33 / 78
神罰が一回だけとは限らない
11 諦めたくないの
しおりを挟む私の問い掛けに、ダラキューロ様は、沈んだ暗い表情を浮べ、重く口を開く。
「……そうですね。人質としてなら、生かすのが当然でしょう」
あまりにも含みのある言い方に、私の表情は険しくなる。まるでもう、その侍女がこの世にいないかのような言い方だったから。
「……まるで、亡くなったかのような表現ですね」
思わず、そう口にしていた。
「ミネリア王女殿下のご推察通り、侍女はすでにこの世にはいません」
ダラキューロ様の言葉に、私は完全に言葉を失った。
死にたくなくて必死で生きようとしている人を、私はこれまでその目で見てきた。そんな中で、簡単に扱われる命の軽さに、私の胸が鋭く痛む。思わず、胸を押さこむほどに。
そんな私の肩を、イシリス様が優しく手を添え抱き寄せてくれた。
「犬、猫のように殺したのか?」
ずっと黙って聞いていたイシリス様が尋ねる。寒くはないのに、その口元からは白い息が吐き出された。
ダラキューロ様は小さく首を横に振る。
「正確に言えば、死に追いやったのです……直接的ではないにせよ、殺したのは間違いありません。ただ、国王ではありません。殺したのは、屑王子です」
「屑王子が?」
私はイシリス様から体を離し、姿勢を正した。
「侍女には婚約者がいました。平民でしたが、愛し合っていたそうです。二年、侍女として城に上がった後婚姻する予定だったと聞いています。ですが、屑王子が嫌がらせか、それとも、ただたんに食種が動いたのか、無理矢理ーー」
さすがのダラキューロ様も最後まで言えなかった。
怒りで、私はギリギリと奥歯を噛み締める。
「侍女は自ら命を断ったのですね」
わかりきっていたこととはいえ、どこまでも、自分たち王族以外を人としては見ていないのね。屑どもが!!
「何度も関係を無理矢理強いられ、自分の婚約者、そしてリアスとの板挟み。追い詰められた侍女は、とうとう自ら命を断つまでに」
その前に救えなかったの?
そう口に出しそうになった。救えたのなら、救っていただろう。ダラキューロ様もリアス様も。
それにしても、下半身が使えなくなっただけじゃあ、甘いわね。
「侍女がこの世を去り、リアス様はさぞかし己を責めたでしょうね。そしてそれは、今も続いているのね」
リアス様の自己評価の低さは、心を虐げられ、自我を奪われたことからきたものだったのね。
だって、あの屑たちが、リアス様に侍女の死を内緒にするわけないでしょ。あることないこと、面白おかしく吹聴して、リアス様を追い詰めるに違いないわ。自分が楽するためだけにね。
その度に、侍女は死後も辱めにあう。
人の皮を被った屑たちは、リアス様の苦痛に歪む顔を酒の肴にして楽しんでいたってわけね。
「はい……」
とても心痛な様子で小さく頷くダラキューロ様。
「リアス様が自信を取り戻すのは時間が掛かりますね。でも私は、リアス様を専属侍女にすることを諦めていませんわ」
心の傷を癒やすのは、体以上に時間が掛かる。
しかし、リアス様の場合、その傷が癒えることは絶対ないわ。だからといって、その傷を気にして先に進めないのは悲しいと思う。だから私は、諦めたくないの。
「……ありがとうございます、ミネリア王女殿下」
ダラキューロ様は深々と私に頭を下げ、部屋を出て行った。彼が出て行ってから、私は小さな声で呟く。
「下半身がなくなっただけじゃ甘いですわね、イシリス様。屑とはいえ人族だったので、人族としての最低限の扱いをしてきましたが、もはや、その必要はありませんね。……人の皮を被ったバケモノだもの、それなりの対応に変更しなくてはね」
私はイシリス様にそう提案する。
「そうだな。バケモノに慈悲の心は必要ないからな」
その言葉に私は頷いた。
189
あなたにおすすめの小説
その発言、後悔しないで下さいね?
風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。
一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。
結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。
一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。
「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が!
でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません!
「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」
※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
※クズがいますので、ご注意下さい。
※ざまぁは過度なものではありません。
私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです
風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。
婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。
そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!?
え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!?
※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。
※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
死を望まれた王女は敵国で白い結婚を望む。「ご安心ください、私もあなたを愛するつもりはありません」
千紫万紅
恋愛
次期女王として王位継承が内定していたフランツェスカ。
だが戦況の悪化を理由に父王に争いの最前線に送られた。
それから一年、命からがら王都へ戻った彼女を待っていたのは労いの言葉ではなく、敵国・シュヴァルツヴァルトの王太子への輿入れ命令。
しかも父王は病弱な異母妹アリーシアを王妃に据え、フランツェスカの婚約者レナードを王にするという。
怒りと絶望の中フランツェスカはかつて敵将であったシュヴァルツヴァルト王太子・フリードのもとへお飾りの妻として嫁ぐことを決意する。
戦地での過去を封じ、王族としての最後の務めを果たすために。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
あなたに未練などありません
風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」
初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。
わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。
数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。
そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる