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第一章
~62~
しおりを挟む私がサズワイト王国に帰還しておよそ一年
私は当初の予定通り学院に戻り教師職につき、理化学科と、何故か新しく設立されたという機械学科の専門になった。
この一年はまぁ、それなりだ。
すっかり成長した同年代の生徒達、年齢のバラバラな集団
学院は特に変わった所は図書室が増えた事と、学科が増え、専門の教室が空き倉庫に出来た事か
貴族学科は未だに存在しているが、かつての関係とは立場が逆転しているようだった。
「あいつら何しに学院に来てるんだろーな」
「勉強する気あんの?」
「はっきり言って邪魔」
「教室の無駄」
「あそこの教室広いし図書室にすればいーのに」
陰口を言われ、肩身の狭い思いをしている貴族の令息令嬢達
中には上手く彼等と付き合えている者もいるが少数派だ
あと、私の身近で変わった事と言えば
「あ、ちょっとあんた」
「ミーシャ先生、教えて欲しい事があるんだけど」
ユキノとローズ・ブロッサムに付き纏われることが増えた。
どうやらローズ・ブロッサムは私にユキノを近付けたくないようだが、その心理がわからない
「邪魔しないでよ」
「邪魔なのはどっちよ。生徒でも無いのに先生に一体なんの用があるって言うの?」
「話をするくらい人の自由でしょ、あっちょっと!」
次の授業もあるのでさっさと歩く
ローズ・ブロッサムはまだついてくる
「まったく、ミーシャ、あいつに話しかけられてもなるべく無視しなさいよね。
どうしても断れ無い場合は二人きりにはならない事、良い?ルークさんちゃんとミーシャに付いててよ!」
「ん?おー」
「一体何なのかね」
「ミーシャは噂なんて気にしないのかもしんないけど、あんた一応有名人なんだからね?
それとそろそろ結婚すんでしょ?大事な時期なんだから気を付けなさいよ」
「あいつ、あんたに逆恨みしてんのよ。
雪の節にあった北の噴火騒ぎ、あんたが住人避難させた後であいつが火山の噴火を予言して、秀才の聖女の手柄横取りしようとしたなんて騒ぎになったし
水の節の黄砂騒ぎもあんたが一人で勝手にドデカい結界張って被害を最小限に抑えたもんだから
この国を救えるのは私だけなのに~って癇癪おこしてんのよ」
「他にも予言していただろう」
「あったわね。でも殆ど対した被害出てなくってね。
私達にとっては良い事なんだけど、あいつにとっては面白くないんでしょ
えっと、大津波に台風に、後この国が滅亡の危機に陥る。だっけ、何が起こるってのかしら」
「彼女の予言は確かだからな、いざと言う時の準備はしておくに越した事は無い」
「世間は出鱈目言ってる偽物聖女って言い方してんのよ。
津波も台風もちゃんと当たってるってのにね」
ユキノの予言によると、火山の噴火では多くの人が火山灰の影響で病気になるとの事だったが、噴火が起こる三週間前には避難は完了しており病人が出る事は無かった
ついでに言えば避難民の増加による住居問題や食料問題等も予言していたが漁業会の者達がそれら全て滞り無く事にあたった為目立った問題は起こらなかった。
津波や台風もそうだろう
私は何もしていない、漁業会の者達が予め建設していた防波堤や強風対策によって被害は殆ど無かった。
彼女の予言は当たっているのだが、彼女自身が言う程の大きな被害は起こっていないのだ。
それだけなら彼女が大袈裟に言っているだけ、彼女の予言によって周囲の人々が対策を施したからこそ被害を抑える事が出来た。と捉えられるだろうに
何故か彼女の予言が出鱈目である等といった話になっている。どういう事なのやら
「で、いつ結婚すんのよ。
ライネルくん卒業したんでしょ?」
「近々、だな。
元より学院卒業が最低限の結婚条件であった訳だからな、早めに済ませるさ」
「急かすようで悪いとは思うけどね。
漁業会も大きく動くみたいだから、ま、祝っておくわおめでとう。じゃ」
わざわざ私の後に着いて来ながらも言いたい事は言い終わったとばかりに元来た廊下を戻っていく
ローズ・ブロッサムは私を世話焼きだと言うが、彼女こそが世話焼きと言うに相応しいだろう
七年間の旅の間にここまで国が変わるとは予想もしていなかった。
国に戻れば私には自由は無いものだと、王妃としての勤めがあるのだと思っていたというのに拍子抜けと言ったところか
自分の自由に出来る時間が増えたと捉えておこう
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