ!
詩月に嫉妬していたのか!
涼は申し訳ない気持ちと同時に嬉しいと感じてしまった。
「俺がいけないんだ。でも佑月が嫉妬してくれて嬉しい。佑月は本当にかわいいな。それに実は…」
涼は詩月には何度か会っている。こっそり善夜家に行っているからだ。それを佑月に打ち明けるととても驚いていた。
「えー!いつの間に僕の家に?」
「佑月が居ない時に…。佑月の好きなものとかいろいろ聞いたり相談したりしてた。」
佑月は涼にたくさんのプレゼントをもらっていた。いつも佑月の好きな物ばかりで感心していたのだ。
「ごめん。ちょっとでも佑月に好かれたくて。」
「ううん。ありがとう。その時に詩月にも?」
「そう。もちろん会っても何とも思わなかった。俺は佑月のことで頭がいっぱいだし…。」
「涼君…。」
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