100%のオメガ

みこと

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「はじめまして。楓の友達の律です。よろしくお願いします…。」

楓の影に隠れるように潤に挨拶をする。
今日は三人で出掛けるのだ。律が外出申請を出すとあっさりと受理された。楓が言った通り、潤が何かしら働きかけてくれたのだろう。
律のリクエストで映画を見てゲームセンターに行く。そしてその近くにある大きな本屋で律の好きな世界遺産のパズルを買って帰ろうということになった。

「はじめまして。五十嵐潤です。楓から律のことはいろいろ聞いてるから。緊張しなくて良いからな。」

「…はい。」

人見知りで内気な律は最初のうちは楓の影に隠れていたが潤と楓が律に優しく話しかけるうち、徐々に打ち解けていった。
潤と楓は必ず律に話を振ってくれるし、二人にしか分からない話題は口にしなかった。

「面白かった!ありがとう!潤さん、楓!」

律が観たがっていた映画は今話題のアニメだ。外出ができないので映画館に行くことは諦めていた。
パンフレットを胸に抱いて目を輝かせている。
そんな律を見て楓も嬉しそうだ。
その後、潤行きつけの焼き肉に行きランチにする。ここも個室で昼でもかなりの値段だ。潤がたくさん注文し、楓も律も美味しい美味しいと言って食べた。



「この先に大きなゲームセンターがあるって。」

お腹いっぱいになった三人は歩いてゲームセンターに向かう。
道沿いのそこは若者で混み合っていた。

「隣が本屋で三階にパズルコーナーがあるみたいだね。」

「うん。絶対買って帰る!アユタヤ遺跡群とタージマハルどっちにしよう!」

「ふふ。見てから決めよう?とりあえず、遊ぼっか?」

楓が律を誘いゲームセンターの中に入った。

「律、どれからする?」

「うーん、たくさんあるね。あのUFOキャッチャーやってみたい!」

律が指差したのは入り口にあるUFOキャッチャーで、今観てきた映画のキャラクターのぬいぐるみが景品になっている。

「よし、やろう。」

「うん!」

楓と律が遊び始めたのを潤が後ろから見守る。楓の楽しそうな横顔を見て潤も幸せな気持ちになった。そして律にも良い相手が見つかるといい。
今日一日過ごしただけだが、律も素直で可愛いやつだと思った。小動物のようなルックス、小さな身体はきっとアルファの庇護欲を掻き立てるだろう。楓が弟のように律を可愛がる気持ちが分かる。律にも幸せになって欲しい、潤も心からそう思った。

「潤くん!取れたよ!」

「そうか。良かったな。律も取れたのか?」

「はい。」

小さなぬいぐるみをたくさん胸に抱いている。本当に嬉しそうだ。

「律、あっちのもやってみようよ。」

「あ、うん。待って。」

楓が駆け出し道路沿いのゲーム機の前に行く。律は取った景品を袋に詰めるのに手間取っていた。

「あ!これ、僕が欲しかったやつ。」

「ん?どれだ?」

楓が一台のゲーム機を覗き込んだ。潤もそのゲーム機に近づき中を覗く。可愛い猫のキャラクターだ。

「よし、俺が挑戦する。楓、どれが欲しい?」

「えっと、あの右側の黄色いやつ。しましまの方。」

「分かった。任せろ。」

そう言ってゲームをやり始めた潤はあっという間に楓の欲しがっていたキャラクターのキーホルダーを取ってくれた。

「ありがとう!潤くん、すごい上手だね。律、見て潤くんが…律?」

律がいた方を見た楓の顔色が変わる。潤も咄嗟に楓の視線を追った。そこには胸を押さえて座り込んでいる律がいた。顔は紅潮し、息も荒く苦しそうだ。
律の前には今取ったばかりのぬいぐるみが散らばっていた。

「律⁈どうした?」

「律っ!」

二人が律の側に駆け寄り抱き起こそうとする。
律は何も言わず苦しそうに息を吐くだけだ。

「律、どうしたの⁈潤くん、律が…」

楓が潤を見上げると、潤は律ではなくゲームセンターの外を目を見開いて凝視していた。

「潤くん⁉︎どうしたの?」

ただならぬ潤の様子に楓もその視線の先を見る。
そこには一人の男が立っていた。
背の高い男。
淡い茶色の髪に美しい容貌。その男もまたこちらを見て驚き固まっている。

「一条…。」

潤の口からポツリと漏れた言葉に楓は耳を疑う。

「え?今、何て?」

一条?今そう言った?

「楓…苦しい。身体が変…」

律が楓の腕を掴むとハッと我に帰る。

「律?大丈夫?潤くんっ!」

「あ、ああ。律、しっかりしろ。今、澤田を呼ぶ。」

潤も我に帰り急いで電話をした。今にも倒れ込みそうな律を抱き上げ、車が入れる大通りへ向かった。

「律、しっかり!」

「大丈夫か?楓、今すぐ律を医者に診てもらおう。」

「う、うん。」

早足でその場を去りながら潤はチラリと一条俊哉を見る。彼はまだ固まったままその場に立ち尽くしていた。





「ふぅ、楓、大丈夫か?」

「…うん。」

病院のロビーのソファーに座って一息ついた。
土曜日は休診日なので薄暗く人は居ない。潤の父の知り合いの病院に運び診てもらった。
律はフェロモンの異常を起こし、発情期に似た発作で倒れたと言われた。

「律は数日で退院できるって。学園には俺が連絡しておく。」

「うん。ありがとう。…潤くん、あの人、あそこに立ってた人…。」

楓は律が倒れたら場面を思い出していた。道路から律を凝視する男。潤は確かに一条と言っていた。

「ああ。アイツが一条俊哉だ。律の100%のマッチング相手。」

「やっぱり…。」

「律はそれで発作を起こしたらしい。何の心構えもなく100%の相手が近くに現れた。律は元々身体が弱いから相手のフェロモンに身体が驚いて倒れたって。」

「そうなんだ…。」

何とも言えない気持ちで楓は俯く。律を拒絶した相手と出会ってしまったのだ。


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