空っぽの私は嘘恋で満たされる

井藤 美樹

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家族ってこういうものなのかな

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「あっ……また、手が半透明になってる」

 今日で三回目ね。なんか慣れたな……

 時間にしては数分程度だけど、ゆっくりと、でも確実に進行しているみたい。一週間切ったあたりから症状が急に出始めた。半透明になる時間も回数も、この二日、特に多くなった気がするよ。

 幸いにも、亮君と立花ちゃんには見られていない。でも、立木さんには見られちゃった。何も言われなかったけど、それでも固まっていたし、ショックを受けていた。ソッと隠したけどね。

 そりゃあ、そうだよね。なんか、悪いことしたな。嫌なものを見せちゃった。

 でも……こればかりは、私にはどうすることもできない。前に発作を起こしてから本能的に感じていた。私の存在が以前より希薄になってきたなって。それが、謙虚けんきょに出てきただけ。

 おそらく、私に施された奇跡の力が弱くなって、本来のあるべき姿に戻ろうとしているの。

 そう――奇跡は永遠には続かない。

 続かないからこそ、奇跡って言うんだね。




「どうしたの? なんか、暗い顔して……あ~元気になったみたいね、どうするの?」

 スマホの画面を眺めてると、立花ちゃんが後ろから話し掛けてきた。隠してないので、自然と画面が目に入る。

「家にいないことに気付いたみたい。すっごく、心配してる、蓮君」

 昼来てもいないし、夜も真っ暗だと心配するよね。大体の行き先は想像ついても。

「気付かれたの? それで、どうするつもり?」

「まぁ、素直に言うよ。立木さんの家にいるって。病院もここからだと近いし」

 嘘じゃない。実際、近いんだよね、二駅ほどだし。理由はなんとでもなるよ。蓮君はこの家を知らないし、確かめようもないからね。なので、早速そうラインで送った。

「……本当に会わないつもり?」

 立花ちゃんの問いに、私は小さく頷く。

 半透明な様を見られたくないからね。寂しくて辛いけど、そう決めたから。おかしいわね。何故か、立花ちゃんの方が泣きそうな顔になってるよ。本当に、優しい子だね。

「うん、会わない」

「そう……」

 何か言いたそうだけど、立花ちゃんは何も言わなかった。言っても、私の考えが変わらないってわかってるから。

 立花ちゃんは会うべきだって思ってるんだろうな。でも、私はそこまで強くはないし、清廉潔白でもないからね、それはちょっと無理かな……

「でも、一度戻らないといけないかな」

「何かやり残したことでもあるのか?」

 今度は亮君が訊いてきた。

「うん、急に来ることになったから、できてないんだよね。明日にでも行ってくるよ」

 あの様子だと、近いうちに、お母さんはあの家を売却するだろう。玄関の鍵を変えられたら入れないし、だから業者が入る前に避難させないと。ゴミと一緒に廃棄されたくないから。

「なら、私たちも行く」

「嫌でも付いて行く」

 立花ちゃんと亮君の気持ちは嬉しいけど、それはお姉ちゃんとしてNOを出すよ。

「駄目、学校はどうするの?」

 私は学校に行けなかったから、立花ちゃんと亮君にはちゃんと学校に行ってもらいたい。

「「今日で終わり。春休みだから大丈夫」」

 だから、今日帰るの早かったのね。でも、ちょっと早くない? 

「えっ、そうなの?」

「俺たちが通ってるの私立だから、入学式の準備とか時間掛けるんだよ。だから、公立より四日ほど早いんだ」

 亮君がそう説明すると、隣で立花ちゃんがうんうんと頷いている。

「でも、友だちと遊んだり、塾とかあるでしょ」

「そんなの、いつでもできる。今は、三奈さんの方が大事だから、気にするな。で、やり残したことってなんだよ?」

 ほんとに、良い子だよね。ここまで言われたら断れないよ。

「大切な思い出を、あの家にそのまま置いとけないから、取りに帰ろうと思うの」

「「わかった」」

 家族ってこういうものなのかな……見返りを求めない優しさって、尊いよね。



 
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