転生した精霊モドキは無自覚に愛される

suiko

文字の大きさ
72 / 84
第一章

~71~

しおりを挟む



◆ユキノ









幸せな時間はあっという間に過ぎ去っていく
それでも明日も、明後日も、
これから先もずっとずっと変わらない当たり前の日々がやってくると信じていたのに


「・・・・・・・・え?どういう、事ですか?」

「言葉の意味通りよ。荷物を纏めておきなさい
あと、貴女の住む新しい住居は自分で探すのよ」

「なっ、なんで!?あ、いや、何故、ですか?何があったんですか?
そんな、急に城を出て行け、なんて・・・」

「このお城を、土地を売ったからよ」

「・・・・・え?な、なん、どういう事なのですかっ!?
お城を!?なんでそんな事っ!」

「ユキノさん、ハッキリ言うわ
この国は変わるのよ。今までの古い、王が権利を持つ時代では無くなったの
これからは漁業会が中心となって民が民を率いる新しい時代になるわ
王族の象徴である王城はもう要らないのよ」

「・・・は?・・え?どういう・・・・・」


訳がわからない
王が権利を持たなくなる?
民が民を率いる?
何を言ってるんだろうこの人は

「貴女がここに来てもう二年も経つわ
この国の事を知るのに充分な時間よ。
貴女がこの国の為に奔走してくれているのは良く知っているし、支援もして来たけれど
本当ならもっと速くにこの王城は取り壊される筈だったのよ
申し訳ないけれど、貴女ももう子供でも無いのだしこの国で生きるにあたって生活の場は自分で固めなさい」

「そんな・・・そんな事って・・・」


理解出来ない、したくない
だってこんな事ゲームでは無かった。
一人暮らし?確かに少し憧れていた事はあるけれど、こうやって人から強制されて初めて不安と恐怖に襲われる
どうすれば良いの?
どうやって住む場所を決めるの?探せば良いの?
一人暮らしってどうすれば良いの?何も、何もわからない
でもそれを目の前の女性に尋ねるのは怖かった。
そんな事もわからないのか、と責められる気がして怖かった。
嫌だった、呆れられるのは嫌
嫌われるのは嫌
怒られるのは嫌
頼れる大人は居なかった。







「どうすれば良いのかわからないの・・・」

相談したのは、ミルウェッチ・クロウラーさん
私がこの世界に来て初めて会った人で、色々と世話をしてくれた人
歳上の落ち着いた神官と言う設定なだけあり大人の目線で未だ子供な私を見てくれる人
私はまだ十八歳の子供だ。
勿論物事の分別はつくし、それなりに社会と言う物を知ってはいるけれど、本来なら高校に通っているはずの、親の保護下にいるべき存在だ。
でもこの世界ではそんなの言い訳にもならない
この世界には成人式なんてものは無いし、子供と大人の線引きも曖昧だ。
この世界に来たばかりの頃にどんな些細な事でも丁寧に、面倒臭がらずに相談に乗ってくれたのはミルウェッチさんだけだった。
私にとってミルウェッチさんは頼れるお兄さん的なポジションだったから、一番に相談しに来たのだった。

「そうですか・・・確かに、いきなり一人暮らししろと言われても、難しいですよね」

「・・・・うん、色々考えちゃうの」

私が生きてた世界では、それこそ家賃とか、光熱費、水道代、ガス代、あとはローン?とか固定資産税?とか、とにかく沢山お金がかかるし、それぞれがそれぞれ支払う場所とか書類だとか違うらしいし
詳しい事は知らないけれど、面倒な手続きが必要なんだろう事は何となく分かる。
この世界では?どうすれば良いのか、何をすれば良いのかサッパリ何もわからない
わからない事は怖い事だ。
ゲームの内容なら思い出せるし、誰にどう答えれば良いのかも自信があるけれど
この国の経済だとか、情勢だとかは何も知らない、ゲームにはそんな事一切出てこなかった

