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ありがとう、大好き
しおりを挟む「父さん、三奈さんが……」
ボロボロと泣きながら立花ちゃんが私の名前を口にしたので、立木さんはすぐに状況が把握できたみたい。立木さんは確認するように、亮君にも視線を向ける。亮君は必死で涙を堪えて、小さく頷いた。
「そうか……逝ったのか…………最後、どんな顔をしていたのか、お父さんに教えてくれないか」
子供を労る立木さんの声は、本当に温かくて優しくて心地良い。
「……笑ってた。柔らかくて、幸せそうに笑ってたよ」
亮君が答える。すると、立木さんはフッと微笑む。
「そうか……笑って逝けたのか…………よかったな。二人とも、頑張った。偉いぞ」
立木さんは優しい目で亮君と立花ちゃんを見ると、二人の頭をよしよしと撫でている。
ほんと、最高のお父さんだよね。これなら大丈夫。心配する必要なかったね。泣きながら笑う。
乱暴に涙を拭ってから、私はラキさんに視線を向ける。立木さんが立花ちゃんにしていたように、ラキさんも私の頭を撫でてくれた。しばらくそうしてもらった後、私は小さな声で『行こうか』と声を掛けた。
『そうですね』
私は立木さん家の皆に頭を下げてから踵を返した。そして数歩歩くと、自然と私の足が止まった。そのまま振り返る。
『三奈様?』
ラキさんの声が後ろから聞こえた。
この時、考えるより先に身体が動いたの。
私は立木さんたちに走り寄ると、その勢いのまま抱き付く。当然、すり抜けてしまったんだけど、それでもよかったの。そうしたい気持ちで一杯だったから。
これが、立木さんたちとの本当のサヨナラ。
最後だから、自分の想いを言葉にして吐き出す。届かなくても構わない。それでも、吐き出すの。
『ありがとう!! 皆のおかげで、私は家族がどういうものか知ることができたよ!! 本当に、幸せだったよ、ありがとう。皆、大好き!! じゃあ、またね』
そう吐き出すと、私はラキさんの元に走って戻った。
別れるんじゃない。一足先に進むだけ。何も怖くない。だって、皆に勇気を貰えたからね。笑って先に進むよ。
『行こっ、ラキさん』
そして私は、ラキさんと一緒に立木家をあとにしたの。
「……今、三奈さんの気配がした」
亮君がポツリと呟く。
「うん、したね」
「ありがとう、大好きって声がしたような……」
立花ちゃんと立木さんも呆然としながら呟いた。
「……父さん、新しい花壇、植える花決まってるの?」
袖口で目元を拭いたあと、亮君が立木さんに尋ねた。
「いや、決まってないな」
突然の質問に対して、不審がらずに立木さんは答える。
「なら、植える花、俺たちが決めていい?」
「構わないよ。それで、何を植えたいんだ?」
立木さんがそう亮君に尋ねると、彼は立花ちゃんを見る。立花ちゃんはコクリと頷いた。
「かすみ草、三奈さんが大好きな花を植えたいんだ」
亮君はニッコリと微笑みながら、そう答えた。
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