徒然短編集

後醍醐(2代目)

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お題『その日、世界は静かに変貌していた。』

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  その日、世界は静かに変貌していた。月は紅く染まり、太陽は沈まなくなり、海はその半分が砂漠と化した。そして、世の中のほとんどの人はその変化に気付かず、まるで最初からそうであったかのように過ごしていた。そんな中、僅かながらにもその変化に気付いていた者達がいた。きっかけはSNSへの書き込みだった。『世界が終わる』とだけ書き込まれたそのつぶやきはただの一般人によるものであり、初めは誰からも見向きもされていなかった。しかし、異変に気付き情報を集めていた数少ない人々は違ったのだ。そのつぶやきを、同類へのメッセージとして受け取って同じつぶやきを行った。それをきっかけに、彼らはネットを通じて互いを認識し合ってとある組織を作り上げたのだ。その組織は、始まりのメッセージである『世界が終わる』を合言葉に集い、この変貌の謎を解き明かすべく日夜活動を続けていた……

「とか言って、実際はなーんにもしてないんですけどね」
  「仕方ないだろう、俺達は別段何かの専門家でもなんでも無いんだからな。ただの一般人さ。オマケに、どうも組織の他のメンバーにもその様な行職の人は居ないみたいだし」
「いや、それは分かりますけどね……にしても、本当になんにも進展がないんじゃこの組織の存在意義が分からないっすよ」
「うーん……俺は最初、周りにこの変貌について話しまくったけど頭のおかしい奴だと思われて絶望してたんだ。だから、それが俺一人じゃないってわかっただけでもかなりの救いになったんだよな」
「いやまあ、僕もそこら辺に関しては同じ様に思ってますけどね?にしても……『世界が終わる』のメッセージを見た時は、同士を見つけて安心したと同時にちょっとワクワクもしてたんですよね。このは何か重要な事を、それこそ世界の危機的な事を知っていて、それに立ち向かう事になるのがメッセージの受け取り手なんだろうな!とか……」
「正直、それは俺も思ったさ。だが実際は、俺達が一つの組織としての体をなす所まで来ても世界の終わりどころか、さらなる変貌すらない。更にあれ以来、メッセンジャーも音沙汰がないとなるとなぁ」
「そうっすよ!あのメッセンジャー、結局何度組織が呼び掛けても出てこないし結局よくわからないっすね」
「ああ、一体なんだったんだろうなぁ……」



  私には、秘密があった。数年前、所謂厨二病を患っていた私はいつもの様に厨二ムーブ用のアカウントでそれっぽいつぶやきをしていた。いつもは、たまーに乗っかってやり取りをして遊んでくれる人がいる程度だったので、数日後に来たリプもその類かと思っていた。だが、その時は様子がおかしかった。どんどんリプが来て、更には同じ内容のつぶやきをする人が現れだした。そんな人達の中には、私に対して『自分だけじゃないと知って救われました!』だの言ってくるのもいた。そして怖くなった私がアカウントを暫く放置し、そのSNSからも離れている間に奴らは勝手に私のつぶやきを合言葉にそこそこの組織を作り上げていたのだ。絶対におかしい。当時の私の様に、厨二病真っ盛りな思春期の青少年ならまだ分かる。だが大の大人までもが『世界が終わる』なんて短文に乗っかって『あんな変貌が!』『こんな変化が!』なんて騒ぎ立てるなんて……更には、その組織は……すなわちを探し始めた。怖くなった私はアカウントを削除し、もう二度と厨二ムーブはしないと決めた。ああ、それにしても本当に怖い。月が紅いのも、太陽が二つあるのも、海と砂漠が連なっているのも当たり前なのに……ああも騒げるなんて。おかしな話だなぁ……
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