ゲームの通りにすれば良いと、そう信じて疑わなかったから私は今のいままでこの国の事を本当の意味で知ろうとしなかった。
王妃様から城を出て行けと言われて、就職先だとか、不動産だとかを調べ初めてやっと、この国が漁業会とやらに乗っ取られている状態だと気付いた。
もう、恋愛ゲームなんてしている状況じゃあ無い
何よりも優先するべきは私自身だ。自分の身は自分で守らないといけない

そういった事をミルウェッチさんに言うと、
「わかりました。力になりましょう」
と言ってくれて
就職先に困っているのならまず学院に通って得意分野を探し伸ばす事、学院に通う人達伝に仕事を紹介して貰うのが一番手っ取り早い事を教えて貰った。
そして、

「・・・その、ユキノさん
余りこう言う事は言うべきでは無いのかも知れませんが、今言わなければ後悔しそうなので、伝えておきますね。
私は、貴女の事が好きです。レオクリスより私を選んで下さい
このままでは、貴女は幸せになれない」


「・・・・・・え、その・・・困ります・・」


ま さ か の
えっ、なんで??
私ミルウェッチさん攻略してないよね?
確かに少し好感度上げるくらいの会話はしたけどそれくらいで?
なんで告白されてるの??

「レオクリスはもう王子でも何でも無い、身分も立場も無くした只の人です。
あいつと結婚しても得る物など何も無い。貴女もわかっているでしょう?」

「・・・私、私・・そんな理由で、レオクリス様を好きになったんじゃ、ありません・・」

半分嘘で半分本当だ。
ゲームで好みのタイプだったから攻略しようとしたってのが六割くらいで
あとの四割くらいは打算だ。
愛はお金では買えないなんて言うけれど、でも貧乏人と結婚するよりかは、少しでも裕福な人と結婚したいと思うのは、私だけじゃないはずだ。
王子様であるレオクリス様と結ばれれば、私の将来は約束された安泰なものになるに違いないって思いは、確かにあった。
でも、それを口にして肯定なんてしてしまったら、私タダの金と身分目当ての最低な女じゃないか
それに、王子様じゃなくなったと聞いても、私のレオクリス様に対する好意は消えなかった。
だから、多分そういう事なんだと思う

「今はまだ、良いです。
でも、考えておいて下さい」

「・・・・・」

予想外過ぎる展開に私は考える事を放棄したくなる
でも、それは出来ない
私にはまだやるべき事が残っていて、この国を守らなくちゃいけなくって、
この国で本当の意味で一人で生きていく方法を見つけなくちゃいけなくって、
レオクリス様の事は好きだけど、ミルウェッチさんの優しさに甘えたいって気持ちもあって

私はどうすれば良いんだろう
もうここは私の良く知るゲーム世界とは言えない、別物になってしまっている。
これから起こる事がわからない事が、こんなにも不安だなんて思わなかった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チョイス伯爵家のお嬢さま

cyaru
恋愛
チョイス伯爵家のご令嬢には迂闊に人に言えない加護があります。 ポンタ王国はその昔、精霊に愛されし加護の国と呼ばれておりましたがそれももう昔の話。 今では普通の王国ですが、伯爵家に生まれたご令嬢は数百年ぶりに加護持ちでした。 産まれた時は誰にも気が付かなかった【営んだ相手がタグとなって確認できる】トンデモナイ加護でした。 4歳で決まった侯爵令息との婚約は苦痛ばかり。 そんな時、令嬢の言葉が引き金になって令嬢の両親である伯爵夫妻は離婚。 婚約も解消となってしまいます。 元伯爵夫人は娘を連れて実家のある領地に引きこもりました。 5年後、王太子殿下の側近となった元婚約者の侯爵令息は視察に来た伯爵領でご令嬢とと再会します。 さて・・・どうなる? ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

処理中です...