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第1話
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リラは14歳になる頃、母が死んで父である男爵に引き取られ、貴族学園に入学。そこで5人の男性と出会い、恋に落ちる。
しかし、これを面白く思わないのは彼らの婚約者である。特に第二王子の婚約者・ルミエラの怒りは激しく、リラに酷い嫌がらせを行い、最終的に命を奪おうとした咎で処刑される。晴れて自由の身となった第二王子はリラに求婚し、次期国王と王妃として歩んでいくことを約束する。
「って、わたし、あのルミエラになっちゃったのー!?」
五十嵐 瑠美は社畜である。両親は早くに亡くなっていて、友達もろくにいない。十連勤でろくに眠れなくて、ついデスクでうたた寝をしてしまって――目が覚めると小さな女の子の体の中に入っていた。手の小ささに違和感を覚えて鏡を見たら、そこには知らない女子が映っていたのだ、驚くというものだ。
「嘘......どうしよう、死にたくないよぅ」
叫び声を聞きつけてか、侍女が入ってきた。
「お嬢様! どうかされましたか?」
「お、お嬢様って、わたしのこと、よね......?」
「え......? お、お嬢様? ほんとうに、どうかされましたか?」
「あの、わたしって、ルミエラ・ローザ・ザイツェフェルト?」
「そ、そうですよ......?」
「今って、わたし、何歳?」
「八歳ですけれど.......」
「じゃ、じゃあ、もうアーク様と婚約したわよね!?」
「え? え、ええ」
侍女は怪訝そうな顔をしている。瑠美は慌てて顔の前で手を振った。
「変なこと聞いてごめんなさい! 変な夢を見てしまっただけなの」
「えっ!?」
「ど、どうしたの?」
「お、お嬢様に謝られた......? お医者さま、お医者さま、大変です、お嬢様がーーー!」
「待って、うそでしょ、もうそんなに我儘三昧なの!? ねえ待って、わたしは普通よ、いつも通り! 心を入れ替えただけだから、信じてちょうだーい!」
――その日はザイツェフェルト家で、ルミエラが天使になった日として長く祝われることになるのだが、そんなことはまだ誰も知らない。
「乙女ゲームが始まるまでに、なんとかしなくちゃ......! わたしの推しのリュディガー様の闇落ちも防ぎたいっ!」
乙女ゲームのスチルを思い出しながら、瑠美は意気込む。
「なっちゃったものはしょうがないもんね。頑張らなくちゃ!」
***
「......しょうがない、ですって?」
ルミエラ・ローザ・ザイツェフェルトは怒りの余り顔を真っ赤に染めた。
「わたくしの体を奪っておきながら、しょうがないだなんて! 恥を知りなさい、この盗人が!」
ルミエラは暗い場所にいた。一か所だけが煌々と明るく、先程までルミエラがいた場所の様子を伝えているが、他は真っ暗である。ここがどこなのか、他に誰もいないのか、ルミエラには全く分からなかった。
いつも通り眠っただけなのだ。だというのに目覚めたらここにいて、己の体には見ず知らずの女が入り込み、訳の分からぬことをほざいている。
「返しなさい、この下郎! その体はわたくしのものよ!」
壁に映る己の顔を叩いても、壁はびくともしない。両親と会って笑顔を見せるその中身はルミエラではないのだと叫びたくても、壁の向こうには届かない。
壁の向こうで、盗人はこれまでのことを謝り、心を入れ替えたのだとさも誠実そうな顔をして言っていた。
「お父様、お母様、騙されないで! それはわたくしではないわ! お兄様! どうか気づいて!」
声を限りに叫んでも、誰も気づいてはくれない。そんなことをしなくても大丈夫だよ、と頭を撫でる父、ルミエラはそのままでも可愛いわよ?と顔を覗き込む母、ルミエラがやりたいなら頑張って、と笑う兄—―全員、ルミエラの家族なのに!
