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第1部
10 嫉妬
翌朝、ゆっくりと意識が浮上する。
いつもの天井。昨夜の緊張の名残で体が少し重い。
隣を確認するが、すでに会長の姿はなかった。ベッドはきれいに整えられていて、まるで最初から一人で寝ていたかのようだ。
……と思ったのも束の間。
視界の端に、ありえない光景が映った。
部屋のソファに足を組んで座り、優雅に紅茶を片手に本を読んでいる赤髪の男。
「……は?」
声にならない声が漏れる。
こいつ、なにしてるんだ?
というか、なんで俺の部屋にいるんだ?
その疑問に答えるように、ウィランが顔を上げた。
「おはよう、カイル」
朝日に照らされた、すがすがしいほどの笑顔。
……なのに、なぜか今は背筋がひやりとした。
いつもの軽薄さよりも、もっと別のものを感じる。
「だから言ったじゃないか。学園には狼がいるよって」
その一言で、すべてを察した。
会長が昨夜この部屋にいたことを、把握したうえで乗り込んできたのだ。
(……どこから見てたんだ、お前は)
気持ち悪さが込み上げる。
だが、こいつに何を言っても無駄なのは、長い付き合いで嫌というほど知っている。
「会長とは……ただ一緒に寝ただけだよ」
できるだけ平静を装ってそう告げる。
ウィランは本を閉じ、ゆっくりと立ち上がった。
「本当に?」
一歩、距離を詰めてくる。
「何か、悪いことはされなかったかい?」
肩に手をのせられて、色気のある美貌が、これでもかというほど近づく。
顔がぶつかりそうな距離。
ここまで近づいたことは、今まで一度もなかった。
ウィランはいつもの軽薄な笑みを消し、真剣な表情で俺を見つめている。
冗談でもからかいでもない、その目。
「……なにもあるわけないじゃん」
そう答えると、彼は一瞬、ほっとしたように目を細めた。
だが俺が続けて、
「でも、素がばれちゃったんだよね」
と呟いた途端、肩をつかむ指の力が強くなる。
「……そう」
低い声。
近くで見つめ合うと、彼の瞳の奥に、暗い情熱のようなものが揺らめいている気がした。
ぞくりとする。
だが次の瞬間、ぱっと手を離される。
「それは残念だったね」
さっきまでの緊張が嘘のように、いつもの柔らかな笑顔に戻る。
「カイルの素は、俺だけの特権だったのに」
冗談めかした口調。
けれど、どこか本気が混じっている気がして、背中がむず痒くなる。
(……雑に扱ってるだけだろ)
そう言い返したかった。
だが、時計を見れば朝の登校時間が迫っている。
「はいはい、もう帰って。朝の準備あるから」
半ば強引にウィランを部屋の外へ追い出し、扉を閉める。
一人になった部屋で、俺は大きく息を吐いた。
(……本当に、ろくな狼ばっかりだ)
そうして、何事もなかったかのよう、学園へ向かう準備を始めた。
だが胸の奥に残るざわめきは、簡単には消えてくれそうになかった。
いつもの天井。昨夜の緊張の名残で体が少し重い。
隣を確認するが、すでに会長の姿はなかった。ベッドはきれいに整えられていて、まるで最初から一人で寝ていたかのようだ。
……と思ったのも束の間。
視界の端に、ありえない光景が映った。
部屋のソファに足を組んで座り、優雅に紅茶を片手に本を読んでいる赤髪の男。
「……は?」
声にならない声が漏れる。
こいつ、なにしてるんだ?
というか、なんで俺の部屋にいるんだ?
その疑問に答えるように、ウィランが顔を上げた。
「おはよう、カイル」
朝日に照らされた、すがすがしいほどの笑顔。
……なのに、なぜか今は背筋がひやりとした。
いつもの軽薄さよりも、もっと別のものを感じる。
「だから言ったじゃないか。学園には狼がいるよって」
その一言で、すべてを察した。
会長が昨夜この部屋にいたことを、把握したうえで乗り込んできたのだ。
(……どこから見てたんだ、お前は)
気持ち悪さが込み上げる。
だが、こいつに何を言っても無駄なのは、長い付き合いで嫌というほど知っている。
「会長とは……ただ一緒に寝ただけだよ」
できるだけ平静を装ってそう告げる。
ウィランは本を閉じ、ゆっくりと立ち上がった。
「本当に?」
一歩、距離を詰めてくる。
「何か、悪いことはされなかったかい?」
肩に手をのせられて、色気のある美貌が、これでもかというほど近づく。
顔がぶつかりそうな距離。
ここまで近づいたことは、今まで一度もなかった。
ウィランはいつもの軽薄な笑みを消し、真剣な表情で俺を見つめている。
冗談でもからかいでもない、その目。
「……なにもあるわけないじゃん」
そう答えると、彼は一瞬、ほっとしたように目を細めた。
だが俺が続けて、
「でも、素がばれちゃったんだよね」
と呟いた途端、肩をつかむ指の力が強くなる。
「……そう」
低い声。
近くで見つめ合うと、彼の瞳の奥に、暗い情熱のようなものが揺らめいている気がした。
ぞくりとする。
だが次の瞬間、ぱっと手を離される。
「それは残念だったね」
さっきまでの緊張が嘘のように、いつもの柔らかな笑顔に戻る。
「カイルの素は、俺だけの特権だったのに」
冗談めかした口調。
けれど、どこか本気が混じっている気がして、背中がむず痒くなる。
(……雑に扱ってるだけだろ)
そう言い返したかった。
だが、時計を見れば朝の登校時間が迫っている。
「はいはい、もう帰って。朝の準備あるから」
半ば強引にウィランを部屋の外へ追い出し、扉を閉める。
一人になった部屋で、俺は大きく息を吐いた。
(……本当に、ろくな狼ばっかりだ)
そうして、何事もなかったかのよう、学園へ向かう準備を始めた。
だが胸の奥に残るざわめきは、簡単には消えてくれそうになかった。
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