転生した精霊モドキは無自覚に愛される

suiko

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第一章

~26~

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♦もう一人の転生者




私には前世の記憶がある

こんな事を言ったって誰にも信じて貰えやしないだろうけど
事実、私は二十六歳まで日本人として生きた記憶がしっかりあるのだ。

そして気付いたのである


ここ、乙女ゲームの世界だ。って


いやいやいや、どこぞの携帯小説かよって突っ込みたくなった私は悪くないと思うんだ
ちなみに私はゲーマーと言う程ではないがゲームはそこそこ好きな方
動画投稿サイトでゲーム実況とか良く見るし、携帯小説もそこそこ読んでいた。
スマホイコール娯楽みたいな残念喪女である。
リアル恋愛経験はない

そんな私がよりによって乙女ゲームの世界に転生
しかも主人公ポジション!!



私の最後の記憶は出勤中工事現場の近くを通っていた時、向かい側から危ないって声が聞こえた所で途切れている。
圧死かな?痛みらしい感覚もなく死ねたのはある意味幸運だったんだろう
前世の両親には申し訳ない気持ちがそれなりに湧いたが、死人に口なし、私の今世の人生はこれからなのである。

物心ついた頃あたりで違和感のような物は感じていたが、はっきりと思い出せたのはこの世界での母と街にお出かけした時だった。
街並みやら、液晶画面越しに見たことのある店を見かけて
あああああ!ここ『奇跡の雫~アナタだけの恋物語~』の世界じゃんかよぉぉおお!!
っと脳内パニックに陥ったし、私のポジションが明らかに主人公のそれであった事もありキャパオーバーで倒れてしまったのだった。


『奇跡の雫~アナタだけの恋物語~』は、良くあるソーシャルゲームの乙女ゲームの一つであり
大体の乙女ゲームと同じ選択肢による好感度システムや条件を揃える事で解放されるイベントやスチル
しかし話題性だけはサービス開始前からネットで騒がれていたらしく
詳しくは分からなかったけれど同僚からの「絶対絶対アプリとってプレイしてね!」の言葉に流されてダウンロードしたのが始まり
熱中した、とまではいかないが
他の積みゲーがある事もあって余りプレイは出来なかったと思う。
精々攻略したのは古参組と呼ばれるメイン攻略対象の五人+一人くらいだ
あとはアップデートで加わった何人かもさわりだけプレイしたが早々に飽きてしまいログインボーナスの為に一日一回必要最低限プレイするという
その程度の、これといった執着やらなんやらもないゲームの世界に転生してしまったのは本当に謎でしかない
こういうのは恋愛ゲーム好きを公言していた同僚こそが転生するのが携帯小説のお約束と言う物ではないのか?

しかし私がこうして主人公ポジションに収まってしまった以上どうする事も出来ない為、せめてあまり目立たないように、そこそこの生活を心掛け、そこそこの恋愛をして、そこそこ安泰な将来を築ければいいな。とは思っている。

しかしまぁ、私は携帯小説をそれなりに読んでいた
中でも所謂乙女ゲー転生。悪役令嬢に転生してしまった系の小説とかはかなりの数お気に入り登録していたりする

私がこうして転生しているのなら、悪役令嬢ポジションも転生してたりするんじゃない?
そう思うからこそ、ヒロインだイェーイ(*´∀`)なんて浮かれたりなんか出来ない訳で
どうせ前世では年齢=彼氏いない歴だったんだ。期待なんかしないぞ。っと自分を戒めるのだった。


そしてまぁ、ゲームのプロローグ部分で語られる通り
予定調和のごとく
私の父を名乗るブロッサム男爵のお屋敷へと母共々ドナドナされたのだった。




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