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成り立てほやほや王女殿下の初外交
02 こういう場合策士っていうのよね
しおりを挟む「……断ったのですよね、陛下」
やや、うんざり気味で私は確認する。
エンドキサン王国から、またしても書簡が送られて来たからと、私たちはお父様に執務室に呼び出された。ラリーお兄様も。
「もちろん、断った。今回は別件でだ」
お父様も内心イラッとしてるみたいで、乱暴に書簡を扱う。
留学は諦めてくれたってこと? だとしたら、なぜ私がここに呼ばれたの? 考えられるとしたら、
「別件ですか……もしかして、別アプローチからの打診でもあったのですか?」
普通に考えて、それしかないよね。ほんと、面倒くさいことになったわ。
「なんでも、生きる屍の件で緊急に会議を開きたいそうだ。その会議に、ミネリア、お前の参加を希望している」
お父様の台詞に私は首を傾げる。
「なぜ、私が参加しなければならないのです? 生きる屍の件も、食べる物がなくなれば、呪いを維持することができなくて、やがて崩れ落ちるでしょう。王都はまだ食べ物が残っているので、念のために、イシリス様が結界を張ってくれましたわ」
後一か月もしないうちに、生きる屍はヘドロとなり、土壌を穢して崩れ落ちるはず。穢れた土壌に作物は育たない。数百年は、植物も生えない、人も住めない土地になるでしょうね。そんなの常識でしょ。
なので、そもそも会議をする理由すらない。っていうか、皆が集まるまでにほぼ解決しそうじゃない。
そんな名ばかりのどうでもいい会議に、お父様も、ましてや、私が参加する必要性はどこにあるの? ただの外遊じゃない。
「ミネリア、留学の件は陛下から聞いている。……それにしても、よほど、ミネリアを取り込みたいようだな」
眉間に皺を寄せ、ラリーお兄様が険しい声で言った。
「正確に言えば、イシリス様ですけどね。あまりにも、あからさま過ぎて嫌気がさしますわ」
私の声も嫌悪感が増す。
「で、どうしますか? 陛下」
ラリーお兄様がお父様に意見を仰ぐ。
「そうだな……ダラキューロ、お前はどう考える?」
お父様も迷っているようね。小さいながらも、国だからね、今までのように王国だけとの交渉じゃすまないもの。周辺諸国との外交も必要になる。とはいっても、最低限しかするつもりはないけどね。それでも、必要なのはかわりない。
「そうですね……取るべき道は二つのうち一つです。まず一つ目は、エンドキサン王国は生きる屍の呪いのことを詳しく知らないようなので、説明書とともに、会議の必要性がないことを記した書簡を送る。この場合、さらなる書簡が送られてくることを念頭におく必要がありますね」
お父様もラリーお兄様も唸ってる。私も唸りたいわ。
確かに、ダラキューロ様の言う通りよね。ここまであからさまだもの、さらに加速しそうだわ。マジで勘弁してほしいわね。あまりにも、断り続けると角も立つし……最低限の付き合いしかしないつもりでも、軋轢は避けたいもの。
「二つ目は、一度あちら側の手の内に乗り、きっぱりと要求を却下することですね」
短っ!! それに、簡単に言うわね。
「一つ目はわかるが、却下って、簡単にいくものなのか?」
お父様が尋ねる。
「まぁ普通なら、簡単にはいきません。でも、できなくはありませんよ。つけ込める隙きは、十分ありますから」
そう答えたダラキューロ様は、お父様も驚く悪役顔でした。
完全に染まってきたようね。っていうか、それが本当の顔かも。なんせ、あの人間を止めた屑たちの代わりに、王国を裏から支えていたんだから、お腹は真っ黒じゃなきゃできないよね。あぁ、こういう場合は、策士っていうんだね。
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