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第七章 叛逆
34歳とイルカとヤシの実
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ナオは上半身を流木に乗せ、バタ足で水を掻いて泳ぎ進んでいた。
島と島の間の海なので比較的波が穏やかだ。しかし、なかなか進まない。
しばらくいでいると、後ろからチャポンッと水が跳ねる音が聞こえる。
何かが後ろにいる気配をナオは感じた。
「まさか・・・人食い鮫とかじゃないよね・・・?」
ナオはドキドキしながら、首だけで後ろを向く。
ピーウピーウピーウと超音波のような鳴き声が聞こえる。
「うわわわ!」
ナオは恐怖に慌てて流木から落ちそうになる。
なんとか態勢を立て直し、音の方を見直した。
すると、その音の主は、月夜に映えるつるんとした灰色の頭に、離れ目のつぶらな瞳。ハンドウイルカだった。
周りに浮かんでいるだけで襲ってくる気配はない。
「すごい!イルカちゃんなのね!」
ナオは海で泳ぐイルカを初めて見た。イルカは3匹ほどいてナオの周りを周遊している。
「なあに?一緒に泳いでくれるの?」
「ピーウピーウ!」
あたかもそうだと言わんばかりにイルカは鳴く。
「エヘヘヘ。嬉しい。旅は道連れだね。」
月明かりに照らされる中を、ナオとイルカは泳ぐ。
野生のイルカと一緒に泳げるなんて、これが日中だったらこの透き通る青さを持つ内海だけに、さぞ感動的だっただろう。
「なに?押してくれるの?」
突然、イルカは尖った口先をナオの背中に押し付けた。
「ははは。くすぐったい!わわわわ!速い速い!!」
イルカに押されたナオはものすごい勢いで海を進んでいく。流木が水の圧力で吹き飛ばされそうになるのを必死に抑える。
「げほげほっ。苦しい。」
ナオの顔に結構な量の海水がかかり、だいぶ飲み込んでしまった。
やりすぎたかな?とでもイルカは思っているのか、そばで可愛らしく鳴いている。
ナオはそのイルカの頭に優しく触れる。
「ありがとう。おかげでだいぶ早く着きそう。」
ナオはイルカに向けて微笑みかけた。
するとイルカはピーウ、と鳴いて離れていく。
まるでバイバイと言っているかのようだ。
「人とイルカって意思の疎通はできるんだっけ??」
この不思議な出来事にナオは素朴な疑問を覚えた。
イルカのおかげで、ついに町の明かりが灯る島が目の前に迫ってきた。
ラストスパート。ナオは必死にバタ足で進む。
「はあはあはあ・・・。」
息も絶え絶えだが、ナオは何とか浜辺に足をつけることができた。
乳房や指先から海水が滴る。
ナオはふと周りを見るとヤシの木が目に入った。タワワに実がなっている。
「のどかわいた・・・・。」
ナオはヤシの実を取ることを決意した。
近くに落ちていた流木の棒で実を思いっきり叩いてみる。
見事に実が1つ落ちてきた。
それを皇帝の短剣で穴を空けた。もう宝剣はただのサバイバルナイフと化している。
ストローなどはないから、ヤシの実の穴を逆さにして口をつける。
甘い。うまい。
ナオは一度も口を離さずに汁を飲み干してしまった。
最近の皇城生活では全く考えられない野生的な行動。さらにはまだ裸だ。
飲み干した後、ナオにはある言葉が浮かんだ。
それはすでに古い言葉でもある。時代遅れなのはわかっている。
だが、どうしてもナオはそれを言わずにはいられなかった。
「ワイルドだぜえ・・・。」
ナオはすっきりした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
体中の水を切り、少し濡れてしまったワンピースを被る。
もともとベージュ色だったワンピースはレルミタの血で染まり、ほとんどエンジ色一色になっていた。
