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「あ、これも楓に似合うな。」
潤はデパートの中を見て回る。楓に似合いそうなものを手に取ってはバイヤーに渡す。
「五十嵐様、靴などはいかがでしょう。冬物も入り始めました。」
「え?是非それを見せてくれ。」
恭しく頭を下げるバイヤーが近くの店員に声をかけたくさんの靴が用意された。革靴、スニーカー、ブーツ、全て楓のサイズだ。
潤はそれを一通り見る。どれもブランドの新作で値段もかなりのものだ。
「うーん、どれも良いな。全部もらおう。」
「ありがとうございます!」
買った物は家に送るようバイヤーに伝えて澤田が運転する車に乗った。
「今日は楓様に断られたのですか?」
「…。」
バックミラー越しに揶揄うように言われ、ムスッとする。
楓とは順調だ。楓のフェロモンは会うたびに濃くなる。潤に好意を持っている証拠だ。
しかしいつも土日のどちらかにしか会うことができない。課題やら予習やらで断られてしまう。
「仕方ないだろ。勉強も大事だ。」
そうは言ってもやはり寂しい。
潤は楓をオメガ学園に迎えに行くようになってから何人かのアルファと顔見知りになった。
その中にはコーヒーショップでオメガ学園の話しを聞かせてもらったアルファたちもいる。
二人はK大に通う二年生でオメガは二人とも三年生だと教えてくれた。
毎週学園から連れ出し、彼らが各々所有するマンションで過ごしたり、旅行に行ったりしていた。
卒業したら籍を入れて番うと言っている。
他のアルファたちも大体がそうだ。
社会人のアルファは楓と同じクラスのオメガが恋人でメロメロのようだ。
毎週自宅に連れて帰り、仲良く過ごしていると聞いた。
楓は自分と一緒に過ごしたくないのだろうか。
やはり四年も放っておいたので信頼できないのだろうかと不安になる。
「楓様に聞いてみてはいかがです?何か事情がお有りなのかもしれませんよ。」
「…ああ。」
うじうじ悩んでも仕方ない。自分たちは上手く言っている。
来週は潤のマンションの内覧会に行き、その後家具屋とインテリアショップに行く予定だ。
楓の気に入る部屋にしたいので一緒に行こうと誘うととても喜んでくれた。
その時に聞いてみよう。そのマンションにいつかは泊まってもらいたい。
潤はそう決めてスマホの待ち受けを見つめた。
「すごいっ!あっちに東京タワーが見える!」
「夜はライトアップされてとても綺麗ですよ。」
完成した潤のマンションは片側全面窓になっていて都心が一望できる。
楓は全てに感動しながら潤と業者と部屋の中を見て回った。
「ここが寝室だから後でベッドを見に行こうな。」
「うん。」
潤は業者からいろいろ説明を受けている。楓は大きな窓から外を眺めていた。
楓は卒業したらここに住むのだ。先ほど潤にそう言われた。
まさかこんな日が来るとは。将来に不安しかなかったのに。
すごく幸せだけど、やはり律のことが気になる。
律にも素敵な相手が現れると良い。
「楓?どうした?」
「ううん。何でもない。すごく良いところだね。」
「良かった。気に入ってもらえて。」
二人は家具を見に行き、インテリアショップにも寄った。
どちらの店も楓が目を剥く値段のものばかりだが、潤は躊躇うことなくいろいろ購入していた。
その後、個室のフレンチでランチを摂る。
楓にはどれも初めての料理で本当に美味しかった。
食後の紅茶を飲んでいると、潤が真剣な顔で楓を見つめている。
「楓、一つ良いか?」
「え、うん。」
「俺と居ると疲れるか?」
「ど、どうして?」
「週末、いつも一日しか会ってくれないから…。」
楓は驚いて潤を見た。
毎週末、潤に誘われるが土日のどちらかしか会わない。律が居るからだ。
それを潤は知らないのでそう思わせてしまった。
こんなに良くしてくれるのに申し訳なく思う。
潤と一緒に居たくないはずなんですないのに…。
「違う。違うんだけど、僕…、その…。」
楓は思い切って律のことを話した。
赤ちゃんの頃から一緒に過ごし、楓にとってみたら唯一の家族だ。
律も同じように100%のアルファとマッチングしたこと、そして今もそのアルファから連絡はなく、再マッチングを待っていることを話した。
「週末、クラスメイトはみんな出掛けてるんだ。だから僕が居ないと律は本当に一人なっちゃう。」
あの寮に一人残される寂しさは想像できる。
楓だってついこの間まで律と一緒にあそこに居たのだ。
「そっか。そうだったんだな。楓、本当にごめん。」
潤は楓が抱えている暗闇のようなものを知ることができた。
いつも楽しそうにしてはいるが、時々ふととても寂しそうな顔をする。おそらく律のことを考えているのだろう。
そして自分はやはり楓に辛い思いをさせていたのだ。
この四年間の自分が腹立たしい。マッチングに浮かれてはしゃいでいた自分。楓がこんな寂しい思いをしていたのに。でもそれを乗り越えられたのも律がいたからだ。
「潤くんが謝ることじゃないよ。」
「いや、俺が悪い。その律って子は再マッチングするのか?」
「うん。その予定。」
100%の相手。
アルファならその相手を逃したら死んでも死に切れない。人のことを言えないが、律の相手のアルファは一体何をしているのだろう。
もしかして自分と同じように待っているのかもしれない。
知らずに律が他のアルファと再マッチングしてしまったら…。
潤は目の前の楓を見つめる。
可愛くて、良い匂いで、楓こそが自分のオメガだ。他のオメガなんて目に入らない。
これが100%のマッチング相手。
楓のために自分が出来ることはないか考えた。
