言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹

文字の大きさ
36 / 78
成り立てほやほや王女殿下の初外交

02 こういう場合策士っていうのよね

しおりを挟む


「……断ったのですよね、陛下」

 やや、うんざり気味で私は確認する。

 エンドキサン王国から、またしても書簡が送られて来たからと、私たちはお父様に執務室に呼び出された。ラリーお兄様も。

「もちろん、断った。今回は別件でだ」

 お父様も内心イラッとしてるみたいで、乱暴に書簡を扱う。

 留学は諦めてくれたってこと? だとしたら、なぜ私がここに呼ばれたの? 考えられるとしたら、

「別件ですか……もしかして、別アプローチからの打診でもあったのですか?」

 普通に考えて、それしかないよね。ほんと、面倒くさいことになったわ。

「なんでも、生きる屍の件で緊急に会議を開きたいそうだ。その会議に、ミネリア、お前の参加を希望している」

 お父様の台詞に私は首を傾げる。

「なぜ、私が参加しなければならないのです? 生きる屍の件も、食べる物がなくなれば、呪いを維持することができなくて、やがて崩れ落ちるでしょう。王都はまだが残っているので、念のために、イシリス様が結界を張ってくれましたわ」

 後一か月もしないうちに、生きる屍はヘドロとなり、土壌を穢して崩れ落ちるはず。穢れた土壌に作物は育たない。数百年は、植物も生えない、人も住めない土地になるでしょうね。そんなの常識でしょ。

 なので、そもそも会議をする理由すらない。っていうか、皆が集まるまでにほぼ解決しそうじゃない。

 そんな名ばかりのどうでもいい会議に、お父様も、ましてや、私が参加する必要性はどこにあるの? ただの外遊じゃない。

「ミネリア、留学の件は陛下から聞いている。……それにしても、よほど、ミネリアを取り込みたいようだな」

 眉間に皺を寄せ、ラリーお兄様が険しい声で言った。

「正確に言えば、イシリス様ですけどね。あまりにも、あからさま過ぎて嫌気がさしますわ」

 私の声も嫌悪感が増す。

「で、どうしますか? 陛下」

 ラリーお兄様がお父様に意見を仰ぐ。

「そうだな……ダラキューロ、お前はどう考える?」

 お父様も迷っているようね。小さいながらも、国だからね、今までのように王国だけとの交渉じゃすまないもの。周辺諸国との外交も必要になる。とはいっても、最低限しかするつもりはないけどね。それでも、必要なのはかわりない。

「そうですね……取るべき道は二つのうち一つです。まず一つ目は、エンドキサン王国は生きる屍の呪いのことを詳しく知らないようなので、説明書とともに、会議の必要性がないことを記した書簡を送る。この場合、さらなる書簡が送られてくることを念頭におく必要がありますね」

 お父様もラリーお兄様も唸ってる。私も唸りたいわ。

 確かに、ダラキューロ様の言う通りよね。ここまであからさまだもの、さらに加速しそうだわ。マジで勘弁してほしいわね。あまりにも、断り続けると角も立つし……最低限の付き合いしかしないつもりでも、軋轢は避けたいもの。

「二つ目は、一度あちら側の手の内に乗り、きっぱりと要求を却下することですね」

 短っ!! それに、簡単に言うわね。

「一つ目はわかるが、却下って、簡単にいくものなのか?」

 お父様が尋ねる。

「まぁ普通なら、簡単にはいきません。でも、できなくはありませんよ。つけ込める隙きは、十分ありますから」

 そう答えたダラキューロ様は、お父様も驚く悪役顔でした。

 完全に染まってきたようね。っていうか、それが本当の顔かも。なんせ、あの人間を止めた屑たちの代わりに、王国を裏から支えていたんだから、お腹は真っ黒じゃなきゃできないよね。あぁ、こういう場合は、策士っていうんだね。
 

しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

その発言、後悔しないで下さいね?

風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。 一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。 結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。 一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。 「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が! でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません! 「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」 ※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。 ※クズがいますので、ご注意下さい。 ※ざまぁは過度なものではありません。

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』

鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。 --

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻

白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。 幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。 家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、 いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。 ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。 庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。 レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。 だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。 喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…  異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

王太子殿下が私を諦めない

風見ゆうみ
恋愛
公爵令嬢であるミア様の侍女である私、ルルア・ウィンスレットは伯爵家の次女として生まれた。父は姉だけをバカみたいに可愛がるし、姉は姉で私に婚約者が決まったと思ったら、婚約者に近付き、私から奪う事を繰り返していた。 今年でもう21歳。こうなったら、一生、ミア様の侍女として生きる、と決めたのに、幼なじみであり俺様系の王太子殿下、アーク・ミドラッドから結婚を申し込まれる。 きっぱりとお断りしたのに、アーク殿下はなぜか諦めてくれない。 どうせ、姉にとられるのだから、最初から姉に渡そうとしても、なぜか、アーク殿下は私以外に興味を示さない? 逆に自分に興味を示さない彼に姉が恋におちてしまい…。 ※史実とは関係ない、異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。

処理中です...