『レルミタ・・・遠くから見守っててね・・・・』
ナオはそう胸に思い、町の灯りの方へ歩み始めた。
目指す町の奥に大きな船着き場が見える。いくつもの商船が停泊している。
その船のいくつかにオルネア帝国の旗が掲げられていた。
ナオはそれに気づき、希望に胸が躍った。
気持ちが競って、小走りに町へ向かっていった。
「ようし。これでサヴァディンとの商売も終わりだ。明日一番に出港しよう。長くいると、ろくなことが起きないからな。」
「かしこまりました。では今夜は町の宿にお泊りになられますか?」
船着き場の一角で、オルネア帝国の商人らしき人物が配下の者と会話している。目の前にしているのはかなりの大型の帆船だ。
「す・・・すみません、商人のお方。」
ナオは物陰から出てきて話しかけた。
不意に話しかけられて、商人たちは抜刀する。
「何者だ?!」
商人は手にしているランプを声の方にかざした。
「あっあなたは!宰相ナオ様!!」
ナオはそんなに顔を知られていると思ってなかったので、ギョッと驚いた。
だが、ナオも商人の顔に見覚えがあった。
「オルランド・シュニエ様!!」
ナオが初めて参加した夜会、運命の夜会の日に知り合った商人の豪族である。そのときは完全にモブキャラだったが・・・。
「なんと!いまだに私の名前を憶えてくださっているとは!感激です!」
ナオとしては本当にたまたま覚えていただけなのだが、それは隠しておく。
「もちろんです!ああ、でもよかった!
どうかお願いです!助けていただけないでしょうか!?」
ナオは上目使いで懇願した。
二人は何事か、と顔を見合わせる。
「―――という訳で大変な状況なのです。」
ナオはオルネア帝国とイスタリカ王国との戦争の危機が迫っている事、ナオがサヴァディンに捕らえられていた事を簡単に説明する。
「なるほど、それでは一刻も早くオルネア帝国に戻らないとですね。
わかりました!協力しましょう!
船長!皆を起こして出発だ!急ごう!」
オルランドは快諾して、すぐに行動に取り掛かった。流石、やり手の商人だ。
行動が早い。
三十分後には準備を終えて出航にこぎ着けた。
出航してからナオは、客間で簡単な食事を食べさせてもらっていた。
目の前にはオルランドがいて、ナオの夜会の時の武勇伝をやれ感動したなどと、気持ちよく話している。
ここ数日間の激動と比べ、落ち着きを取り戻し、ナオは安堵の笑顔を浮かべる。
それも束の間。
「オルランド様!大変です!
サヴァディンの海賊に囲まれています!かなりの数です!」
船員の一人が血相を変えて部屋に入ってきた。
「来てしまったか!総員戦闘配置だ!」
オルランドはすぐ様部屋を出て、甲板に向かう。
サヴァディンの海賊とか何度も交戦しているのだろう。非常に慣れている感がある。
だがオルランドが甲板で見たものは、過去対戦した事のないほどの数の海賊船の数だった。
「これほどまでとは・・・。
船長、うまく逃げれないのか?」
「さっきからうまく逃げようと船を走らせてますが、奴らは帆船と手漕ぎのガレー船をうまく使っていて・・・囲まれてしまいました。」
「戦って活路を開くしかないか・・・。」
戦ってもなんとかなる保証はない。むしろ分が悪すぎる。しかし、他に方法はない。
オルランドの眉間に皺が寄る。
「オルランド様!あれを!」
白旗を挙げたガレー船が一隻、オルランドの船に近づいてくる。
船に乗っているのはサヴァディンの島頭のジャドだ。オルランドの船に向かって大きく叫ぶ。
「おおー!オルネアのオルランドじゃねえか!久しぶりだなあ!
俺だ!頭のジャドだ!」
ジャドとオルランドは顔見知りらしく、ジャドは気軽に手を振った。
「悪いな。こんな夜中に慌てて出港している船なんかあったら、なんか悪いことしてると思うだろ?
