10 / 21
第六話 第六節:剣の鼓動 ― 襲来、収束砲照準
しおりを挟む霧が晴れることのない朝、白霞の村を包む空気はひときわ重かった。
風が止み、木々の葉すら揺れぬその静けさの中に、剣之介は確かに“違和感”を感じ取っていた。
それは遠く、しかし確かに――鋭く、熱を帯びた“視線”のようなものだった。
「……来るな。」
剣之介が独りごちたその瞬間、村外縁の警戒装置が微細な異常を検知。
直後、斥候として出ていたリツキが駆け戻ってきた。
「剣之介――山の向こう側に、“熱の収束点”が現れている。おそらく、収束砲が……照準を合わせている!」
報告を聞いた瞬間、剣之介の視線が鋭く跳ね上がる。
背後ではナギサが子どもたちを神社の地下に避難させ、村の若者たちは指示を受けて装備を整え始めていた。
「村を……狙ってるのか?」
リツキは頷く。
「座標の変位を追ってる。奴ら、こっちの動きに“照準を合わせてる”んだ。まるで村そのものがターゲットだ。」
そのとき、空の一角に、光の筋が走った。
薄曇りの空を斜めに切り裂くように伸びる、かすかな“光の索敵線”――収束砲の照準レーザーだ。
剣之介の眼前を、赤い光が掠める。瞬間、空気が焼けたような微かな匂いと熱。
「……っ、なんだこれは……!」
レーザーの軌跡が、神社の屋根をかすめて消えていく。
狙いは定まっていない。だが、それは逆に、「定めている最中」であることを意味していた。
剣之介はリツキに目を向けた。
「射線はどこから来てる?」
「村の西、標高2200の尾根……そこに新たな砲座。標準軌道であと2分で“固定完了”の可能性がある。」
「間に合うな。」
「え?」
剣之介は言葉を返さない。
代わりに、腰の白霞刀を抜き、背にある封印布を解く。
刀身に宿る白霞石の核が、光の鼓動と共に脈打つ。
霧が裂ける。空気が震える。
その瞬間、剣之介の身体が、一歩前へと踏み出した。
「……一太刀、届けばいい。」
ナギサが駆け寄る。
「まさか……行くの!?」
「この距離、剣では届かない……なら、俺の“歩み”ごと剣にする。」
「無茶だよ!相手は砲台よ、射程の理屈が違う!」
だが、剣之介の足は止まらない。
その背に、霞流の伝統、幾多の剣士の誇り、そして“村人たちの想い”が重なっていた。
「無茶は承知だ。けどな、俺の剣は……“この村で生きる”ためにある。」
霧の中へと走り出す剣之介を、リツキとナギサが見送る。
「せめて、半径500メートル内に入れば……!」
「いいえ、彼なら行ける。剣の道は“間合い”じゃない。“覚悟”で届かせるものよ。」
村の背後、霧が裂ける。
剣之介の気配が、空気を震わせながら、収束砲の照準へと走っていた。
――次節、第七節「剣、立つ ― 白霞境界戦」へ続く。
⸻
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
世界最強の七賢者がお世話係の俺にだけはデレデレすぎる件
Y.
恋愛
国の頂点に君臨し、神にも等しい力を持つ『七賢者』。
火・水・風・土・光・闇・氷の属性を極めた彼女たちは、畏怖の対象として国民から崇められていた。
――だが、その「聖域」の扉を一枚隔てた先では、とんでもない光景が広がっていた。
「アルトぉ、この服脱がせてー。熱いから魔法で燃やしちゃった」
「……アルトが隣にいないと、私、一生布団から出ないから」
「いいじゃない、減るもんじゃないし。さあ、私と混ざり合いましょう?」
彼女たちの正体は、私生活が壊滅的にポンコツで、特定の一人に依存しきったデレデレな美少女たちだった!
魔法の才能ゼロの雑用係・アルトは、世界で唯一「彼女たちの暴走魔力に耐えられる」という理由で、24時間体制の身の回りのお世話をすることに。
着替え、食事の介助、添い寝(!?)まで……。
世界最強の7人に取り合われ、振り回され、いじり倒される。
胃袋と心根をガッチリ掴んだお世話係と、愛が重すぎる最強ヒロインたちによる、至福の異世界ハーレムラブコメ、開幕!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる