48 / 64
家族ってこういうものなのかな
しおりを挟む「あっ……また、手が半透明になってる」
今日で三回目ね。なんか慣れたな……
時間にしては数分程度だけど、ゆっくりと、でも確実に進行しているみたい。一週間切ったあたりから症状が急に出始めた。半透明になる時間も回数も、この二日、特に多くなった気がするよ。
幸いにも、亮君と立花ちゃんには見られていない。でも、立木さんには見られちゃった。何も言われなかったけど、それでも固まっていたし、ショックを受けていた。ソッと隠したけどね。
そりゃあ、そうだよね。なんか、悪いことしたな。嫌なものを見せちゃった。
でも……こればかりは、私にはどうすることもできない。前に発作を起こしてから本能的に感じていた。私の存在が以前より希薄になってきたなって。それが、謙虚に出てきただけ。
おそらく、私に施された奇跡の力が弱くなって、本来のあるべき姿に戻ろうとしているの。
そう――奇跡は永遠には続かない。
続かないからこそ、奇跡って言うんだね。
「どうしたの? なんか、暗い顔して……あ~元気になったみたいね、どうするの?」
スマホの画面を眺めてると、立花ちゃんが後ろから話し掛けてきた。隠してないので、自然と画面が目に入る。
「家にいないことに気付いたみたい。すっごく、心配してる、蓮君」
昼来てもいないし、夜も真っ暗だと心配するよね。大体の行き先は想像ついても。
「気付かれたの? それで、どうするつもり?」
「まぁ、素直に言うよ。立木さんの家にいるって。病院もここからだと近いし」
嘘じゃない。実際、近いんだよね、二駅ほどだし。理由はなんとでもなるよ。蓮君はこの家を知らないし、確かめようもないからね。なので、早速そうラインで送った。
「……本当に会わないつもり?」
立花ちゃんの問いに、私は小さく頷く。
半透明な様を見られたくないからね。寂しくて辛いけど、そう決めたから。おかしいわね。何故か、立花ちゃんの方が泣きそうな顔になってるよ。本当に、優しい子だね。
「うん、会わない」
「そう……」
何か言いたそうだけど、立花ちゃんは何も言わなかった。言っても、私の考えが変わらないってわかってるから。
立花ちゃんは会うべきだって思ってるんだろうな。でも、私はそこまで強くはないし、清廉潔白でもないからね、それはちょっと無理かな……
「でも、一度戻らないといけないかな」
「何かやり残したことでもあるのか?」
今度は亮君が訊いてきた。
「うん、急に来ることになったから、できてないんだよね。明日にでも行ってくるよ」
あの様子だと、近いうちに、お母さんはあの家を売却するだろう。玄関の鍵を変えられたら入れないし、だから業者が入る前に避難させないと。ゴミと一緒に廃棄されたくないから。
「なら、私たちも行く」
「嫌でも付いて行く」
立花ちゃんと亮君の気持ちは嬉しいけど、それはお姉ちゃんとしてNOを出すよ。
「駄目、学校はどうするの?」
私は学校に行けなかったから、立花ちゃんと亮君にはちゃんと学校に行ってもらいたい。
「「今日で終わり。春休みだから大丈夫」」
だから、今日帰るの早かったのね。でも、ちょっと早くない?
「えっ、そうなの?」
「俺たちが通ってるの私立だから、入学式の準備とか時間掛けるんだよ。だから、公立より四日ほど早いんだ」
亮君がそう説明すると、隣で立花ちゃんがうんうんと頷いている。
「でも、友だちと遊んだり、塾とかあるでしょ」
「そんなの、いつでもできる。今は、三奈さんの方が大事だから、気にするな。で、やり残したことってなんだよ?」
ほんとに、良い子だよね。ここまで言われたら断れないよ。
「大切な思い出を、あの家にそのまま置いとけないから、取りに帰ろうと思うの」
「「わかった」」
家族ってこういうものなのかな……見返りを求めない優しさって、尊いよね。
30
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。
そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、
死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。
「でも、子供たちの心だけは、
必ず取り戻す」
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。
それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。
これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる