空っぽの私は嘘恋で満たされる

井藤 美樹

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やっぱり、聞かれていたようです

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 立木さんに、問答無用でドナドナされた私。

 自家用車の後部座席に放り込まれ、そのままやって来ました立木さん家。かなりデカイ家だった。御屋敷だよ、これ。そして通されたリビングで、私は借りてきた猫状態でソファーの端に座っている。

「はい、ココアどうぞ」

「ありがとうございます……」

 差し出されたマグカップを受け取り、口を付ける。甘い香りと味に、なんかほっこりとしてしまいそうになる。だけど、今はほっこりできる雰囲気じゃない。

 落ち着かないのもあるけど、立木さん、さっきから口数が少ないんだよね。もしかして、私とラキさんの話聞かれたかな? 確認したいけど、墓穴を掘りそうで確認できない。それに、なんか立木さん、怒ってる気がするんだよね……

「もうすぐ、あの子たちも帰って来ます。話はそれからで」

 その台詞に、口元が引きつる。

 あ~これは、聞かれたわね。アウトだよアウト。台詞だけでは判断つかないけど、口調でなんとなくわかるでしょ。骨壺を割られたことだけなら、怒りだけだと思うけど、口調の端々に別の感情が見え隠れするの。悲しみとか辛さとか……ね。

「……はい」

 私は小さく頷くしかなかった。



 
 それから三時間後――

「どうして、そんな薄情なことを言うの!?」

 立花ちゃんに泣かれながら責められていた。亮君も泣くのを我慢してるけど、その目は私を責めている。立木さんは大人だからか落ち着いて、私たちを冷静に見ていた。

「ご、ごめんね。でも、決めたことだから……」

 一人で最後は逝きたいことを素直に話したの。

「私たちがいて、邪魔なの!?」 

 そう言われると思っていたわ。 

 私の服を掴み、そう尋ねる立花ちゃんの手は冷たく、震えている。

「それは違うよ。邪魔なんかじゃない、そんなこと思ったことないよ」

「なら、どうして!?」

 被せ気味に立花ちゃんは尋ね、私に詰め寄る。訊かれても困る。私自身、明確な理由なんてないから。ただ、そうしたいと思っただけ。いて言うとしたら、

「……猫と一緒かな。猫って、自分の死期が近付くと飼い主の前から姿を消すでしょ、あれと同じかな」

 かなり理由としては弱いよね。でも、それに近い。

「三奈さん、人間じゃない……」

「まぁ、そうなんだけど……最後は何も考えずに逝きたいの。大事な思い出だけを持ってね。立花ちゃんや亮君、立木さんには凄くお世話になったよ。感謝してるし、とても助けられた。今も助けられてる。そんな皆が見送ってくれたら、絶対未練が残るわ。それは駄目だから……一人で逝くの。最後の最後まで、我が儘言ってごめんね」

 これだけは、何があっても流されずに、自分の想いを突き通そうと決めたの。

 罪悪感と後ろめたい気持ちを誤魔化ごまかすように力なく笑うと、立花ちゃんがガバッと私に抱き付いてきた。

「立花ちゃん?」

 肩が震えている。抱き締め返した方がいいのかな、

「…………わかった。もう何も言わない。言わないから、黙って出て行かないで。それまで、ここにいて。ちゃんと受け止めるから、だから……お願い」

 そうしたいけど……

「さすがにそれは……」
 
 甘え過ぎだよ。

「あの家には、もう帰らないんだろ? だったら、逝くまでの間、どこに泊まるつもりなんだ?」

 ずっと黙っていた亮君が訊いてきた。

 私は言葉に詰まる。さすがに、ネカフェや漫喫とは言えないよね……

「ネカフェか満喫だろ?」

 亮君自身質問して、自分で答えている。完全に読まれてるね、私。

「それは認められないね。君はもう死んでいるけど、触ることもできるし、ご飯も食べられる。普通の女子高生となんら変わらない。何かあったら大変だ。だから、家に泊まりなさい。嫌なら、あの家に私たちも泊まるが、その方がいいかな?」

 究極の二者選択。

 有無を言わさない大人の迫力に、私はたじろぐ。そして、立木さんに正論をこんこんと解かれて簡単に陥落かんらくしちゃった。でも、一人で逝くことを許してくれたことには感謝かな。

 ありがとう、皆……



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