例えば虜囚が逃亡しているのを助けたりとか?」
「なんのことだ?我々は次の予定が詰まっているから、早く出航しただけだ。」
「オーケイ。俺たちは虜囚の女を探してる。
船を家捜しさせてもらえたら、すぐこの海域を出させてやる。」
ぎりっ。オルランドは歯を噛みしめた。ジャドはオルランドの船にナオがいることをほぼ確信しているのだろう。
「どうだい?海賊を乗せるのは嫌だろうが、このまま戦闘になってもそちらにはきついだろう?」
ジャドはさらに追い込みをかける。
そこにナオが甲板に出てきた。
「ナオ様!出てきては!?」
オルランドが驚きの声を上げるが、ナオはそれを静止する。
「ご心配ありがとうございます。
ただ、これ以上オルランド様を巻き込めない。あちらに投降します。」
ナオはジャドから見える位置に姿を現した。
「なんだ、宰相さんよ。いたのか。
てっきり牢屋にいるもんかと思ってたが。」
「しらじらしい。」
「ははは!いや大したタマだよ、あんた!
この船にいるってことは牢獄島から町まで海を泳いで渡ったんだろう?内地の人間にはまずできないぜ!」
オルランドは目を丸くした。ありえないことだからだ。
沿岸の町の者ならともかく、広大な土地を持つオルネア内陸の人間は海など見たこともなければ泳いだこともないのが当たり前だからだ。
「ええ!夜の海は気持ちよかったですよ!!」
ナオはしれっと嫌味を込めて言い放ちつつ、打開策を考える時間を稼ぐ。
このまま捕まってしまっては脱出は困難になる。
ナオの首筋に緊張の汗が流れた。
そこに、突如――――
ドガドガガンッ!という連続した衝突音とともに鬨の声が上がる。
「なんだ!?」
オルランドは音の方を見る。
オルランドの船を囲んでいるサヴァディンの船団に多数のガレー船が突っ込んでいる。
すぐさま、サヴァディン船上で乱戦になっていく。
ジャドも慌てて母船に引き返す。
ガレー船にはタリス島の紋様が描かれていた。
その一隻にレルミタの父、トレスの姿がナオの目に映った。
島と島の間の海なので比較的波が穏やかだ。しかし、なかなか進まない。
しばらくいでいると、後ろからチャポンッと水が跳ねる音が聞こえる。
何かが後ろにいる気配をナオは感じた。
「まさか・・・人食い鮫とかじゃないよね・・・?」
ナオはドキドキしながら、首だけで後ろを向く。
ピーウピーウピーウと超音波のような鳴き声が聞こえる。
「うわわわ!」
ナオは恐怖に慌てて流木から落ちそうになる。
なんとか態勢を立て直し、音の方を見直した。
すると、その音の主は、月夜に映えるつるんとした灰色の頭に、離れ目のつぶらな瞳。ハンドウイルカだった。
周りに浮かんでいるだけで襲ってくる気配はない。
「すごい!イルカちゃんなのね!」
ナオは海で泳ぐイルカを初めて見た。イルカは3匹ほどいてナオの周りを周遊している。
「なあに?一緒に泳いでくれるの?」
「ピーウピーウ!」
あたかもそうだと言わんばかりにイルカは鳴く。
「エヘヘヘ。嬉しい。旅は道連れだね。」
月明かりに照らされる中を、ナオとイルカは泳ぐ。
野生のイルカと一緒に泳げるなんて、これが日中だったらこの透き通る青さを持つ内海だけに、さぞ感動的だっただろう。
「なに?押してくれるの?」
突然、イルカは尖った口先をナオの背中に押し付けた。
「ははは。くすぐったい!わわわわ!速い速い!!」
イルカに押されたナオはものすごい勢いで海を進んでいく。流木が水の圧力で吹き飛ばされそうになるのを必死に抑える。
「げほげほっ。苦しい。」
ナオの顔に結構な量の海水がかかり、だいぶ飲み込んでしまった。
やりすぎたかな?とでもイルカは思っているのか、そばで可愛らしく鳴いている。
