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第三章 仲間
34歳の主役の座を奪うロレンツェ
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「ナオ様ってすごい!もともと興味を持ってナオ様の所にいらしたのでしょうが、これは完全にトリコにしましたね!他国の王子を!!!」
「ちょっと、クリスティーヌ!声が大きい!周りに聞こえる!!」
ナオは慌ててクリスティーヌの口を塞いだ。
回廊から執務室に戻る途中にクリスティーヌがはしゃぐ。
「やるやるとは思ってましたがナオ様のスキンシップがあれほどまでとは。」
ロレンツェも感心するようにウンウン頷いている。
「もう。確かにやり過ぎたわ。ちょっと感極まっちゃったみたい。
確かに異性にはダメよね。」
あの後、ブラハは、
「また明日来ます」
とだけ言い残して逃げるように去って行った。
「でも・・・なんかキュンとした・・・」
「あー!ナオ様もまんざらでもないですね!」
「囃し立ててはダメよ!クリスティーヌ!」
クリスティーヌはロレンツェからげんこつをいただいた。
翌日、ブラハから有益な情報をいくつか得る。
特に有益だったのが、帝議会の派閥についてだ。誰を味方につければいいかが見えてくる。
だが、一番に味方につけなければいけないのが今は皇城から追い出されてしまった人。
十数年前までの侵略戦争を反対していた穏健派の重鎮、フィリップ・パスカルということだ。
宰相を務めていたフィリップが更迭されてから帝国は次第に腐っていったという。
影響力の大きい人物のため、味方につければ帝議会内外での力を獲得することができる。
早速、その日のうちにナオはフィリップに会いに出発していた。
フィリップは皇都から3キロほど離れた東の山の中に住んでいる。
道中は馬車で進む。ロレンツェと騎士二人が護衛として馬で付き添っている。
その一団を遠くの丘から見下す者たちがいた。
「獲物がきたよーん・・・」
ナオの一団は山道に入った。木々がうっそうと生い茂る。
結構険しい斜面で馬車の足が鈍る。
そこに、ヒュン!という風を切る音と共に縄のついた矢が馬車の車輪に絡まる。
車輪をロックされ、馬車は横転はしなかったものの右に大きく振られ、急停車した。
「ナオ様!ご無事ですか?!」
騎馬のロレンツェが馬車に急いで駆け寄り、ドア越しに声を掛ける。
「いたぁい・・・。頭打ったぁ・・・でも大丈夫・・・。」
「ご無事で何よりです。
しかし、これは大変なことになりました。盗賊です。囲まれています。」
馬車を囲むロレンツェと二人の騎士を十人程の集団がさらに取り囲んでいた。
「さあさあ、貴族の方々よっ。
自分で身ぐるみおいて逃げるか、痛めつけられて死ぬか、好きな方選びな。」
盗賊の首領らしき人間が通告してきた。
「ナオ様。危ないので絶対に出ないでください。盗賊は我々で撃退します。」
馬車のドアについたガラスの小窓から覗くナオにロレンツェは言った。
「はははは!!今の聞こえたか?俺たちを撃退するだってよ!」
「ありがとう。お決まりのセリフを言ってくれて」
次の瞬間にロレンツェは馬から飛び降りていた。
抜刀した瞬間に盗賊たちが持つ、ナイフ、剣を弾き飛ばし、弓の弦を切る。
そして剣の柄で首筋を殴り、失神させていた。
鮮やかに、そして一瞬でロレンツェは七人を打ち倒していた。
「ばっばかな!!」
「まだやるか?やるなら全員捕まえて投獄するぞ?」
「ばかやろう!やらねえよ!覚えてやがれ!!」
盗賊はこれもお決まりな捨てゼリフを吐き、気絶した仲間を抱えて森の中に消えていった。
「ロレンツェ!すごーい!!!!!」
馬車からナオが感動して飛び出してくる。
「ははは。昔取ったなんとかというものです。大した事ではありません。」
