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これって、乙女ゲームのサブストーリーでしょうか
第四話 そうそう治りませんよね
しおりを挟む皇宮に戻る前に、ちょっと寄り道です。
リムお兄様もお母様を心配していましたからね。無事な姿を見て安心させたいと思い、我が城まで連れて来ました。こういう機会じゃないと、リムお兄様は来てくれませんからね。お父様のせいで。
「ここが、セリアの城か……中々良い城だな」
ええ。自慢の城ですわ。そう言ってもらえると、内装に力を入れたかいがありますね。でも、
「曰く付きの城ですけどね」
苦笑が漏れます。
「出るのか?」
目を輝かせて両手を前にやりながら、リムお兄様は訊いてきます。こういうの、意外とリムお兄様は好きなんですよね。反対に私は特に何も感じませんけど。
「残念ながら、私は見たことはありませんが、警備の者が白い影を深夜二体見たとか……。報告書にそう書いてありましたわ。何だったら、暫く泊まってみます?」
その白い影の正体が誰かは容易に想像つきますけどね……。私からしたら、少し複雑な気持ちになりますわ。
「いいのか?」
「構いませんわ。リムお兄様もたまには休養が必要ですもの」
私も中々仕事中毒ですが、リムお兄様は輪を掛けての仕事中毒者。そうなった原因は、言わなくても分かりますよね。お父様のせいですわ。お父様は独裁者気質。裏方は当然、フォローにてんてこ舞い。といったところでしょうか。たまには、リムお兄様も心身ともにリラックスする時間が必要ですわ。でなければ、倒れてしまいますわね。
といっても、中々難しいのが現状。なので、今回はリムお兄様にとって、とてもいい機会ですわ。お母様には悪いですけど。とはいえ、リムお兄様のことだから、完全な休養にはならないんでしょうね。
「優しい妹を持って、俺は幸せだな。
でも、皇宮のことも気になるから、母上を見舞ったら一度戻る。少し仕事を片してから、こっちに来てもいいかな?」
やっぱり仕事中毒は、そうそう治りはしませんね。
「送迎はお任せ下さい」
リムお兄様一人では、転移魔法は使えませんからね。魔力は低いですが、その代わり、頭がとても良いのです。それに、一番の常識人ですわ。少し悪趣味ですけど。
「ありがとう、セリア。
……で、後回しになったけどいいのか? あのまま父上を放っておいて」
本当に後回しになりましたね。
「私たちにいったい何が出来るんですか?
そもそも、私たちの言葉に耳を傾ける人ではないでしょう。いいんですよ。あれで。闇落ちしようがしまいが、お父様には違いありませんから。
それに……お父様な闇落ちしませんわ」
私には確信がありました。
「どうして、そう言い切れるんだ?」
不思議そうな顔をしながら訊いてきます。
理由を訊かれて、何と説明していいのか悩みますが、上手く伝えられなかったらすみません、リムお兄様。
「知っての通り、お父様は矜持がとても高い方ですわ。それに、妙な見栄を張られる方でもありますよね。
お父様の見栄は、お母様に子供を見るよう目で見られなくないことから生まれたものですわ。
それも、お母様があってのこと」
「だったら尚更だろ」
まぁ、普通に考えたらそうなりますよね。
「リムお兄様。お母様に対するお父様の執着を甘く考えたらいけませんわ。
お母様のためなら、それこそ本当に世界を敵に回しますよ。躊躇わずに」
「つまり……セリアは、父上の執着心を煽りに行ったのか?」
もしくは、思い出させに行ったと言った方が正しいですね。
「はい。ショックが強過ぎて、自暴自棄の塊になっていると思いましたので」
その予想は大当たりでしたね。
「自分なら、そう思うと考えたのか……」
その台詞、何か引っ掛かりますね。自分でもよく分かってますよ。中身はお父様似だって。私もシオン様のためなら、世界を敵に回しても構いませんけどね。高笑いしながら、迎え撃ちますよ。
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