今度こそ絶対逃げ切ってやる〜今世は婚約破棄されなくても逃げますけどね〜

井藤 美樹

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第五章 呪いが解けるまで楽しむ予定です

招かれました

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 ほんと、神獣様が私の元に来てくれてから、涙腺が緩くなった。でも、笑えるようになったの。作り笑いでもなく、淑女としての微笑みでもない。心から出る笑み。

 この私がね……

 苦笑が漏れる。

「マリエール?」

 私を気遣うその声が、さらに私の笑みを深くする。

「私、今、とても幸せですわ。これも皆、ゼリアス様と神獣様のおかげですね」

 心から、感謝の言葉を口にした。それでも、感謝しきれない。

「我は何もしておらん」

「そんなことありませんわ。神獣様」

 私は嬉しくてピタッと体を引っ付ける。フワフワな毛が気持ちよくて、私の口元はだらしいまでに緩んでいる。

「…………お前たち、よくこんな場所でいちゃいちゃしておるものよのぉ」

 独特な話し方の甲高い子供の声が通路の奥からした。

 紫の毒霧から姿を現したのは、五歳児のすっごく可愛らしい幼女だった。

 か、可愛いけど……漏れ出てる魔力がヤバ過ぎる。

「おお、久し振りだな、魔王。元気にしておったか?」

 少し尻尾を振りながら、神獣様は幼女に話し掛ける。

 ま、魔王!? この幼女が!? 容姿に惑わされたら駄目よ、マリエール!! この桁違いの魔力は、魔王でもおかしくないわ。アレク……こんなのに勝ったの!?

 チラリと魔王様が私を睨み付ける。だがすぐに、神獣様に視線を戻した。

「儂は相変わらずよ。主も元気そうでなりよりだ。ところで、そこの人間は主の番か? なら、めでたいのぉ」

 番?

「ち、違う!! ゼリアス様に頼まれてマリエールといるのだ!!」

 焦って否定する神獣様。

 事実そうだけど、少し悲しい。

「そうなのか? その割には、そこの人間、傷付いてるようじゃがのう」

「何を言っておる!! マリエールにはカインという婚約者がおる!! それに、我とマリエールは家族みたいなものだ!!」

 家族……

「嬉しいです!! 神獣様!!」

 思わず、抱き付いてしまった。

「コラッ!! 止めんか!!」

 慌てる神獣様。でも、無理矢理振払おうとはしない。ほんと、優しい。

 神獣様が焦れば焦るほど、ニヤリと笑う魔王様。幼女がする表情じゃないわ~。

「失礼だぞ、人間。儂はこのような容姿だが、お前よりは遥かに長く生きておるわ」

 あ~魔王様もか……

 目の前にいる魔王様も、心の声を聞くことができるようです。うん、別に読まれてもいいけどさ……

「いいのか?」

 何故か、魔王様は探るような目で私を見ている。

「構いませんわ。別に読まれて困ることは考えていませんから。不快に思わせることがあったとしても。それに反論して、殺されるのも嫌ですし」

 実力差あり過ぎだから。指先だけで、私確実に死ぬから。うん、死にたくない。

「そうかそうか。おもしろいの、人間。特別に許可してやるわ。人間で初じゃぞ。儂の城に人間を招くのはな」

 人が悪い顔で告げる魔王様。「よかったな」と言う神獣様。

 私は全身から汗を噴き出す。だってそうでしょ。魔族の中には、人間を主食にするものもいる。そんな中に、私が!? 肉食獣が閉じ込められた檻にいれられたウサギだよね。ここはやんわりと、断らなきゃ。

「あ……別に、私のことはお気になさらずに。ここで待っておりーーヒッ!!」

 魔王様が手を上げると、後ろからヒドラが!!

 ヒドラの目が私を真っ直ぐ見詰めている。普通、この時点で死んでるからね!! 石になって。ウッ!! 完全に餌を見る目だわ……

「儂はどちらでもよいが」

「……お招き、ありがとうございます」

 私は深々と頭を下げた。

「そうか。では行くか」

 とてもとても良い笑顔で、魔王様はそう告げると、ヒドラが頭を下げた。

 …………まさか……嘘だよね。

「何をグズグズしておるのだ?」

 ヒドラに乗った魔王様が、私のすぐ前で尋ねる。必然的に、私はヒドラをドアップで見ることとなった。

 あ……私、終わったわ……


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