34歳独身女が異界で愛妾で宰相で

アマクサ

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第五章 酒精

34歳はマグロ・・・いえ、ハンター!

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「まもなくコラシオ島の港に着きます!出迎えがいるようです!」

 スタインベルグ王国の軍船の船乗りが叫ぶ。
軍船は船着き場に入り、ナオたちは下船した。
 出迎えにコラシオ島の豪族ウーゾ・ニエルキオらが出迎えに来ていた。

「スタインベルグ王国ブラハ・スタインベルグ殿下、並びにオルネア帝国宰相ナオ・クレルモン=フェラン様。わざわざのお越しをありがとうございます。
 私はコラシオの豪族筆頭ウーゾ・ニエルキオと申します。宜しくお願いいたします。
しかしながら、面白いご同伴でございますなあ。」

 豪族ウーゾは二人を見て言った。

「ウーゾ・ニエルキオ殿。こちらこそよろしくお願いいたします。
 私は陛下の許可を得て、諸国を外遊している身です。今はオルネア帝国にお世話になっております。縁あってこうしてナオ殿とも行動を共にしております。」

「左様でございましたか。ささっ、立ち話は何ですのでどうぞ我が邸宅においでください。
騎士の方々もお疲れでしょう。皆さまもどうぞ我が邸宅へ。」

「ありがとうございます。皆喜びます。」

 代表でしてブラハが礼を言う。
 下船してくる騎士。整備の船乗りや船長を残して他は下船する。
 降りてきた海賊の娘レルミタを見てウーゾがギョッとする。

「ナオ様。あちらのタトゥーの入った女性は・・・?」

「ええ、タリス島の族長の娘です。しばらく面倒を見ることになりまして。」

「なんと!やはりタリスの!」

「はい。ここへ来る途中にオルネア帝国とタリス島は友好関係を結びました。
タリスの民はもはや海賊ではありません。オルネア帝国が抱える海軍外人部隊となります。
 もし過去に遺恨がありましたら、私の名に免じてお許しください。」

「しょ・・・・承知仕りました。」

 ウーゾは全く納得できないといった顔だが、了承した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「さあさあ!おのおの方、存分にお召し上がりくだされ!
コラシオの歓迎の宴でございますれば!!」

 ウーゾの邸宅は、というかもはや宮殿である。
この地の特徴である真っ白なレンガで組み上げられた邸宅は規模が途方もない。
 外門から庭をしばらく歩いた後、やっと見えてきた本館。
2階立てのそれは横を見ても端がわからないほど大きい。そして、それと別に本館右手に別館と思われる建物も立っている。

 その大きな本館の巨大なボールルームにすでに宴の用意がしてあった。
主賓卓として中央奥に円卓が用意され、それに向かって水平に長テーブル、そして椅子が配される。
全てにホワイトクロスが掛けられ、二十メートルはあろうか、テーブルの端から端までランナーと呼ばれる豪華に見せる装飾の絹織物がテーブルを走り、垂れ掛けられている。
 全ての席に銀器のカトラリーが何種類も並ぶ。
軍船を下船した人数を遥かに超える席の用意がある。人数がわからなかったため、できる限りの席を用意したとの事。
 さながら王族の晩餐会である。 
普段は下級騎士はこのような場所に列席することはできない。
 案内されたスタインベルグ王国の騎士、公式施設部隊オーパス・ワンの騎士の半数以上が見たこともない豪華さに驚きを隠せなかった。
 当然、ロレンツェは提供することはあっても、歓待を受けるのは初めてで結構緊張してた。
ちゃっかり、ロレンツェだけブラハとラヴェルと共に主賓卓入り込んでいる。

「さあ、お飲みくだされ。
我がコラシオ島の名産のワインですじゃ。
ブラハ殿下はこのワインをかなり気に入って下さって、毎年新酒ができたらスタインベルグ王国までお運びしている次第ですじゃ。」

「そうなんです。
この燦々と降り注ぐこの海の太陽を思わせる潮風の風味がたまらなくいいんです。
やはり現地で飲むとまた格別!
 なぜこの様な風味がつくかといいますと―――ペラペラペラ」

「なるほど、これがコラシオ産ワインですか・・・。確かにすばらしい。」

 饒舌にワインを語るブラハを養護するようにラヴェルが被せた。盟約は果たされている。

「いかがですか、ナオ殿?」

「ええ、確かに素晴らしいワインですわ。
さらにはお料理が素晴らしいです。突然押しかけてしまったわたくし共にこの様なご用意をして下さって感激しております。
 これだけの量と質を急に揃えるのは、並外れたお力をかけなければ難しいでしょう。
 大変なご歓待ありがとうございます。」

「さすがはナオ殿です。ウーゾ殿はこのコラシオ産ワインの商いで大成功された方なのです。
各国の王族はみんな彼の顧客ですよ。」

「そういえば、オルネア帝国の皇宮のワイン蔵にこのワインが保管されていたのを見た気がします。」

 ブラハを養護するようにラヴェルが被せた。盟約は果たされている・・・。

「ところでウーゾ様。この美味しいお魚はなんですか?マグロ?」

 長方形にカットされたそれは表面を香ばしく炙ってあり、中はレアでしっとりとしていて鮮やかな赤色。その上に赤や黄のパプリカを細かく刻んで入れた香草のソースが掛けられている。

「おお!ナオ様、さすがよくご存じですな!
 この魚はマズーロといいまして西の果てロレアン共和国の遥か遠い海でとれる巨大魚ですじゃ。
煮て良し、焼いて良し、さらには日をおいても熟成してさらに美味しくなるという万能な魚です。
 しかし大きな魚の為仕留めるのが難しく、非常に珍重されております。
沿岸の街でなければ見ることはかないますまい。」

『うん、これはやはりマグロだな。しかも貴重とは・・・。
ロレアン共和国の沖ということならば・・・タリス島のみんなに捕りにいかせよう』 
 オルネア帝国は陸地が多く、皇都も内陸だ。
当然、魚は貴重だ。魚よりも肉や穀物主体の食生活になる。
 保存がきくマグロに出会えたのは、ナオにとって非常に幸運だった。しかも本人も好き。
 ナオの目に悪い輝きが浮かぶ。商売にしようと企むのであった。

「そうですね、ナオ殿!
このマズーロなる魚とコラシオ産ワインの相乗効果マリアージュといったらたまらないですね!
さらに掛かっている香草のソースがまたワインの余韻とあって―――ペラペラペラ」

「・・・・・・」

 饒舌にワインと料理を語るブラハをラヴェルは養護出来なかった。盟約は破棄された・・・。


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