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一夜
しおりを挟む浴槽を軽く洗ったあと、お湯を張りリビングへと戻る。
「零ちゃん、お風呂先入ってきていいよ~」
「おふぅろ?」
‥‥やっぱりか。想像はしていたから、そこまでの驚きはない。
「体を洗って綺麗にすることだよ~。今から入り方教えるから覚えてね?」
「分かった! おにぃちゃんは一緒に入らないの?」
「おにぃちゃんはご飯の後片付けするから、一人で入ってきてくれると嬉しいなぁ~」
「はぁい」
いくら妹といっても、今日知り合ったばかりの女の子(中学生くらい)とお風呂に入るのは不味い。
自分でもよく分からないことを言っているが、間違ってはいないはずだ……。
なので、零ちゃんにお風呂の入り方を一から説明し、今は一人でテレビを観ている。
(それにしても、遅いな…)
もう、かれこれ30分は過ぎている。女の子はお風呂が長いもの、かもしれないしもう少し待つことにする。
****
「って1時間過ぎてんじゃん! まさか、何かあったんじゃ!」
結局、本業を見失ったアイドルか農家かサバイバラーな人達が面白すぎて最後まで見通してしまった。
急いで風呂場へとダッシュする。
「零ちゃん! 大丈夫っ?」
ドア越しから声を掛けるが返事は返ってこない。
「っ! 零ちゃん! 零! どうかしたか! 」
「……………………」
「くそっ! 開けるぞッ!」
バンッ
浴室で零ちゃんの姿は直ぐに見つけられず、思いついたように浴槽へと目を向ける。
「零!」
そこには、沈んだ零ちゃんがいた。急いで引き上げようと手をお湯に入れた瞬間‥‥。
「アッツゥィイイイ!?」
浴槽のお湯は熱湯かと思うほど熱かった。
もはや、自分の感覚に構っている場合ではなかった。
「くそッ!」
がむしゃらに零ちゃんを引き上げ、真っ赤に染まった体へと末端から冷水をシャワーでぶっかける。
それより‥‥。
「おい! 息しろ!」
こんな時はどうするべきか。
半ばパニックになり、半年前に受けた救命講習を思い出しつつ人工呼吸にとりかかる。
「1ッ! 2ッ! 3ッ! 4ッ!────起きろ! おいっ! ───────フゥーッ────」
「‥‥」
「14ッ! 15ッ! 16ッ!────────29ッ! 30ッ!フゥーッ────」
「…………かはっ」
「零!! よしっ、いいぞ! 大きく息を吸え! 」
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、おにぃっ、ちゃ…んぐっ。ハアッハアッ」
「いいから! おにぃちゃんはいいから、息を吸えばか!」
なんとか呼吸が出来るように落ち着かせる。
冷凍庫から保冷剤を持ち出し、脇や鼠径部を冷やす。
「ったく。どうしてこうなった‥‥」
今、零ちゃんは布団に包まって寝ている。体はまだ熱く看病しているところだ。
そもそも、自分の認識が甘かった。
零ちゃんは見た目こそ14歳か15歳くらいの容姿をしているけれど、知識がかなり欠如している。
(これからは認識を変えて過ごす必要があるな‥‥)
小さな子供は何が危険か分からない。
時として、突飛なことをやらかすのが子供だ。
新しくできた家族(仮)との生活はこれから大変になるかもしれない。
だけど、それだけじゃない。
もし、仮に、家族になれたら、俺は一人じゃなくなる。きっと、楽しい生活になる。
そう思うんだ。
温くなったタオルを交換し物思いに耽る。
零ちゃんは美少女の部類に入ると思う。寝ている顔は神秘的で、神様が創造したような造形美だ。
「まるで、天使みたいだな」
自分の語彙力の無さでは零ちゃんの可愛さは言い表せない。
さぁ、明日もあるんだ。お風呂にはいって寝よう。
適温になった湯船に浸かり、体をほぐす。
今日は色々なことがあった。そして、明日もあるだろう。
お風呂からあがった俺は、布団を床に敷き、明日に夢をはせる。
(零ちゃん、おやすみ‥)
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