善夜家のオメガ

みこと

文字の大きさ
43 / 110
詩月

14

「え?ダメなわけない!詩月と番いに?」

じっと詩月を見つめる。

「うん。」

「半月後?」

「う、うん。…うわっ!」

健人が詩月に抱きついた。
三歳の頃から願っていたことが半月後に叶うのだ。ぼーっとしていたのはあまりの嬉しさに頭がついていかなかっただけだった。

「詩月っ!詩月っ!」

「く、苦しい、健人っ、」

詩月が潰れそうなくらいぎゅうぎゅう抱きしめ、しかも泣いている。

「落ち着けって言ってるだろっ!」

葉月にまた頭を叩かれてやっと詩月を離した。

「全くおまえは…。詩月のこととなると本当にポンコツだな。」

「へへへ。」

呆れた顔で葉月に言われるが嬉しそうだ。

「健人、これは三人の秘密の計画だ。健人のパパとママにも言えない。僕たちは勝手に番いになるんだ。しかもこんなタイミングで…。健人にもいろいろ考えがあるかもしれないのに善夜の家のごたごたに巻き込んで番いになる。健人に申し訳ない…」

謝ろうとする詩月を健人が制した。

「何言ってるんだよ。タイミング?そんなのどうでもいい。でもまぁ、強いて言うなら今だよ。今がそのタイミングだ。俺は詩月と番いになれるんだったら何だっていい。親に勘当されても、詩月の親に恨まれてもそんなのどうってことない。」

「健人…。」

「詩月と番い。嬉しくて死にそうだ。」

にっこり笑って詩月を見る。

「俺、この前の詩月の発情期、一緒に居られなくて辛かった。心配で心配でおかしくなりそうだったよ。他のアルファにうなじを噛まれるかもしれない。そう考えると怖くて眠れなかった。それに詩月も苦しかったんだろ?詩月が苦しんでるのに側にいてやれない。あと何度そんな思いをするのか、詩月にさせるのかって考えただけで辛かったよ。俺は詩月と今すぐ番いになりたい。」

「うん…。」

涙をこぼす詩月を健人が優しく抱きしめる。
健人は何度も何度も詩月の頭にキスをした。

「あー、えー、盛り上がってるところすいませんが…。」

すっかり二人の世界に入っていた詩月と健人は慌てて葉月の方を見た。

「運良くあと少しで夏休みだ。詩月が発情期に入る少し前に二人でどこかにこもるんだ。で、発情期が来たら番いになる。避妊は、うーん、取り敢えずした方がいいと思うけど。」

「そうだな。子どもはいつか欲しいけど、もう少し二人きりで居たい。アルファの避妊薬は何とかなる。それで良いか?詩月。」

「うん。」

「あとはこもる場所なんだよなぁ。誰も来なくてバレない場所…。うちの別荘は無理だな。」

葉月が考え込む。高校生の彼らにできることは限られている。

「あ!ある。うってつけの場所がある!」

「健人?」

「死んだじいちゃんのアトリエ。長野の山奥にもあるんだ。そこに行こう。電気も自家発電で温泉が湧いてるんだ。井戸水もある。もちろん飲める水だ。じいちゃんが創作に没頭したい時に使ってた。だいぶ放っておいたから俺、来週様子を見に行ってくる。詩月が安心して過ごせるように整えてくるよ。」

「よし。場所は確保出来たな。僕は姉ちゃんに連絡して招待状を送ってもらって、飛行機の予約と…。」

葉月がスマホでいろいろ調べている。健人もそれを見て同じようにスマホで何か確認し始めた。

「僕は?何をしたらいい?」

詩月が健人に尋ねるがにこりと微笑まれて額にキスをされた。

「詩月は何も心配しなくていい。身体だけ大事にしてくれ。準備は俺がするからな。」

力強く健人に言われて詩月はこくりと頷いた。



翌日、真知子に見合いをすると返事をして出来るだけ大人しく過ごした。
真知子は上機嫌でいつものように家を留守にすることが増えた。親戚たちにも天沢と婚姻関係を結ぶとふれ回っているようだった。
三人は準備をしその日に備える。そしていよいよ夏休みに突入した。

「少し熱が上がってきたかも…。」

念のため詩月は基礎体温をつけている。本当かどうかは分からないが、発情期近くになると体温が上がると言われているからだ。
善夜のオメガは発情期はピタリと二ヶ月で来る。しかし詩月がそれに当てはまるかどうかは分からない。
一か八かの賭けだ。
あと三日でちょうど二ヶ月。
真知子は明日から香港に行くと言っていた。

「母さんが出かけたら僕たちも行く。」

「そうだな。こっちは任せて。」

葉月は真知子から預かった地下室の鍵をクルクル回しながら答えた。
真知子が不在時の詩月の対応は葉月と章子に任されている。

「怪しまれないように大人しくしてたからね。」

「うん。健人は?準備できてるって?」

「もちろん。ものすごく張り切ってる。最近あまり会えてないけど泣き言言わずに頑張ってるよ。」

「そりゃそうだ。もうすぐ番いになれるんだから。」

念願の番いなるためだ。それくらい我慢するだろう。
真知子に勘付かれたらおしまいだ。健人も極力善夜家に近づかないようにしていた。
いよいよ明日。
二人は最終確認をして明日に備えた。

朝になり朝食を摂り真知子が出掛けるのを待っていたが、一向にその気配がない。
葉月が痺れを切らして真知子に聞いた。

「母さん、今日から香港に行くんじゃないの?」

「あぁ、それね、なくなったの。あちらで会う約束をしていた方が体調を崩されてね。急に予定が空いちゃったわ。」

いつになくのんびりとコーヒーを飲みながら言う真知子に葉月と詩月は青ざめながら顔を見合わせた。




感想 122

あなたにおすすめの小説

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。