潤はデパートの中を見て回る。楓に似合いそうなものを手に取ってはバイヤーに渡す。
「五十嵐様、靴などはいかがでしょう。冬物も入り始めました。」
「え?是非それを見せてくれ。」
恭しく頭を下げるバイヤーが近くの店員に声をかけたくさんの靴が用意された。革靴、スニーカー、ブーツ、全て楓のサイズだ。
潤はそれを一通り見る。どれもブランドの新作で値段もかなりのものだ。
「うーん、どれも良いな。全部もらおう。」
「ありがとうございます!」
買った物は家に送るようバイヤーに伝えて澤田が運転する車に乗った。
「今日は楓様に断られたのですか?」
「…。」
バックミラー越しに揶揄うように言われ、ムスッとする。
楓とは順調だ。楓のフェロモンは会うたびに濃くなる。潤に好意を持っている証拠だ。
しかしいつも土日のどちらかにしか会うことができない。課題やら予習やらで断られてしまう。
「仕方ないだろ。勉強も大事だ。」
そうは言ってもやはり寂しい。
潤は楓をオメガ学園に迎えに行くようになってから何人かのアルファと顔見知りになった。
その中にはコーヒーショップでオメガ学園の話しを聞かせてもらったアルファたちもいる。
二人はK大に通う二年生でオメガは二人とも三年生だと教えてくれた。
毎週学園から連れ出し、彼らが各々所有するマンションで過ごしたり、旅行に行ったりしていた。
卒業したら籍を入れて番うと言っている。
他のアルファたちも大体がそうだ。
社会人のアルファは楓と同じクラスのオメガが恋人でメロメロのようだ。
毎週自宅に連れて帰り、仲良く過ごしていると聞いた。
楓は自分と一緒に過ごしたくないのだろうか。
やはり四年も放っておいたので信頼できないのだろうかと不安になる。
「楓様に聞いてみてはいかがです?何か事情がお有りなのかもしれませんよ。」
「…ああ。」
うじうじ悩んでも仕方ない。自分たちは上手く言っている。
来週は潤のマンションの内覧会に行き、その後家具屋とインテリアショップに行く予定だ。
楓の気に入る部屋にしたいので一緒に行こうと誘うととても喜んでくれた。
その時に聞いてみよう。そのマンションにいつかは泊まってもらいたい。
潤はそう決めてスマホの待ち受けを見つめた。
「すごいっ!あっちに東京タワーが見える!」
「夜はライトアップされてとても綺麗ですよ。」
完成した潤のマンションは片側全面窓になっていて都心が一望できる。
楓は全てに感動しながら潤と業者と部屋の中を見て回った。
「ここが寝室だから後でベッドを見に行こうな。」
「うん。」
潤は業者からいろいろ説明を受けている。楓は大きな窓から外を眺めていた。
楓は卒業したらここに住むのだ。先ほど潤にそう言われた。
まさかこんな日が来るとは。将来に不安しかなかったのに。
すごく幸せだけど、やはり律のことが気になる。
律にも素敵な相手が現れると良い。
「楓?どうした?」
「ううん。何でもない。すごく良いところだね。」
「良かった。気に入ってもらえて。」
二人は家具を見に行き、インテリアショップにも寄った。
どちらの店も楓が目を剥く値段のものばかりだが、潤は躊躇うことなくいろいろ購入していた。
その後、個室のフレンチでランチを摂る。
楓にはどれも初めての料理で本当に美味しかった。
食後の紅茶を飲んでいると、潤が真剣な顔で楓を見つめている。
「楓、一つ良いか?」
「え、うん。」
「俺と居ると疲れるか?」
「ど、どうして?」
「週末、いつも一日しか会ってくれないから…。」
楓は驚いて潤を見た。
毎週末、潤に誘われるが土日のどちらかしか会わない。律が居るからだ。
それを潤は知らないのでそう思わせてしまった。
こんなに良くしてくれるのに申し訳なく思う。
潤と一緒に居たくないはずなんですないのに…。
「違う。違うんだけど、僕…、その…。」
楓は思い切って律のことを話した。
赤ちゃんの頃から一緒に過ごし、楓にとってみたら唯一の家族だ。
律も同じように100%のアルファとマッチングしたこと、そして今もそのアルファから連絡はなく、再マッチングを待っていることを話した。
「週末、クラスメイトはみんな出掛けてるんだ。だから僕が居ないと律は本当に一人なっちゃう。」
あの寮に一人残される寂しさは想像できる。
楓だってついこの間まで律と一緒にあそこに居たのだ。
「そっか。そうだったんだな。楓、本当にごめん。」
潤は楓が抱えている暗闇のようなものを知ることができた。
いつも楽しそうにしてはいるが、時々ふととても寂しそうな顔をする。おそらく律のことを考えているのだろう。
そして自分はやはり楓に辛い思いをさせていたのだ。
この四年間の自分が腹立たしい。マッチングに浮かれてはしゃいでいた自分。楓がこんな寂しい思いをしていたのに。でもそれを乗り越えられたのも律がいたからだ。
「潤くんが謝ることじゃないよ。」
「いや、俺が悪い。その律って子は再マッチングするのか?」
「うん。その予定。」
100%の相手。
アルファならその相手を逃したら死んでも死に切れない。人のことを言えないが、律の相手のアルファは一体何をしているのだろう。
もしかして自分と同じように待っているのかもしれない。
知らずに律が他のアルファと再マッチングしてしまったら…。
潤は目の前の楓を見つめる。
可愛くて、良い匂いで、楓こそが自分のオメガだ。他のオメガなんて目に入らない。
これが100%のマッチング相手。
楓のために自分が出来ることはないか考えた。
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