二人の騎士たちもきらきらした目でロレンツェを見ていた。
それから馬車を直し、フィリップの屋敷に到着する。
すでに太陽はだいぶ傾いていた。
「ちょっと、クリスティーヌ!声が大きい!周りに聞こえる!!」
ナオは慌ててクリスティーヌの口を塞いだ。
回廊から執務室に戻る途中にクリスティーヌがはしゃぐ。
「やるやるとは思ってましたがナオ様のスキンシップがあれほどまでとは。」
ロレンツェも感心するようにウンウン頷いている。
「もう。確かにやり過ぎたわ。ちょっと感極まっちゃったみたい。
確かに異性にはダメよね。」
あの後、ブラハは、
「また明日来ます」
とだけ言い残して逃げるように去って行った。
「でも・・・なんかキュンとした・・・」
「あー!ナオ様もまんざらでもないですね!」
「囃し立ててはダメよ!クリスティーヌ!」
クリスティーヌはロレンツェからげんこつをいただいた。
翌日、ブラハから有益な情報をいくつか得る。
特に有益だったのが、帝議会の派閥についてだ。誰を味方につければいいかが見えてくる。
だが、一番に味方につけなければいけないのが今は皇城から追い出されてしまった人。
十数年前までの侵略戦争を反対していた穏健派の重鎮、フィリップ・パスカルということだ。
宰相を務めていたフィリップが更迭されてから帝国は次第に腐っていったという。
影響力の大きい人物のため、味方につければ帝議会内外での力を獲得することができる。
早速、その日のうちにナオはフィリップに会いに出発していた。
フィリップは皇都から3キロほど離れた東の山の中に住んでいる。
道中は馬車で進む。ロレンツェと騎士二人が護衛として馬で付き添っている。
その一団を遠くの丘から見下す者たちがいた。
「獲物がきたよーん・・・」
ナオの一団は山道に入った。木々がうっそうと生い茂る。
結構険しい斜面で馬車の足が鈍る。
そこに、ヒュン!という風を切る音と共に縄のついた矢が馬車の車輪に絡まる。
車輪をロックされ、馬車は横転はしなかったものの右に大きく振られ、急停車した。
「ナオ様!ご無事ですか?!」
騎馬のロレンツェが馬車に急いで駆け寄り、ドア越しに声を掛ける。
「いたぁい・・・。頭打ったぁ・・・でも大丈夫・・・。」
「ご無事で何よりです。
しかし、これは大変なことになりました。盗賊です。囲まれています。」
馬車を囲むロレンツェと二人の騎士を十人程の集団がさらに取り囲んでいた。
「さあさあ、貴族の方々よっ。
自分で身ぐるみおいて逃げるか、痛めつけられて死ぬか、好きな方選びな。」
盗賊の首領らしき人間が通告してきた。
「ナオ様。危ないので絶対に出ないでください。盗賊は我々で撃退します。」
馬車のドアについたガラスの小窓から覗くナオにロレンツェは言った。
「はははは!!今の聞こえたか?俺たちを撃退するだってよ!」
「ありがとう。お決まりのセリフを言ってくれて」
次の瞬間にロレンツェは馬から飛び降りていた。
抜刀した瞬間に盗賊たちが持つ、ナイフ、剣を弾き飛ばし、弓の弦を切る。
そして剣の柄で首筋を殴り、失神させていた。
鮮やかに、そして一瞬でロレンツェは七人を打ち倒していた。
「ばっばかな!!」
「まだやるか?やるなら全員捕まえて投獄するぞ?」
「ばかやろう!やらねえよ!覚えてやがれ!!」
盗賊はこれもお決まりな捨てゼリフを吐き、気絶した仲間を抱えて森の中に消えていった。
「ロレンツェ!すごーい!!!!!」
馬車からナオが感動して飛び出してくる。
「ははは。昔取ったなんとかというものです。大した事ではありません。」
二人の騎士たちもきらきらした目でロレンツェを見ていた。
それから馬車を直し、フィリップの屋敷に到着する。
すでに太陽はだいぶ傾いていた。
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