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残り三日
しおりを挟む突風が吹いたあと、自分の身体に違和感を感じて見てみたら、着ている服ごと全身透けていた。思わず、ポツリと呟いたよ。
「……完全に、幽霊になっちゃったんだね」と。
いや、そもそも私死んでるんだけどね。
それにしても、徐々にじゃなく、いきなり来たわね。まぁ想像はしていたし、ある程度覚悟もしていたから、さほど、取り乱さないでいられるんだけど……
取り乱しているのは、亮君と立花ちゃんたち。
幽霊になってしまった私は、亮君と立花ちゃんの目には映っていないし、声も届かない。そのせいで、双子ちゃんたちはパニックを起こしてる。あ……とうとう、立花ちゃんが私に文句を言いながら泣き出したよ。涙を拭いてあげたいけど、頬を通り抜けてしまって無理だった。
なのに、ココアの缶とスマホは持ててるんだよね。不思議だと思わない? これも一種のポルターガイストかな? 取り敢えず、私はここにいるよって缶を持った手で振ってみたけど、双子ちゃんたち気付かない。どうやら、缶も見えなくなってるみたいね。ほんと、不思議だよね。
「そもそも幽霊ですよ、君は」
色んな確認をしていると、ラキさんがいつの間にか私の隣に立っていた。
「あれ? なんか、ラキさんの声がクリアに聞こえるんだけど」
今までは、何かのフィルター越しのような聞こえ方だった。放送を聞いているような感じが近いかな。障害物がなくなった気がする。
「同じ次元で話してますからね」
「……そっかぁ~初めて会った時はもこんな感じだったね」
懐かしい。いつしか、フィルター越しの方に慣れてたよ。クスリと笑う私に、ラキさんが神妙な顔をして訊いてきた。
「……それで、どうしますか?」
それね……訊かれると思った。
あと残り三日か――
それをどう過ごすか、ラキさんは確認しておきたいのね。決まってるのは、最後の日だけだから。でもその確認をする前に、少し懸念に思っていたことを改めて訊いておこうと思ったの。
「そうね……これは確認だけど、四十九日まではここに留まれるんだよね」
途中で強制送還は絶対嫌だからね。
「大丈夫ですよ。四十九日の権利は絶対ですから、何人も侵すことはできません」
ラキさんに胸張って言われたよ。なら、安心だね。
「それ、どこかの政治家や評論家の台詞だよね……そっかぁ~残れるんだね。だったら、蓮君と立木さん家を行き来したいかな」
そう答えると、ラキさんに驚かれたよ。
「二日とも、北林君の所に行くとばかり考えていました」
そうだよね、今までの行動から見てそれが自然だよね。あえて離れていたのは、墓穴を掘らないためだから。その心配がなくなったら、飛んで行くと普通思うわね。
「そのつもりだったんだけど、突然目の前で姿を消しちゃったからな、立木さん家が気になるの。なんにもできないけど」
「そうですか……」
そう答えるラキさんの目は優しかった。
「で、訊きたいんだけど、やっぱり移動って電車なの?」
特に私の時間は有限なんだから、スムーズに行き来したいんだよね。
「その必要はありませんよ。私が運びましょう」
私の意図に気付いたラキさんは、小さく溜め息を吐くと答えた。
「えっ!? ほんと、ラッキー!! ありがとう、ラキさん」
言ってみるもんね。
私はラキさんに飛び付いて、ギューッと抱き締めた。引っ付かないといけないのかわかんないけど、そうしたかったの。ラキさんは面倒くさがりながらも、引き離したりはしなかった。
私の周りには、こんなにも優しさで満ちているんだね。
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