一途くんの、失恋物語。

イヌノカニ

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改訂版

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カードショップのバトルコーナーに行き、僕らは今バトルをしている。

お兄さんが手札から、黒い服を着た魔女のカードを出した時、見た目、というか格好が、お兄さんとソックリだと思った。

そういえば、初めて会った時からこのカードは、お兄さんのデッキの中にいた気がする。

「その魔女のカード、お兄さんにソックリですね。」

「……そうか?この魔女の方が、何倍も、可愛いし、……良いだろ。」

「確かに、」

言いかけながら、お兄さんの方をチラリと見ると、なぜか少し傷ついた顔をしていた。

「魔女は可愛い系で、お兄さんは美人系ですね。
僕はお兄さんの方が良いです。」

そのまま言葉を続けて、お兄さんの事をチラリと見る。
今度は目を大きく見開き、驚いた顔をして、僕をまじまじと見ていた。

「美人か……、初めて言われた。ありがとうな。」

ふわりと、お兄さんが嬉しそうに笑った。

その眩しすぎる笑顔に、僕の心臓は、またドキドキと痛いくらい高鳴る。

もっと、そんな笑顔が見たくて、
もっと、色んな顔が見たくて、
もっと、お兄さんの事を知りたくなった。

「そういえば、お兄さんはどうして、いつも黒いスカートを着てるんですか。」

「……元カレが、」

淡々と言うお兄さんの声とは裏腹に、
魔女のカードをじっと見つめて、苦々しい顔をしていた。

「元カレが、喜ぶから。」

てっきり、その魔女が好きだとか、
そういう言葉が返ってくるのかと思ったら、全く違う言葉が返って来た……!

「えっ、その、お兄さんは、その元カレさんの事がまだ好きとか……、」

「んなわけっ」

ハッと吐き捨てるように言ってすぐに、
お兄さんは、胸ポケットからタバコを取り出そうとした。
でも、また僕の顔を見て、バツの悪そうな顔をしてポケットに戻す。

代わりに、手を唇まで持っていって、
グニグニと親指と人差し指で挟みながら言った。

「まぁ、でも、十代の、……ゲイには、一生忘れられない、傷、……くらいには、なったかな。」

その悲しそうな顔に、僕も悲しくなってしまう。


元カレさんは、お兄さんにどんな酷い事をしたのだろうか。

もし僕がお兄さんの恋人になれたら、スカートを着てなくても、どんな格好でも好きだと、毎日伝えるのに。

僕はどんなお兄さんでも毎日好きなのに。

――元カレさんはズルい。

僕はお兄さんがどんな格好をしていても好きです、そう伝えたくて、お兄さんの顔見た。

でも、お兄さんは話を切り上げるように、淡々とバトルを進め始めた。

あっ、ダメだ。

なんとなく、お兄さんが見えない線を、
それも簡単には飛び越えられないような線を、僕との間に引いた気がして、
さっきの会話よりバトルに夢中になったフリをした。

それに今この言葉を言っても、
僕の望む意味で、お兄さんに伝える事が出来ないことにも気付いていた。


……僕がこれを伝えるには、
まだ、お兄さんと僕の、大人と子供であることの溝が大き過ぎた。

あぁ!今すぐ大人になる装置が開発されて、僕がすぐに、大人になれれば良いのに!
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