34歳独身女が異界で愛妾で宰相で

アマクサ

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第七章 叛逆

34歳はただでは転ばない

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 明り取りの窓から日が差し込み、そして次第に闇に包まれる。薄暗い船底にとって、唯一の明かりが時間という概念を教えてくれる。
 そのことがナオを何とか正気を保たせていた。
 すでに意識を取り戻してから一週間は経っている。
 ようやく陸地についたらしく、船の揺れがほとんどなくなる。

「おい、出ろ。着いたぞ。」

 サヴァディン群島の船乗りがナオの手を縛って外に連れ出した。
甲板に上がると、眩しすぎる太陽が視界を奪う。ずっと暗がりにいたナオにはつらい。

「おい、歩け。」

 ドンッと押されて、乗せられていた中型の帆船から桟橋への渡しの方へ歩かされる。
ナオは周りを見るが、依然来たサヴァディン群島の場所ではなかった。群島の他の島らしい。
岩礁の上に作られている桟橋の先に巨大な洞窟が見える。
 いかにも、海賊のアジトだ。

『何とかして早く脱出しないと・・・みんなが危ない・・・』

 周りに船はなく、乗ってきた中型船だけだった。他は出払っているようだ。
洞窟のアジトの中には手漕ぎのガレー船の小型のものがいくつかあるが、小型といっても六人くらいで漕がないと進めない。
 なんにせよ、ナオ一人ではどうにもできない。
海の孤島なのだ。ナオ一人での脱出は不可能かもしれない。
 だがサヴァディンとはいえ、商人との交流はある。
なんとか脱出して商船に潜り込めば逃げられるかもしれない。
 今は逃げるチャンスをじっと伺う。
 ナオは洞窟の奥の牢屋に連れていかれた。洞窟の形を利用して鉄格子を嵌めただけのものだ。
 手を縛られたままで牢に入れられる。見張りは立たず、どこかに行ってしまった。

『これはチャンス!私を見くびりすぎている!』

鉄格子は古く、錆も回っている。うまくすれば外せるかもしれない。
 捕まっても島から逃げ出そうとするものがいないのか、ここに入れられる者がいないのか、どちらにせよチャンスだった。
 早速ナオは懐に隠し持ったままの皇帝の短剣で手の縄を切った。
宰相がまさか武器など持っているとは思わなかったんだろう。身体を調べられることはなかった。
 その後に地面の方に接地している鉄格子の弱そうなところを探す。ほとんど弱そうだ。地面に突き刺さっているが、錆で大きく腐食している。

『これは思いっきり蹴飛ばせば折れそうね・・・。ただ、音で気づかれてしまうかも・・・。』

 そんな心配をしていると入口の方から笑い声が聞こえてくる。酒盛りが始まったようだ。

『願ったり、叶ったりね。』

 ナオの足元は革のブーツを履いていた。これなら思いっきり蹴れる。
笑い声が大きくなったタイミングに合わせて何度か鉄格子を蹴っ飛ばす。
 見事にうまくいき、格子はひしゃげてナオが潜り抜けれるくらいの隙間を作れた。
 すぐさま潜り抜け、隠れながら入口の方に向かう。
 笑い声は入口の方にある小屋の中から聞こえていた。見張りもいない。
これはチョロイとばかりにナオは洞窟を出る。
 すでに日は暮れていて、月明かりを頼りに闇夜に紛れてナオは森に入り、島の裏手に回ってみる。

「お願い。町があって!」

 祈るような気持ちで走り、森を抜けた。

「そ、そんな・・・。」

 森が開けるとそこは高い崖になっていた。そして、その先は海。
想像以上に小さい島だった。
 だが、2キロほど離れたところにまた島があり、そこには町の明かりが広がっている。
 ナオはしばらく考えた。
崖の下は浜辺になっていて流木がいくつも落ちている。

「やってやる!」

 ナオは崖の周りを下り、浜辺に来た。
そして1メートルくらい長さの板状の流木を見つける。
 さらには、
脱いだ。
すっぽんぽんである。
 革のジャケットに下着もワンピースもブーツも短剣も詰めて包む。
それらを先ほどの木に乗せて、頭の上に抱えて走った。

「行っっけえええ!」

 ナオはそのまま、海に飛び込んだ。2キロの遠泳をやる気だ。なかなかの気違いかもしれない。



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