ナオはそのイルカの頭に優しく触れる。
「ありがとう。おかげでだいぶ早く着きそう。」
ナオはイルカに向けて微笑みかけた。
するとイルカはピーウ、と鳴いて離れていく。
まるでバイバイと言っているかのようだ。
「人とイルカって意思の疎通はできるんだっけ??」
この不思議な出来事にナオは素朴な疑問を覚えた。
イルカのおかげで、ついに町の明かりが灯る島が目の前に迫ってきた。
ラストスパート。ナオは必死にバタ足で進む。
「はあはあはあ・・・。」
息も絶え絶えだが、ナオは何とか浜辺に足をつけることができた。
乳房や指先から海水が滴る。
ナオはふと周りを見るとヤシの木が目に入った。タワワに実がなっている。
「のどかわいた・・・・。」
ナオはヤシの実を取ることを決意した。
近くに落ちていた流木の棒で実を思いっきり叩いてみる。
見事に実が1つ落ちてきた。
それを皇帝の短剣で穴を空けた。もう宝剣はただのサバイバルナイフと化している。
ストローなどはないから、ヤシの実の穴を逆さにして口をつける。
甘い。うまい。
ナオは一度も口を離さずに汁を飲み干してしまった。
最近の皇城生活では全く考えられない野生的な行動。さらにはまだ裸だ。
飲み干した後、ナオにはある言葉が浮かんだ。
それはすでに古い言葉でもある。時代遅れなのはわかっている。
だが、どうしてもナオはそれを言わずにはいられなかった。
「ワイルドだぜえ・・・。」
ナオはすっきりした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
体中の水を切り、少し濡れてしまったワンピースを被る。
もともとベージュ色だったワンピースはレルミタの血で染まり、ほとんどエンジ色一色になっていた。
『レルミタ・・・遠くから見守っててね・・・・』
ナオはそう胸に思い、町の灯りの方へ歩み始めた。
目指す町の奥に大きな船着き場が見える。いくつもの商船が停泊している。
その船のいくつかにオルネア帝国の旗が掲げられていた。
ナオはそれに気づき、希望に胸が躍った。
気持ちが競って、小走りに町へ向かっていった。
「ようし。これでサヴァディンとの商売も終わりだ。明日一番に出港しよう。長くいると、ろくなことが起きないからな。」
「かしこまりました。では今夜は町の宿にお泊りになられますか?」
船着き場の一角で、オルネア帝国の商人らしき人物が配下の者と会話している。目の前にしているのはかなりの大型の帆船だ。
「す・・・すみません、商人のお方。」
ナオは物陰から出てきて話しかけた。
不意に話しかけられて、商人たちは抜刀する。
「何者だ?!」
商人は手にしているランプを声の方にかざした。
「あっあなたは!宰相ナオ様!!」
ナオはそんなに顔を知られていると思ってなかったので、ギョッと驚いた。
だが、ナオも商人の顔に見覚えがあった。
「オルランド・シュニエ様!!」
ナオが初めて参加した夜会、運命の夜会の日に知り合った商人の豪族である。そのときは完全にモブキャラだったが・・・。
「なんと!いまだに私の名前を憶えてくださっているとは!感激です!」
ナオとしては本当にたまたま覚えていただけなのだが、それは隠しておく。
「もちろんです!ああ、でもよかった!
どうかお願いです!助けていただけないでしょうか!?」
ナオは上目使いで懇願した。
二人は何事か、と顔を見合わせる。
「―――という訳で大変な状況なのです。」
ナオはオルネア帝国とイスタリカ王国との戦争の危機が迫っている事、ナオがサヴァディンに捕らえられていた事を簡単に説明する。
「なるほど、それでは一刻も早くオルネア帝国に戻らないとですね。
わかりました!協力しましょう!
