売れない作家と箱入り娘

clome

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二人のはじまり

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 朝日がカーテンの隙間から差し込み、部屋の暗闇を照らし出す。
 小鳥はさえずり、朝を教えてくれる。
 少し早くに目を覚ました俺に遅れて、携帯のアラームが鳴った。

 高らかに鳴り響く音は鳴り止まない。
 俺は今、身動きがとれないでいた。

 それも、この小動物のせいだ。
 俺を両手両足でホールドして離さない。何故同じ布団にいるかは謎である。

 「零ちゃん‥‥朝だよ」
 「んんぅ……」
 「零…………!? 零っ」

 これ以上は色々と、理性が保ちそうになかった。
 いくらあどけなさを残した妹(仮)といっても、女の子としてのしなやかさと、膨らみがあり、見てはいけない神秘の領域を侵すようで、急いで目をそらす。

 「れっ、零ちゃん! 起きるよッ」

 温もりを必死に手繰り寄せる零ちゃんを、強引に引き剥がす。
 色々と限界に近かった俺は、安堵のため息を吐き出し、やっと一息つく。

 「んんん~、おにぃちゃん?」
 「あぁ、おはよぉ‥‥」
 「おっはぁよっ」

 と、こんなことがあり、寝起きから一波乱あったわけだ。
 今は賢者タイムを迎えており、零ちゃんと一緒に作った朝ごはんを食べている。

 「零ちゃん、今日は市役所に行って、その後ご飯でも食べてこようか」
 「しゃくしょ?」
 「この街の管理をしてくれてる所だよ~。お兄ちゃんもうまく説明は出来ないかなぁ」
 「一緒にいくの?」
 「もちろん」
 「わかったっ。おにぃちゃんと、一緒っ」

 “おにぃちゃんと一緒に居ることが心底嬉しい”みたいな表情をこの子はよくする。
 純真で何も汚れていないこの子に、何故こうも好かれているのか分からない。
 穢れた自分を思い出し、自己嫌悪する。

 「零ちゃん、これからは零れいって呼んで良いかな?」
 「ん? いいよぉ?」
 「よかった。よろしくねっ、れい」
 「よろしくぅっ」

 これは自分に対するけじめだ。俺はこの娘この兄であり、保護者でなければいけない。
 この純真で可愛い生き物をまっすぐ育てよう。
 ま、妹(仮)だけど。

 「よーし、零っ。片付けたら行こうか!」
 「んっ!」

 ****

 零には、俺のお古になったシューズを履かせる。
 ついでに、着ている服も今時よりどこかSFチックで人目を引きそうだから、上からジャージを被せる。
 勿論サイズは合っておらず、面白い。
 どのみち、人目を引きそうだ。
 よし、準備は出来た。

 「零、いくよ~」
 「はぁいっ……うわぁ~」

 零は外に出た瞬間、アパートの二階からの光景を眺めて感動していた。家々で見晴らしも悪く、そこまで眺めが良いわけではない。
 それでも零は、初めて外のセカイを見たかのように、大きな青い空を見上げていた。
 (今まで零はどんな生活をしていたんだろう‥‥)
 ふと、考えるのはその事ばかり。謎多き娘だ。

 「よし、いくよ」
 「うん!」

  市役所は、近くの商店街を抜けて少し歩いた距離にあるから歩いて向かう。
 零は放っておいたらいつの間にか消えていそうだ。手を繫いで歩くことにする。
 歩道と車道の区別もなく、突然飛び出した時は肝を冷やした。

 見た目は中学生くらいにしか見えない。
 気になったことは「あれなに?」って聞いてくるところは子供らしい。
 けれど、零は決して頭が悪いわけでは無い。

 必死で新しいセカイに順応しようと藻掻いてる。
 利発的で、考えて行動する姿は、元々の頭の良さを表しているのかもしれない。
 成長するのが速く、今日の朝の料理なんて野菜を一人で切り終わったくらいだ。
 (もしかして、零って‥‥)

 「天才なのか?」
 「?? おにぃちゃん、あれは何?」

 零の指先は、パチンコの看板の頭文字が一つ抜け落ちたところを指していた。

 さて、これはどう説明しましょうか……。
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