悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る

桜城 寧

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第1部

11 生徒会の仕事

朝の鐘が鳴る頃、俺は教室へ向かう生徒の流れには混ざらず、生徒会室へと足を向けていた。
役職持ちは、授業の一部が免除されている。学園の運営や自治に関わる仕事は、卒業後も貴族として生きるうえで必要な実務経験になるからだ。

正直ありがたい。今朝は特に、余計なことを考えずに済む場所に行きたかった。

生徒会室に入ると、すでに俺以外のメンバーは揃っていた。
昨夜から面倒なことが立て続けに起きているが、それを顔に出して突っ込まれるのはごめんだ。
俺はいつも通りの軽薄な笑顔を貼り付け、空いている自分の椅子に腰を下ろす。

「では、本題に入る」

レイン会長がそう切り出した。
「今度の寮対抗戦についてだ」

来たか、と思う。
生徒会は学園行事の運営を担っており、イベント前はとにかく忙しいと噂に聞いていた。内容決め、ルール、予算、参加者の調整……考えることは山ほどある。

この伝統ある男子校の寮対抗戦では、現金代わりに学園で使えるポイントを賭け、五つある寮ごとに戦う。
しかも、その戦いの内容は毎年異なり、その年の生徒会に一任される。つまりこれは、生徒会としての最初で最大の大仕事だ。

「何か、いい案はあるか?」

会長の問いかけに、室内が一瞬静まる。
みんな真剣だ。だからこそ、俺は軽い調子で口を開いた。

「えー、鬼ごっことか、いいんじゃない?」

……沈黙。
全員が「は?」という顔をした。

(あ、これ完全にしくじった)

俺の情報網——つまり先輩のウィラン情報によると、例年は魔法や武力のガチな対抗戦をやったり、出し物の完成度を競ったりと、年によってかなり方向性が違うらしい。

俺としては、どんな内容でも構わなかった。ただ、チャラ男としては、殺伐としたものより、平和で楽に終わるほうがいいだろう。それだけだ。

誰も何も言わないので、「やっぱなしで」と言おうとした、そのとき。

「……それにしよう」

会長の声が落ちた。

「えっ、いいの?」

思わず素が出る。
すると、ローレンスが顎に手を当て、考えるように頷いた。

「確かに、例年とは異なりますが……全員参加型にできますし、観客も楽しめそうですね」

「兄上っぽくて、斬新でいいと思います」

イオまで肯定してくる。

適当に出した案だった。
深く考えていたわけでもない。

それなのに、全員に受け入れられたことが、なんだかくすぐったい。
頬が少し熱くなり、胸の奥がじんわりと温かくなる。

寮は五つ。
情熱の「ブレイズ寮」、冷徹な「マリン寮」、楽観的な「シャイン寮」、秘密主義な「フォレスト寮」、そして役職持ちが所属する気高い「ノーブル寮」。
寮名にはモチーフがあり、生徒の魔力傾向をもとに大まかに分類されている。

鬼ごっことなると、寮ごとに役割を交代しながら行う形になるだろう。
全員が参加できるし、ポイント配分も調整しやすい。

そこからは真剣な話し合いが続いた。
このくらい経費がかかりそうだとか、運営側として各寮からどれくらい人員を確保する必要があるかとか、万が一のトラブル対応とか。
生徒会として、きちんと形にしていく。

チャラ男として過ごしてはいるけど、任された仕事はやる。
計算も資料整理も、ぱぱっと終わらせた。

「……ふぁ~」

一段落つき、思わず独り言が漏れる。
「ちょっと眠くなってきたから、少し寝よーっと」

その瞬間、ローレンスがこちらを向いた。
笑顔だが、眼がまったく笑っていない。

「カイル、仕事は最後まで終わらせてから休憩してくださいね?」

(……終わってるんだけどな)

だが、彼の中では、カイル=適当にやってそうだという認識なのだろう。
俺は軽く手を振る。

「だいじょーぶだいじょーぶ。少し寝たらすぐやるからー」

そう言って椅子に深くもたれ、目を閉じる。
昨夜は面倒ごとに巻き込まれて、全然眠れた気がしなかったのだ。

意識が落ちる直前、どこかからため息が聞こえた気がした。

——まあ、怒られても、あとで考えよう。
そんなことを思いながら、俺はそのまま眠りについた。

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