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第二章 ラッシュ港攻略
晴れた空
しおりを挟む「アーク、連れて来たぞ」
ジムが芋虫二号を引き摺りながらやって来た。その肩にはリアが。肩車だな。幽霊に肩車が出来るのかは疑問だけど、ちゃんと出来てる当たり、さすが【凶霊】。マリア曰く、俺とリアは従魔契約を交わしているらしい。そのせいもあるって言っていたな。
手伝うのを許可したからだな。
【凶霊】っていうのは、アンデッド種の中で最強最悪と言われている種族だ。
最悪と言われている一つが、魔法攻撃も物理攻撃も通用しない点だ。唯一通用するのは聖魔法だけ。その魔法も、聖女しか使えない特殊な魔法でしか倒せない。それって、ほぼ無敵だよな。昔、【凶霊】を生み出した国が、【凶霊】に滅ぼされてしまったと聞いたことがある。
所謂、幽霊の最強版ってやつだ。進化するには、ある一定の条件を満たしていなくてはならない。
その条件っていうのが、死ぬ瞬間、憎しみがある一定のラインを越え、且つ長時間の苦痛を感じながら死なないと進化出来ないと言われている。
つまりリアは、子供でありながらその条件を満たした。あのクズたちのせいでな。
俺とリアの会話は結構な人数に聞かれていたおかげで、あっという間に皆に受け入れられ、もう立派にカイナ班の一員になった。俺の次に懐いているのかジムだな。特に尻尾と耳がお気に入りらしい。幽霊でもモフモフは正義なんだな。
「ああ。悪い。これ書き終わるまで、そこら辺に転がしといといてくれ」
「分かった」
言葉通り、ジムは荷物を床に転がす。荷物が呻き声を上げた。
『アーク。これ、殺すの?』
無邪気な顔でリアが訊いてきた。
凶悪な【凶霊】に顔を覗き込まれて、荷物が失神寸前だ。
少し生気吸ってるのか? まぁ多少はいいか。動ければいい。
「殺したり失神させたら駄目だ。頼みたいことがあるから。さてと、書けた。おい、しっかりしろ」
俺は軽く肩を蹴る。騎士は呻きながら目を開ける。
「この書簡とこの魔法具を、エルヴァン聖王国、国王陛下に届けろ」
そう命令すると、荷物は睨み付けてきた。
へぇ~まだ、そんな気力が残ってるのか、こいつ。
『やっぱり殺す? アークに楯突いてるよ』
凶霊のリアにとって、俺とその仲間以外の人は殺してもいい存在らしい。
「殺すなって。さて……反抗したい気持ちは分かるけど、それって利口じゃないと思わないか。だってそうだろ。みすみす助けを呼びに行けるチャンスをふいにするなんて、俺ならしないな」
ニヤリと嗤いながら言う。
「…………極悪人が」
裏切り者の次は極悪人か……
俺に撮ったら最大の褒め言葉だな。
『どうする?』
マリアがよく言う黒い笑みを浮かべながら改めてそう尋ねると、騎士は渋々書簡を受け取った。
「ジム、マリアと一緒にコイツを町の外に。帰りはゆっくりでいいからな」
リアを外に連れ出すいい機会だ。
リアの母親が好きだった町を見るいい機会だろ。まぁ、所々壊れてるけどな。
それでも、この晴れた空も一緒に見て欲しいと思うのは俺だけじゃないだろ。
それに、マリアはリアを実の妹のように可愛がってる。名前が似てるから余計に親近感が湧くのかもしれないな。
リアに似合いそうな服とかを見るのもいいだろうな。一応意識体だから、想像で服を変えることも出来るようだし。それって、一応着替えになるのか。
「リア。明日、例の奴隷商が来る予定だ。リアを凶霊に変えたクソ親どもを引き渡すんだが、どうする? 立ち会うか?」
嫌なら、俺の方でどうとでもするが。
『勿論、立ち会うよ!!』
即答だな。
「そうか、分かった。楽しんでこい」
俺は笑うと三人を見送った。
「……食い付いて来ると思うか?」
書類の整理をしながら、レイがふと訊いてきた。
こいつにしたら、珍しく自信がなさそうだな。
「絶対、食らい付いて来るな。賭けてもいい」
「だったら、賭けにならないな」
「だな」
まず間違いなく、奴らは食らい付いて来る。そうでないと、自分たちの正当性が根本から揺らぐからだ。そうでなくても、既にエルヴァン聖王国と聖教国は追い詰められている。
五年前のあの日からーー
「…………晴れてる……」
騎士が信じらないものを見るように、空を見上げ呟く。
「当然だろ。空に太陽があるんだから。……ああ悪い。お前らの国には太陽がないんだったな。当たり前か、神様に嫌われた国だしな。いや、違ったが、捨てられた国だったか」
馬鹿にしたような口調でジムは言い捨てる。
「どっちでも、同じじゃない。最低限の加護しかないんだから」
マリアが答える。
「無礼な!! 我々の国が神に嫌われてる訳ないだろ!! 俺の国には勇者様がいるんだ!!」
明らかに馬鹿にした態度の獣人と、どうでもいい態度をとる悪魔に、腹を立てた騎士は否定する。それを聞いた二人は鼻で笑った。
「なら訊くが、この町の所有権が、エルヴァン聖王国からアークに変わった瞬間晴れたのはどうしてだ? どうみても、エルヴァン聖王国が嫌われてるのは明らかだろ。それこそ、俺らにとってどうでもいい話だけどな。精々、自分が信じる勇者様に助けてもらうことだな」
ジムはそう吐き捨てると、騎士の体を乱暴に押した。騎士の体は無事結界を通り抜けれた。
「もう入っては来れないぜ。自由になれてよかったな騎士さんよ。じゃあな、無事届けろよ。俺たちが常に見ていることを忘れるな」
そう告げると、ジムはマリアとリアを連れて戻って行った。
残された騎士は今にも雨が降りそうな曇り空の下、呆然と立ち尽くしていた。
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