人喰い遊園地

井藤 美樹

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閑話〈大学生編〉

誘導

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 口にはしないが、村山と松井は薄々感付いていた。

 もしかしたら、自分たちは誘導されてるんじゃないのかとーー。

 薄暗い地下室で、人形たちの襲撃のせいで方向を見失い、本来ある筈の非常階段も見付からない。

 そして、襲ってくるが、致命傷を与えようとはしない人形たち。

 自ずと絞られる出口。

 どんな馬鹿でさえ、遠かれ早かれそこに考えが行き着く筈だ。

 だとしたら、十中八九、罠の可能性が高い。いや、百パーセント罠だろう。

 だからといって、このままこの場所に留まる訳にはいかない。二の足を踏んでもいられない。迷ってる間に自滅したくはないからな。

 非常階段が見付からない以上、罠の可能性が非常に高くても、その場所に向かうしか助かる道はない。罠と分かりながらも乗るしかしかなかった。

 村山と松井は貨物用エレベーターに向かおうと行動を開始する。行動仕掛けてすぐにそれは起きた。

 村山と松井のスマホが同時に鳴り出したのだ。軽快なポップな音楽が流れる。

 松井も村山も確かに電源を切った。お互い確認した筈だ。なのに、スマホが鳴る。画面を見れば電源が入っていた。いつもと変わらない画面。

((絶対ありえない。あり得ないだろ!!))

 村山と松井は軽くパニクる。

 その間もスマホが鳴っている。鳴り続いている。

 静かな地下室で大音量に鳴り響くスマホ。村山と松井の居場所が知れた筈なのに、人形たちは一向に襲っては来ない。

 さすがに、これには村山も松井も恐怖に体を強張らせた。咄嗟に反応が出来ない。早くスマホを止めなければ。頭では分かっている。しかし、体は金縛りにあったかのようにピクリとも動かない。その間も、スマホは最大音量で鳴り続ける。村山も松井も電話には出ない。いや、出られなかった。

 暫く鳴り続けると、不意に切れた。

 静けさが戻る。

 村山と松井は肩の力が、ふと抜けた。

 そのタイミングを狙っていたかのように、スマホから声が聞こえてきた。勝手に作動するスマホ。里奈の時と同じようにスピーカーになっていた。

 触ってもいないのに通話状態になった。またビクッと彼らは体を強張らせた。だが、悲鳴一つ上げない。さすがだ。

 目に見えない恐怖に晒されながらも、意識はスマホから聞こえてくる声に向いていた。流れてきたのは、聞いたことがある声だった。

「切れたと思った? 残念。切れてないよ。クスッ。……それにしても、さすが、村山君と松井君だね。優秀。優秀。ほぼ、ダメージなしで第一ゲームクリアおめでとう!! このゲームを主催した僕も嬉しいよ。それじゃあ、この調子で、第二ゲームを始めようか。勿論、拒否しないよね。もししたら、待ってるのは無惨な死だってことは、賢い君たちなら分かってるよね。ルールは至って簡単。ゴールは貨物用エレベーター。そこまで、村山君と松井が辿り着けば、君たちの勝ち。君たちは自由にここから出ることが出来る。僕の居場所も教えてあげる。生きて僕に会いに来てね。待ってるよ。……それじゃあ、始めようか!! 第二ゲーム【鬼ごっこ】を!! 五分後に鬼を解放するね。それじゃあ、頑張って鬼から逃げてね」

 一方的にそう告げると、スマホはプチっと切れた。

 村山と松井はこの時になって気付く。

 この茶番は最初から仕組まれていたのだとーー。

 自分たちはまんまと罠に嵌められたのだ。

「クソッ!!!! 中川の奴、舐めやがった真似をしやがって!!!! マジ、ぶっ殺してやる!!!!!!」

 キレた松井が怒鳴り、スマホを床に叩きつけた。派手に壊れるスマホ。

 荒い息の松井。

「おい!! キレるのは後だ。さっさとここを脱出して、中川をぶっ殺しに行くぞ!!」

 村山が松井を宥める。

 そういう村山も完全にキレていた。自分より下位の人間に騙されたことに、彼らは非常にプライドが傷付けられたのだ。そこに、花梨や里奈を思う気持ちはこれっぽっちもなかった。

 村山が松井を宥めてすぐだった。

 カタンという音が遠くで聞こえたのはーー。


 
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