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成り立てほやほや王女殿下の初仕事
04 閉ざされた扉
しおりを挟む「陛下、少しお時間いただけますでしょうか?」
近衛騎士に促され執務室に入ると、私は書類に目を通しているお父様に声を掛けた。お父様はまだ仕事中だからね。
近衛騎士は慣れてるので、イシリス様に抱っこされたままの入室に顔色一つ変えない。
自分で歩いて行こうとしたんだけどね、体中が筋肉痛だってイシリス様知ってるから、有無を言わさず抱っこされちゃったわけ。ほんとに、私に溺甘なんだから。
元宰相様はゴホンと軽く咳をしてから、目を逸らしている。ほんのり耳が赤い。
「構わんぞ。ちょうど、休憩したかったからな」
お父様は書類から顔を上げた。控えていた侍女が下がる。
「ダラキューロ様もおいででしたか、ちょうどよろしかったですわ」
ダラキューロ様は元宰相様のことよ。いつまでも、元宰相様じゃいけないでしょ。
「私に何か?」
ダラキューロ様が少し構えながら尋ねてくる。
「実は、一緒に見て欲しいものがあるのです」
「……見て欲しいものですか?」
にっこりと微笑みながら言うと、少し警戒されたわ。そんなに私怖いかな?
「ええ。今の元王国の様子ですわ。……陛下、難民の数は想像しているより、かなり少なくなりそうですわ」
私をソファーにソッと下ろしたイシリス様は、私の頭に軽くキスをしてから、先程とリアス様がいた時と同じ動作をする。
映し出される映像に、ダラキューロ様は顔色をなくす。強者のお父様も、厳しく険しい表情で映像を凝視していた。
映し出されたのは、倒壊した神殿と瓦礫の上で民を襲う、魔物の姿。音声を流さないのは、イシリス様の優しさね。
「結界が壊れたのか……」
「ええ、当然ですわね。ベルケイド王国に戻る途中の落雷は神殿や教会でしたし。王国中の神殿、教会は全て破壊されてます。創世神様たちの意向で」
ダラキューロ様は口元を押さえ、吐き気を我慢している。まぁ、役所勤めには厳しい映像よね。でもね、その責任の一端は、貴方にもあるのよ。
「……酷い」
ダラキューロ様の口から漏れる言葉を私は咎める。
「酷いですか……それを、貴方が仰るのですか? 確かに、民は馬鹿王族たちのせいで、このようなことになっていますが、全員というわけではありませんよ。よく見てくださいな。襲われない民もいるでしょう。彼らは熱心な信者だったようですね。与えられる加護を当たり前だとは思わず、感謝してきた者たちですわ」
ダラキューロ様は反論できずに黙り込む。
魔物は無差別で襲っているわけじゃない。といっても、大半が襲われてるんだけどね。王族も腐ってたけど、民も腐ってたのね。
神は平等よ。一切感情を挟まないから。罪の重さに年齢も性別も背景も関係ない。一番、シビアだと思うわ。
「こらこら、あまり、虐めるな」
お父様に怒られちゃった。でも、退室を促さないのだから、お父様も同じ考えよね。
「あら、事実を述べただけですけど」
お父様は苦笑する。
「王城はどうなってるんだ?」
お父様もそこが気になるみたいね。私もそう。私はイシリス様に視線を移し、小さく頷いた。
イシリス様は再度宙に手やると、映像が切り替わった。
結界が張られたままの王城の入口に押し寄せる、血塗れの民。背後に迫る魔物。
あろうことか、王城の入口は厳重な扉で閉ざされていたのだった。
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