悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る

桜城 寧

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翌朝、ゆっくりと意識が浮上する。
いつもの天井。昨夜の緊張の名残で体が少し重い。
隣を確認するが、すでに会長の姿はなかった。ベッドはきれいに整えられていて、まるで最初から一人で寝ていたかのようだ。

……と思ったのも束の間。

視界の端に、ありえない光景が映った。
部屋のソファに足を組んで座り、優雅に紅茶を片手に本を読んでいる赤髪の男。

「……は?」

声にならない声が漏れる。
こいつ、なにしてるんだ?
というか、なんで俺の部屋にいるんだ?

その疑問に答えるように、ウィランが顔を上げた。

「おはよう、カイル」

朝日に照らされた、すがすがしいほどの笑顔。
……なのに、なぜか今は背筋がひやりとした。
いつもの軽薄さよりも、もっと別のものを感じる。

「だから言ったじゃないか。学園には狼がいるよって」

その一言で、すべてを察した。
会長が昨夜この部屋にいたことを、把握したうえで乗り込んできたのだ。

(……どこから見てたんだ、お前は)

気持ち悪さが込み上げる。
だが、こいつに何を言っても無駄なのは、長い付き合いで嫌というほど知っている。

「会長とは……ただ一緒に寝ただけだよ」

できるだけ平静を装ってそう告げる。
ウィランは本を閉じ、ゆっくりと立ち上がった。

「本当に?」

一歩、距離を詰めてくる。

「何か、悪いことはされなかったかい?」

肩に手をのせられて、色気のある美貌が、これでもかというほど近づく。
顔がぶつかりそうな距離。
ここまで近づいたことは、今まで一度もなかった。

ウィランはいつもの軽薄な笑みを消し、真剣な表情で俺を見つめている。
冗談でもからかいでもない、その目。

「……なにもあるわけないじゃん」

そう答えると、彼は一瞬、ほっとしたように目を細めた。
だが俺が続けて、

「でも、素がばれちゃったんだよね」

と呟いた途端、肩をつかむ指の力が強くなる。

「……そう」

低い声。
近くで見つめ合うと、彼の瞳の奥に、暗い情熱のようなものが揺らめいている気がした。
ぞくりとする。

だが次の瞬間、ぱっと手を離される。

「それは残念だったね」

さっきまでの緊張が嘘のように、いつもの柔らかな笑顔に戻る。

「カイルの素は、私だけの特権だったのに」

冗談めかした口調。
けれど、どこか本気が混じっている気がして、背中がむず痒くなる。

(……雑に扱ってるだけだろ)

そう言い返したかった。
だが、時計を見れば朝の登校時間が迫っている。

「はいはい、もう帰って。朝の準備あるから」

半ば強引にウィランを部屋の外へ追い出し、扉を閉める。
一人になった部屋で、俺は大きく息を吐いた。

(……本当に、ろくな狼ばっかりだ)

そうして、何事もなかったかのよう、学園へ向かう準備を始めた。
だが胸の奥に残るざわめきは、簡単には消えてくれそうになかった。
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