船長!皆を起こして出発だ!急ごう!」
オルランドは快諾して、すぐに行動に取り掛かった。流石、やり手の商人だ。
行動が早い。
三十分後には準備を終えて出航にこぎ着けた。
出航してからナオは、客間で簡単な食事を食べさせてもらっていた。
目の前にはオルランドがいて、ナオの夜会の時の武勇伝をやれ感動したなどと、気持ちよく話している。
ここ数日間の激動と比べ、落ち着きを取り戻し、ナオは安堵の笑顔を浮かべる。
それも束の間。
「オルランド様!大変です!
サヴァディンの海賊に囲まれています!かなりの数です!」
船員の一人が血相を変えて部屋に入ってきた。
「来てしまったか!総員戦闘配置だ!」
オルランドはすぐ様部屋を出て、甲板に向かう。
サヴァディンの海賊とか何度も交戦しているのだろう。非常に慣れている感がある。
だがオルランドが甲板で見たものは、過去対戦した事のないほどの数の海賊船の数だった。
「これほどまでとは・・・。
船長、うまく逃げれないのか?」
「さっきからうまく逃げようと船を走らせてますが、奴らは帆船と手漕ぎのガレー船をうまく使っていて・・・囲まれてしまいました。」
「戦って活路を開くしかないか・・・。」
戦ってもなんとかなる保証はない。むしろ分が悪すぎる。しかし、他に方法はない。
オルランドの眉間に皺が寄る。
「オルランド様!あれを!」
白旗を挙げたガレー船が一隻、オルランドの船に近づいてくる。
船に乗っているのはサヴァディンの島頭のジャドだ。オルランドの船に向かって大きく叫ぶ。
「おおー!オルネアのオルランドじゃねえか!久しぶりだなあ!
俺だ!頭のジャドだ!」
ジャドとオルランドは顔見知りらしく、ジャドは気軽に手を振った。
「悪いな。こんな夜中に慌てて出港している船なんかあったら、なんか悪いことしてると思うだろ?
例えば虜囚が逃亡しているのを助けたりとか?」
「なんのことだ?我々は次の予定が詰まっているから、早く出航しただけだ。」
「オーケイ。俺たちは虜囚の女を探してる。
船を家捜しさせてもらえたら、すぐこの海域を出させてやる。」
ぎりっ。オルランドは歯を噛みしめた。ジャドはオルランドの船にナオがいることをほぼ確信しているのだろう。
「どうだい?海賊を乗せるのは嫌だろうが、このまま戦闘になってもそちらにはきついだろう?」
ジャドはさらに追い込みをかける。
そこにナオが甲板に出てきた。
「ナオ様!出てきては!?」
オルランドが驚きの声を上げるが、ナオはそれを静止する。
「ご心配ありがとうございます。
ただ、これ以上オルランド様を巻き込めない。あちらに投降します。」
ナオはジャドから見える位置に姿を現した。
「なんだ、宰相さんよ。いたのか。
てっきり牢屋にいるもんかと思ってたが。」
「しらじらしい。」
「ははは!いや大したタマだよ、あんた!
この船にいるってことは牢獄島から町まで海を泳いで渡ったんだろう?内地の人間にはまずできないぜ!」
オルランドは目を丸くした。ありえないことだからだ。
沿岸の町の者ならともかく、広大な土地を持つオルネア内陸の人間は海など見たこともなければ泳いだこともないのが当たり前だからだ。
「ええ!夜の海は気持ちよかったですよ!!」
ナオはしれっと嫌味を込めて言い放ちつつ、打開策を考える時間を稼ぐ。
このまま捕まってしまっては脱出は困難になる。
ナオの首筋に緊張の汗が流れた。
そこに、突如――――
ドガドガガンッ!という連続した衝突音とともに鬨の声が上がる。
「なんだ!?」
オルランドは音の方を見る。
オルランドの船を囲んでいるサヴァディンの船団に多数のガレー船が突っ込んでいる。
すぐさま、サヴァディン船上で乱戦になっていく。
ジャドも慌てて母船に引き返す。
ガレー船にはタリス島の紋様が描かれていた。
その一隻にレルミタの父、トレスの姿がナオの目に映った。
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