「ふざけないで! わたくしでもないのに、ルミエラを名乗らないで! 今までの行いを改めるって何よ、わたくしは何も間違ったことはしていないわ! 汚らわしい盗人、その方はあなたのお父様じゃないわ、わたくしのお父様よ! ねえお母様、わたくしはここよ! お兄様、ルミエラはここにいるわ! その女は偽物よ!」
ルミエラは出してくれと訴えたが、壁はびくりともしない。泣いて泣いて泣き疲れて、これは夢だと言い聞かせて眠り――それでも元には戻らなかった。
しかし、これを面白く思わないのは彼らの婚約者である。特に第二王子の婚約者・ルミエラの怒りは激しく、リラに酷い嫌がらせを行い、最終的に命を奪おうとした咎で処刑される。晴れて自由の身となった第二王子はリラに求婚し、次期国王と王妃として歩んでいくことを約束する。
「って、わたし、あのルミエラになっちゃったのー!?」
五十嵐 瑠美は社畜である。両親は早くに亡くなっていて、友達もろくにいない。十連勤でろくに眠れなくて、ついデスクでうたた寝をしてしまって――目が覚めると小さな女の子の体の中に入っていた。手の小ささに違和感を覚えて鏡を見たら、そこには知らない女子が映っていたのだ、驚くというものだ。
「嘘......どうしよう、死にたくないよぅ」
叫び声を聞きつけてか、侍女が入ってきた。
「お嬢様! どうかされましたか?」
「お、お嬢様って、わたしのこと、よね......?」
「え......? お、お嬢様? ほんとうに、どうかされましたか?」
「あの、わたしって、ルミエラ・ローザ・ザイツェフェルト?」
「そ、そうですよ......?」
「今って、わたし、何歳?」
「八歳ですけれど.......」
「じゃ、じゃあ、もうアーク様と婚約したわよね!?」
「え? え、ええ」
侍女は怪訝そうな顔をしている。瑠美は慌てて顔の前で手を振った。
「変なこと聞いてごめんなさい! 変な夢を見てしまっただけなの」
「えっ!?」
「ど、どうしたの?」
「お、お嬢様に謝られた......? お医者さま、お医者さま、大変です、お嬢様がーーー!」
「待って、うそでしょ、もうそんなに我儘三昧なの!? ねえ待って、わたしは普通よ、いつも通り! 心を入れ替えただけだから、信じてちょうだーい!」
――その日はザイツェフェルト家で、ルミエラが天使になった日として長く祝われることになるのだが、そんなことはまだ誰も知らない。
「乙女ゲームが始まるまでに、なんとかしなくちゃ......! わたしの推しのリュディガー様の闇落ちも防ぎたいっ!」
乙女ゲームのスチルを思い出しながら、瑠美は意気込む。
「なっちゃったものはしょうがないもんね。頑張らなくちゃ!」
***
「......しょうがない、ですって?」
ルミエラ・ローザ・ザイツェフェルトは怒りの余り顔を真っ赤に染めた。
「わたくしの体を奪っておきながら、しょうがないだなんて! 恥を知りなさい、この盗人が!」
ルミエラは暗い場所にいた。一か所だけが煌々と明るく、先程までルミエラがいた場所の様子を伝えているが、他は真っ暗である。ここがどこなのか、他に誰もいないのか、ルミエラには全く分からなかった。
いつも通り眠っただけなのだ。だというのに目覚めたらここにいて、己の体には見ず知らずの女が入り込み、訳の分からぬことをほざいている。
「返しなさい、この下郎! その体はわたくしのものよ!」
壁に映る己の顔を叩いても、壁はびくともしない。両親と会って笑顔を見せるその中身はルミエラではないのだと叫びたくても、壁の向こうには届かない。
壁の向こうで、盗人はこれまでのことを謝り、心を入れ替えたのだとさも誠実そうな顔をして言っていた。
「お父様、お母様、騙されないで! それはわたくしではないわ! お兄様! どうか気づいて!」
声を限りに叫んでも、誰も気づいてはくれない。そんなことをしなくても大丈夫だよ、と頭を撫でる父、ルミエラはそのままでも可愛いわよ?と顔を覗き込む母、ルミエラがやりたいなら頑張って、と笑う兄—―全員、ルミエラの家族なのに!
「ふざけないで! わたくしでもないのに、ルミエラを名乗らないで! 今までの行いを改めるって何よ、わたくしは何も間違ったことはしていないわ! 汚らわしい盗人、その方はあなたのお父様じゃないわ、わたくしのお父様よ! ねえお母様、わたくしはここよ! お兄様、ルミエラはここにいるわ! その女は偽物よ!」
ルミエラは出してくれと訴えたが、壁はびくりともしない。泣いて泣いて泣き疲れて、これは夢だと言い聞かせて眠り――それでも元には戻らなかった。
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